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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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庄内陥落! 秀綱の友 池田盛周への援軍

上杉軍の庄内侵攻は、計画的でした。そして、庄内一円の掌握の過程で、秀綱のかつての友人が籠る朝日山城を攻め立てます。

 秀綱は、義光に想定以上の報告ができると喜んでいた。しかし、光安は解せない顔をしていた。秀綱は家康邸に戻る途中で、光安に尋ねた。

「光安、何か浮かない顔をしてるが、どうした」

「あの大名連の中に、上杉景勝がいなかった。それが、ちょっとひっかかってな」

「それがどうかしたのか?」

「あの居並ぶ大名の中で、上杉家の者を入れるのが通常だと思うんだ。特に我らのように、秀吉の許に派遣される武将のことを知るいい機会だからな。それが、景勝だけでなく、直江兼続も京に来ていないようだ。石田三成との関係が、それほど深くないということなのか、それとも」


 秀綱は光安が考え過ぎのように思えた。今、思えば、秀綱も秀吉の術中にかかっていたと言えるだろう。だが、この時は、そこまで秀吉のことを知らなかったのだ。


 秀綱と光安は、家康に礼を述べて、出羽山形に戻った。羽州探題への就任が内定したことを義光が喜んだ。伊達政宗をぼろくそに言ったことは笑って不問に付してくれた。


◇◇◇

 天正16年(1588年)8月

 越後北端の小国城にいた上杉景勝の武将・本庄繁長とその子で大宝寺家の養子になっていた大宝寺義勝が、突如越境して、庄内の尾浦城を襲撃した。

 最上義光は、伊達政宗との大崎合戦の後で、援軍を容易に出せない隙をついたのである。


 庄内を治めていた東禅寺義長と東禅寺勝正兄弟は、籠城策を捨て、野戦を選択。十五里ヶ原を決戦の地とした。

 東禅寺軍5000 上杉軍5000であった。


 しかし、上杉側による調略が水面下で進んでいた。合戦が始まって少しして、その工作の結果が一気に表面化した。


「浅利殿、ご謀反!」

「下坂の軍勢が、反逆!わが軍に横槍を入れてございます」


 その後、諸将の謀反が相次ぎ、東禅寺義長はもはやこれまでと覚悟を決めた。

「斯くなる上は、本庄繁長本陣に突撃をかけるべし!奴の首を上げて、冥土への手土産にしてくれん!!」

 東禅寺義長は、敵兵と数多斬り結び、討ち死にした。


 弟の東禅寺勝正は、義長が切り開いた本陣への穴を見つけて、単騎本庄繁長本陣に斬りこんだ。


「本庄越前守殿、覚悟!」

 勝正渾身の一撃は、本庄繁長の兜を割った。頭を斬りつけ、耳の下まで手傷を負わせたものの、致命傷に至らなかった。その反動で制御を失い、落馬した勝正は、繁長の側近たちに槍で突かれ、絶命した。


◇◇◇


「東禅寺義長殿、勝正殿 お討ち死に!!」

 援軍を率いて六十里超えまできていた最上義光は、この敗報に兵を退いた。

「おのれ、上杉め。後で惣無事令違反で、問い詰めてくれよう」


 義光は怒髪、天を衝くがごとく怒りを浮かべた。


◇◇◇


 鮭延城でこの知らせを聞いた秀綱は、帰途で気になった光安のことを思い出した。おそらく、我らが京にいる間に、調略を密かに進めていたのだろう。

 おそらく、庄内の切り取りを許されていたのだ。だから、俺たちに顔を合せなかったのかと秀綱は、己の認識の甘さを嘆いた。


「庄内だけで、終わるでしょうか」

 鳥海守衛は、軍議の際に不意に不安を吐露した。確かになし崩しに最上領を蚕食する恐れもある。もし、山形と鮭延の連絡路を絶たれてしまったら、我らは小野寺勢に攻め込まれてしまう。

「嘉蔵、嘉蔵はおるか」

「はっ」

 嘉蔵が素早く、現れた。

「満茂殿に至急伝えよ。朝日山城の池田殿の救援に我らは向かうゆえ、兵を貸してくれと」

「はっ」

 嘉蔵は、急ぎ楯岡満茂の許に走った。途中で、軍勢を借りて、援軍に向かう段取りであった。


「この城は手薄になりますな」

 守衛は不安そうに言った。


「すぐに小野寺は動くまい。それに、大善殿の改修によって、防御力は増した。鉄砲も弓も備えはある。守り切れると信じておる。それに、盛周は俺が大宝寺の小姓を務めていた際に、親しく接してくれた友と言える相手だ」


 守衛はそれで何も言えなくなった。損得で盛周を見捨てることはできない秀綱の性格を守衛も知っていた。


 秀綱は、急ぎ庄内方面に、手勢100を率いて向かった。手勢100は、途中の賊徒が襲撃をためらうのに十分な人数であり、指示が即座に出して、徹底しやすい。そして、小野寺の軍勢が、鮭延城攻略を企図させないために動かせる、ぎりぎりの人数であった。


 出羽朝日山城は、庄内から山形に迎う際、必ず通らねばならない堅城であった。ここを守るのは、南北朝時代からこの地を治める池田家の当主である池田盛周いけだもりちかであった。


 尾浦城を落とした本庄繁長らの上杉軍は、この朝日山城にも攻めかかっていた。盛周は、小勢ながら降伏を潔しとせず、徹底抗戦の構えであった。


 秀綱たちが、駆け付けた時には朝日山城は、まだ抵抗を続けていた。


「朝日山城を助ける!かかれ!!」

 背後から急に現れた秀綱の軍勢に、上杉軍は不意を突かれて混乱した。その虚をついて、朝日山城の城門が開かれた。中から、屈強な将が、手勢を開いて、秀綱の攻め手の上杉軍を挟撃した。

 萌黄縅の鎧に、ところどころ黒色を混ぜた独特の甲冑であった。頭形兜で前立てはない。山岳戦を得意とする盛周特有の甲冑であった。


「おう、そこに参ったは、鮭延秀綱だな」

「元気そうだな、池田盛周。既に山岳戦に入っていると思ったが、探す手間が省けた」


 上杉勢を追い散らしながら、秀綱は盛周に語り掛けた。


「よく来てくれた。だが、秀綱、ここまでだ。この城の降伏で、上杉の侵攻は止まる」

「何を言うのだ」

 秀綱は、盛周に怒鳴った。


「いいか、よく聞け。お前の旗印を敵もよく知っている。織田信長が認め、豊臣秀吉も会見した武将だ。それが出てきたということは、これ以上の進軍をあきらめさせる理由になる。敵も惣無事を破っていることの引け目はあるだろうからな」


「おう、この件、絶対に問題にしてやる」


 秀綱は、敵軍を追い払った。周囲に敵の残兵がいないかどうか確認しつつ、盛周に近づいた。


「友のお前が来てくれて嬉しい。だが、お前もここに長くはいられないはずだ。この城が残ったままでは、上杉の庄内支配は安定しない。それゆえ、今後も攻防の主体になってしまう。落城は時間の問題だ。今、最上は援軍を送った事実を作った。しかも、鮭延秀綱と言う一級の武将だ。支城を見捨てないとい事実は、最上の大義だ。だが、支城の城主が降伏をしたら、援軍は撤兵しても、批難はされねえ」


「しかし、」

 盛周は、秀綱の言葉を制した。


「俺は、この地の百姓たちの田畑を、犠牲にはしたくねえんだ。米を作れなくなったら、百姓たちは冬を越せねえ。子供は身売りをしなければならなくなる。朝日山の城主として、それはできねえ」


――そうだった。こいつは、こういう奴だった――


「そういえば、お前は農作業が大好きだったな」


「覚えていてくれたか!そうだ、俺は領主の家に生まれたから武士なんてやってるが、本当は」

「百姓様になりてえ!」

 二人の声が合った。そして、互いに笑った。


「そうだ。だから、俺はこの地の百姓たちを犠牲にはしたくねえんだ」


 盛周は、両手を合わせて秀綱を拝んだ。これは、本音でもあるし、秀綱たちを犠牲にしないで戦を終わらせる名分にもなる。


――それに百姓たちに慕われている盛周を殺したら、この地は上杉でも治められないだろう。それは、敵も理解できるだろうからな――


 秀綱は頷いて、兵を退き返した。

 盛周も、兵を,朝日山城に撤収させた。


 翌日、朝日山城は開城し、池田盛周は上杉軍に降伏した。盛周は命を助けられ、上杉家の家臣として遇されることになった。


 この秀綱の行動が、後々の盛周にも大きな影響を与えていくことになるのであった。



 


この時代、籠城兵は、援軍が来なければ降伏しても非難されませんでした。一方で、領主たちは援軍を出さなければ、その地の国人領主たちから反逆されても仕方ないものでした。


秀綱の行軍は、一見すると意味のない戦いのように見えます。しかし、これは最上は庄内の味方を見殺しにしない、というメッセージになります。

一方で、戦いが続くと明らかに不利なので、池田盛周は、最上の影響力を残したまま、城主の判断で降伏をします。

一方で、上杉軍も池田盛周を不用意に殺せない事情があります。

農民たちに慕われている領主を殺せば、その地の農民たちの反発が強まります。


そして、この時代の農民たちは、たいていは戦の経験のある武闘派です。彼らが本気で反抗したら、武士も手こずります。しかも、殺したら、その地の生産力は確実に落ちます。

それが、盛周を殺せない事情です。


この辺りのバランスを考えて、戦の落としどころが決まっていきます。


そして、この池田盛周ですが、今後も重要人物になりますので、覚えておいてくださいね。

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