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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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秀綱にもらった武器 盛周の思い出

庄内侵攻を受けて、池田盛周は上杉に降ります。

心ならずです。秀綱を助けるため、戦をここで終わらせるための盛周の決断でした

 秀綱は、朝日山城に戻る盛周の背を見送った。

「援軍の役目は果たした。城主の池田盛周は上杉への降伏を選択した。ここに留まる理由はなくなった」

 秀綱は、手勢を全て引き上げさせた。


◇◇◇

 盛周は、撤退する秀綱の軍勢を見ていた。

――引き際が見事だな。あの軍勢は強い――

 一方で、盛周は自分の手勢を顧みた。百姓上がりや、木こりや猟師上がりの兵が大半だった。決して洗練された精鋭という姿ではなかった。


――だが、俺はこれでいい――

 盛周は、苦笑いした。秀綱の背を見ていたら、ふと昔のことを思い出した。



 盛周は、かつて大宝寺義氏の小姓の一人として、仕えていた。だが、盛周は、義氏の戦に次ぐ戦の日々を苦々しく思っていた。

 朝日山城は、庄内でも山間部にあたる。平野に比べて、農地は少ない。しかし、過分な年貢負担や兵役負担が課され、盛周は父とともに領民の愚痴や不満を聞いてきた。


 その時、盛周の愚痴や不満を聞いてくれたのが、秀綱だった。領主として主君の大宝寺家と

領民の間に板挟みになってしまう苦労を、秀綱は聞いてくれた。


「ああ。百姓様になりてえ」

 この愚痴を何度秀綱に言ったかわからない。会った最初から、不思議と懐かしい感じがする奴だった。


「なんでお前は、義氏に馬鹿にされているのに、その能力を披露しないんだ」

 盛周は、秀綱が才能を隠すのを不思議に思った。

「才能をかける価値を感じないからだ」

 秀綱は、こともなげに言い放った。

「しかし、勿体ねえな。槍の才能は、白石のとっつぁんが認めてきれているんだろ」


 野駆けで密かに鍛錬に付き合う盛周が、嘆いた。

「義氏のために命をかけたくないからだ。軟弱と思われて方が都合がいい」

「だが、俺も適わないほどだから羨ましいよ」

 盛周はため息をついて、その場に座り込んだ。秀綱も槍を地において盛周の脇に座った。


「盛周に最も向いている得物は、槍ではないと思う」

「じゃあ、なんだ」

鎖分銅くさりふどうだな」


 鎖分銅とは、鉄の鎖の両端に、鉄球を結び付けた武器である。重さを利用して振り回し、鉄球を敵にぶつけて、大打撃を与えるのである。


「俺は、山賊か何かか」

 盛周は、不服そうであった。

「まあ、そんな顔をするな。鎖分銅は、呉の猛将 甘寧かんねいが得意とした得物でな。攻防一体の武器になるんだぞ」


 秀綱は、鎖分銅を次の機会に渡してくれた。盛周は、秀綱からの言われた通りに回してみたが、なかなかに難しかった。しかし、面白かった。練達すれば、木も打ち倒せると聞いたので、朝日山に戻ってたびたび、農民の隠し田の開墾のために、木を打ち倒す練習をした。一年もしたら、難なく木を打ち倒し、引き抜くこともできるようになった。


「さて、これで立派な山賊様の出来上がりだ」

 盛周の言葉を聞いて、秀綱は大笑した。


しかし、盛周はこの業を、大宝寺家で披露することはなかった。もし知られたら、先鋒を任されてしまう。そうなったら、百姓上がりの兵たちに、下らぬ戦で毎回犠牲を強いることになる。それを避けたかった。そうやって、大宝寺支配の間は、盛周も猫を被っていた。

――鎖分銅は、俺が心から仕えるべき主君に出会った時に披露するとしよう――

 盛周は、自分の中で、そう決めた。


――最上家の支配は、無理に年貢も取らずに、いい治世だったと思う――

 秀綱はいい主君に仕えたと心底から羨ましく思った。そして、遅まきながら俺も、と思っていた矢先だった、上杉が庄内に侵攻してきたのは。


――だからこそ、お前をこんなところで死なせるわけにはいかねえんだ――

 盛周は、降伏する旨を上杉家の本庄繁長に伝えた。繁長からは、開城を命じられた。

 盛周は大手門を開いた。続々と、上杉兵が朝日山城に入ってきた。


 盛周の周囲には、異様な軍団が取り巻いていた。甲冑とは名ばかりのくすんだ胴丸に紐を括り付けた足軽や農兵、蓑を着て鉄砲を担いだ猟師、着飾った甲冑を着た兵などほとんどいなかった。


「おらたちのほとんどは、この辺の百姓だ。死なせたら、田畑耕せなくなるぞ」

「おれは猟師だ。クマが増えて大変なことになるぞ」

「だから、俺らの首領の盛周様を殺しちゃなんねえだ」

 領民たちが口々に盛周をかばった。


「安堵いたせ。ここまでお主らに慕われた領主を殺しはせぬ。それに、先ほどの援軍は、最上軍きっての猛将 鮭延秀綱殿だ。彼が出てきたからには、これ以上は手を出せぬ」


 上杉軍の総大将 本庄繁長が、そう言った。


――よし、思惑通りだ――

 盛周は安堵し、繁長に感謝の意を伝えた。


――鎖分銅は、まだ披露できそうにないようだな――

 鎖分銅は、城の武器庫の床下に隠している。その存在をふと思い出しながら、盛周は繁長に場内を案内した。



池田盛周と言う人物を紹介しないとと思い、書いています。


次回は、最上義光が、豊臣秀吉に上杉の行動を訴えます。

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