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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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交渉決着 兼続の器量

上杉家の家中の状況や、直江兼続の器量を図る交渉が行われていきます。

 秀綱は、兼続の点て前を再度喫した。湯音の管理が絶妙で、喉をスッと通り過ぎるのを感じた。秀綱は飲み終えて、床にゆっくりと茶碗を置いた。


「お見事な腕前でございますな」

「相手をよく見ることが大事でございます。茶も、戦も」


 秀綱と兼続は、軽く笑いあった。


「検地、でございましょう」

 兼続は、すっと言葉を差し込んできた。秀綱も、頷いた。


「関白殿下の検地の基準は、奥羽では厳しい。かなりの増税になりましょう。民の反発も強くなるでありましょうな」

「それが、秀綱殿の仰る埋伏の毒になりうるというわけですな」

 秀綱は、兼続の推論を肯定した。


「いかにも。民の反発をいかに退けるか。納得させるか。庄内は、豊かな土地でございますが、民は商売にも長け、計算にも通じてございます。まずもっと、上杉殿の、いや兼続殿の手腕の見せ所でございましょうな」

 秀綱の言葉を受けて、兼続は呵々大笑した。ややあって、笑いを収めて兼続は平静を取り戻した。


「実は、私も庄内の領有には反対だったのでございます」

「ほう、これは意外な」

 秀綱は驚いた。だが、兼続であれば、そう考えもしようなと、秀綱は納得もした。


揚北衆あがきたしゅうの方々は、やはり声が大きいようでございますな」

 揚北衆とは、越後の阿賀野川周辺から北方にかけてを領地とする国人領主たちの総称である。武勇に優れた武将が多い一方、独立精神にも富んでいる。そのため、上杉家に無条件での服従をしておらず、不服となったら、上杉謙信にすら反逆をする程であった。

 

 庄内の領有を主張した本庄繁長は、かつて謙信に刃向かった過去がある。また、上杉景勝の家督継承の後、論功行賞で不満を抱いた新発田重家しばたしげいえは、会津の蘆名や米沢の伊達、出羽の最上義光、さらに織田信長と通じて、反乱を起こして、上杉家を滅亡の淵にまで追い込んだくらいだ。


「はっはっは、秀綱殿は我が上杉家の内情までご存じか。左様、我らは上杉家の団結を優先し、庄内と言う埋伏の毒を飲む覚悟を決めており申す」

 兼続は、しばし沈黙した。出方がわからないので、秀綱もまた沈黙を守る。


「最上殿のご家中は、此度の庄内を奪われたことをいかにして納得されたのか。怒り狂っておいでだと思うておりましたが、秀綱殿の要望でよくまとめましたな」

「いや、まとまっておりません。ただ、我が殿が、それがしと志村光安の考えを認めてくれました。氏家守棟の爺も、認めてくれました。それゆえ、まとまるだろうと思うておりまする」

「羨ましい。家中をよく掌握してございますな」

 兼続は、嘆息した。


――上杉家は、大きすぎるのだろう――

 上杉家は、越後一国に加えて、佐渡、さらには信濃や越中、上州、陸奥の一部に領地を有している。かつては上杉謙信という圧倒的な求心力を持つ大名の許に纏めていたが、景勝にはそこまでの求心力はなかった。

その隙をついて、自己の勢力の拡大を図ろうとする者たちもいる。今回の庄内侵攻も、その一環で兼続も認めないといけない悪手であったのだろう。


――みすみす、毒と知ってのまねばならぬわけだな、兼続にとっても苦渋の決断だったのだろう。むしろ、最上を巻き込んだ方が、やりやすくなったのだろうな――

 秀綱は、兼続に少し同情した。


――だが、つきあう義理はない。そんな地に、綱元を置いておけぬ。それに、盛周も上杉にいいように使わせぬ。ま、兼続のお手並み拝見だな――

 秀綱は、気を取り直して言った。

「我らは、上杉家ほどには大きくございませぬゆえ、兼続殿のご苦労は想像するよりほかにございませぬ。されど、兼続殿の手腕で見事統治能うものと思いまする」」

「心にもないことを……」

 兼続の呟きを、秀綱は聞き流した。


 茶室の躙り口に、人が近づく気配がした。

「兼続殿、秀綱殿、医師からの知らせじゃ。嘉蔵殿は大事ないであろうとのことであった。今は薬を服して、寝入った模様。安堵されよ」

 清胤の、抑えながらも通る声であった。


「感謝申し上げまする」

 秀綱は、見えぬ清胤に頭を下げた。


「では、我ら最上家からの申し出、謹んでお請けいたす。もちろん、上杉家の統治のために協力はしていただくがな」

「それは当然のこと。遠慮なく。ただ、迫害は致さぬようお願い申し上げる」

 秀綱は、兼続にも頭を下げた。


 兼続はそれを見届けて、茶室を後にした。残された秀綱は、入ってきた清胤に礼を述べて、居室に戻った。


――若いくせに立派な奴だ。家中の面倒な奴らに飲み込まれるなよ――

 秀綱は、対面した若き執政 直江兼続の器量を「大器なり」と認め、光安に届けようと思った。


◇◇◇

 翌日、秀綱は、春日山城で上杉景勝と面会した。交渉の場では、直江兼続が主に発言した。こちらの要望も伝えた。兼続は、池田は民衆に人気があり、上杉家への貢献も可能であることを認め、朝日山城主として引き続き、自領の統治を任せること。他の、最上恩顧の国人たちも、従前と同じく領地を安堵することを主張した。

 景勝は、無言で頷いた。これで、交渉は終了した。


「ご使者殿、しばし待たれよ」

 庄内を接収する大宝寺義勝だいほうじよしかつの父 本庄繁長が発言した。景勝は、顎をクイと動かし、発言を許した。


「某の兜を割った東禅寺勝正とうぜんじかつまさ殿の刀でございますが、本庄家の家宝として扱いまするゆえ、某が領有するをお許し願いませぬか。最上義光殿に、斯様に申し上げていただきたい」


 秀綱は、義光に話すよう約した。これは、最上家からの申し出を保護にしないという本庄なりの裏打ちであった。


 秀綱は、上杉家との交渉を終えて、直江津を離れた。嘉蔵も、回復したようで、船や途中の港での噂話の伝播に余念がなかった。


次回は、伊達政宗の摺上原の戦いです。

最上は、伊達に援軍を出してます。

史実ではないけど、秀綱を援軍に加えてしまおうかと思ってます。

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