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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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任命 羽州探題

秀綱と光安は、秀吉とついに会見

秀吉は、両名の器量を図ろうとします。

秀綱の答えを秀吉は気に入ります。

会見は成功裏に終わったようですが……

 秀綱は、聚楽第に上がった。取次役の家康も、秀吉との会談に同席をする。だが、それだけではない。歴戦の諸大名が、秀吉の座の下手両側に控えている。

 加賀の前田利家、安芸の毛利輝元、備中の宇喜多秀家、奉行衆の浅野長政、前田玄以、増田長盛などの他、名の知れた大名衆が、20人ばかり列席していた。


――天下人たらんとする者が、くだらぬ虚仮脅こけおどしとは――

 秀綱は、むしろおかしかった。

 かつて、太史慈の時には、ここにいる諸大名を合わせても足りぬ程度の領地を治めていたのだ。特に怯む必要はない。秀綱は、堂々と広間の下座にすらりと腰を落とした。

 居合わせた諸大名も、秀綱と光安の所作に目を見張った。家康は微笑ましく二人を見ている。


「殿下が参れらます」

 一座に秀吉に登場を告げる声がかけられた。同時に、諸大名が一斉に平伏した。それに倣って、秀綱と光安も平伏した。上座から人がゆっくりと歩き、座った気配がした。


おもてをあげよ」

 少し甲高い声が聞こえた。秀綱と光安は顔を上げた。眼前には、猿面で出っ歯の小男が、着飾った錦をまとって座っていた。猿とも禿ネズミとも揶揄された外面が、秀吉であることを証明していた。


ちこう」

 秀綱と光安は、スススっと座りながら前に進む。

ちこう!」

 秀綱と光安は、再び同程度前に前に進んだ。

「もそっとちこう!」

 秀綱と光安は、三度前に進んだ。


「ええい、回りくどい!儂がそちらも参るぞ!」

 秀吉は、正面から速足でやってきて、秀綱と光安の眼前に座った。


「よくぞ、やってきてくれた。最上義光殿からの臣従の申し出、嬉しく思うぞ」

 満面の笑みで、秀吉は秀綱と光安の手を取った。天下人と目される男が、陪臣に過剰なまでの歓迎の意を示していた。

――なるほど、これが()()()()手練手管てれんてくだか――

 秀綱は、秀吉の歓待ぶりを冷静に見ていた。


 最初は、各大名を従える武威を示して、相手を威圧する。その後、大名を従える自身が親しく接することで相手に自分の寛大さを印象付ける。これで、使者を自身の薬籠中にしようというのだろう。


――その辺の大名の使者であれば、途端に手の内に落ちるであろうが、我らにはそれは効かぬ――

 ただ、こうした時に役立つ舌先の技は、光安には適わない。秀綱は、光安にこの場を任せることとした。

「関白殿下におかれましては、我らに格別の慈悲をもって、接してくださること恐悦至極。我が殿、義光に代わって御礼申し上げまする」

 光安は真面目に話しているのはみると、笑えてくる。だが、秀綱はそれを隠して、言葉に合わせて平伏した。


「ほう、ここまできて、儂に屈せぬとは剛の者よな」

 秀吉が笑みを湛えながら、冷徹に言った。秀綱が顔を上げると、秀吉は目が笑っていなかった。


「お主らはかつて、信長に認められた者だと聞いておったが、なるほどな。こうした若者は、信長は好んだであろうな」

 秀吉は、そういって、すっと立ち上がった。さして、高くない身長ではあるが、こちらが平伏したままなので、威厳が備わっているように見えた。

――だが、かつての大恩のある主君でありながら、呼び捨てにするのは、いかがなものか――

 秀綱は、少し不快感を抱いた。


「ははっ、信長様は、我らのごとき若武者が堂々とされる姿を頼もしく思うただけだと存じまする。天下人として、有能な若武者が、各地にいて、天下人の意を受けて諸大名に仕えるは、ありがたきことかと存じまする。殿下も、同じ気持ちになのでございましょう。それこそが、我ら無上の喜びでございます」

 

 光安の言葉に、秀吉はニコッとした。

「もちろんじゃ、お主のような者たちが出羽にいることは、儂にとっても心強い。今になって、信長の気持ちがわかってきた部分もあってのう。主らに、義光殿とともに、儂の天下平定の手助けをしてくれるか」

「もとより」

 光安は、秀吉の言葉に平伏した。秀綱も従った。


「されど、義光殿には少し困った親戚の者があるようじゃのう」

 秀吉は、秀綱に視線を向けた。光安はそつがないと思ったのだろう。一方で、今度は秀綱の器量を図りに来ていることがわかった。家康が、秀吉から問われて、秀綱と光安のことをそれぞれ、律儀者と軍師の如き者と評したと秀綱は事前に聞いていた。

 さっきのそつのないやりとりで、光安を図った。今度は、秀綱を探りに来ているのだと察した。


「左様にございます。あの、片目の御仁には、我ら辟易しており申す」

 秀綱は、偽らざる本音を吐露した。秀吉は、秀綱の言葉に目を見張っていた。


「米沢の伊達政宗のことだとわかっておったか」

「はっ、我らは出羽の地より戦をなくし、民が明日を信じて暮らせる日を作るべく努力しております。しかし、かの御仁は、無駄に戦を増やしておりまする。それも、殿下に匹敵する才があるならともかく、少し才があるというだけ。所詮は奥羽の田舎大名相手に多少勝てる程度。そんな跳ね返り者と我が最上家が親戚であるというだけで、同一視されることもございます。それに、我らは噴飯物の怒りを覚えまする。はっきり言って迷惑千万」

 秀綱は、きっぱりと言い切った。秀吉は、秀綱の言葉に呵々大笑した。


「左様か、左様か。最上義光殿は、伊達の小僧に怒っておるのか」

「その通りでございます。本来ならば、伊達と一戦してもよいのですが、政宗の母は我が主君義光の妹御でございます。義光も、妹殿から『見守ってやってくだされ』と頼まれれば、うかつに戦えず、諫言を行う程度しかできませぬ。しかし、そんな言葉を聞く相手であれば苦労はしませぬゆえ。ま、はっきり言って迷惑千万」


 ここに至って、秀吉は腹を抱えて笑い出した。


「左様か、最上殿も苦労しておられるようじゃのう。されど、政宗の伯父御であろうに。がつんと言ってやればよかろうが」

「されど、奥州はいまだ古い価値観の持ち主が多い土地でございます。伊達家が奥州探題として、奥州をまとめると言えば、従うような者もおりまする。心ある者は、それが自称と知ってござるが、未だに歴代の探題の末裔だという威光が効いてしまいまする。義光も、説得にこれ以上なく困っておりまする。全くもって迷惑千万」

「わはははは 最上殿の迷惑具合はわかったぞ。されば、儂から最上殿に政宗を叱責できる資格を与えねばなるまいのう のう、家康殿」


 秀吉は家康に声をかけた。

「義光殿には、どのような官職がよかろうかのう」

「僭越ながら、殿下から上奏されて、朝廷の官位と正式な羽州探題に任じられてはいかがでしょうか」

「おお、それはよいな! 三成、直ちに朝廷に奏上せよ。日を追ってになるが、最上義光殿を羽州探題に任じようではないか」


――羽州探題! これは思わぬ駒が出てきたな――

 今度は秀綱と光安が、目を見張った。ここでは、諸大名の目がある。内容はすぐさま諸国に知られよう。この場で、最上義光が事実上、羽州を束ねる役目を、権利を得ることになったのである。


「では、おって沙汰があるだろう。お主たち、今日は有意義であった。下がれ」

 秀吉は、正面の座に戻って、会見の終了を告げた。秀綱と光安は、平伏・一礼して広間を下がった。


 しかし、この時、だれも気付いていなかった。秀吉の笑顔の奥の目に冷徹な光が宿っていたことを。

 

 

次回は、上杉家が最上義光が治める庄内に攻め込んできます。

惣無事が出されているはずなのに、上杉家が攻めてきました。

出羽・庄内に波乱が巻き起こります。

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