表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/62

義光の妹 義姫の機転

最上家と伊達家の戦いは、膠着状態に陥ります。

奥羽にも秀吉の総無事令が出されていて、無駄な戦は処分の対象となる可能性が高まります。

そこで、戦をやめさせるべく義姫が、驚く手段に出ます。

 秀綱が書いた書状は、急ぎ山形に送られた。満茂が、秀綱たちにつけた忍びの手によって、伊達政宗と対峙する最上義光の許に送られた。


◇◇◇


 義光は、引け目を感じながら書状を開いた。戦をしないと言った矢先に、伊達政宗と戦になってしまったのである。申し訳ないという想いが、義光の頭の片隅にあった。

――だが、妻の実家を併呑しようとする政宗を許すわけにはいかぬ――


 義光は手紙に静かに目を通した。徳川家康に引き続き、取次役をお願いすることと、上杉家が秀吉の信頼厚い石田三成を取次として、秀吉への工作を行う可能性の高いこと、そのため、不用意に戦を広げないようにと家康が言っていたことなどが記されていた。いちいち納得であった。


――目先の利益を求めずに、家康殿に引き続き取次役を頼むのは、秀綱らしいわ――

 義光は、秀綱のそうした義理や誼を重視する考えに好感を抱いていた。そうした者であるからこそ、短期間であるのに、最上家の中で諸将からの信頼を獲得できるのだろうなと微笑んだ。


「殿、秀綱様への返答はいかに致しましょうぞ」

 義光の前に膝をついて控えているのは、嘉蔵であった。


――秀綱であるからこそ、この癖の強い忍が懐いたのやも知れぬな――

 義光は、考えの余韻に浸っていた。


わああああ!

 不意に喚声が近づいてきた。


敵襲! 伊達軍先方が動きまする!

 義光の許に報告の兵が走ってきた。


「捨て置け! 陣の柵の中より、弓矢を射かけよ! それ以上、攻めては来ぬわ」

 義光の命令が下され、小競り合い程度の戦の気配が聞こえてきた。しかし、半刻もして、伊達勢は引き上げていった。熱気と騒々しさの余韻は直ぐに失せ、場は静けさを取り戻した。


「嘉蔵よ、これを秀綱と光安に届けよ。家康殿にお見せするようにと伝えよ」

「はっ」


 嘉蔵は書状を受けとると、すぐに義光の陣を離れた。義光はその姿を目で追った。

――秀綱は、嘉蔵の境遇を聞いても侮蔑しなかったと聞く。遊郭上がりの者と聞くと、侮蔑する者もいようにのう。どの者も、人として敬意を払う。それが、秀綱の良さなのだろうな――

「敬意の将か……。その姿勢が人を動かす力になる。得な性格よな」

 義光は呟いた。



 戦は開始してから4か月も経った。だが、互いに決定機もなく、膠着状態になった。


 義光の眼前の陣には、甥の伊達政宗も出張ってきた。伯父甥が、互いに戦うことも珍しくない戦国の世である。義光にとっては、政宗は夫人の実家を襲う敵である。それが、ただ甥であるというだけに過ぎなかった。この機会に討ってしまおうと考えていた。対陣する政宗も同様であろう。


 互いに緊張関係にある中、不意に一両の輿が現れた。担いでいるのは、義光も見知った者たちであった。


――あれは、お義につけた従者たちではないか――

 義光は、不意に現れた輿と従者に驚いた。お義とは、義光の妹であり、義姫と呼ばれている。伊達輝宗に嫁ぎ、政宗を生んだ母でもあった。

 義光が驚いて本陣を出て、前線の柵に走った。伊達陣からも三日月の前立て兜を被り、漆黒の甲冑を着た武者が、前線に走ってきた。右目は、刀の鍔の眼帯をしている。義光は、政宗であると認識した。


「愚かな兄よ、馬鹿な息子よ、出て参られるがよい」

 よく通る声で、義姫が叫んだ。義光は馬を走らせて、義姫の許に駆けた。敵陣からも、政宗が騎馬を走らせてきた。


「お義、何の真似だ」

「母上、なぜここに」


 義光と政宗の言葉を聞いて、義姫は怒声を発した。

「何の真似? なぜここに? それはわらわのセリフじゃ! 伯父と甥、仲良く致さねばならぬ二人が、なぜここで、こんなバカな真似をするのじゃ。それゆえ、愚かでバカと申したまでのこと。気に入らぬかえ?」


 義姫の言葉に政宗が反発した。


「政宗は、我が妻の実家を攻めたのだ。それを守るために戦うことのどこが悪いと申すのだ」

 義光も、義姫を詰った。義姫は二人の言葉を聞いて、手を叩いて喜んだ。


「左様か、兄上。義姉上様のご実家、大崎家を攻めるのを止めれば兵を引いてくださるのじゃな。ならば、政宗、大崎家から兵を退いてたもれ」

「母上、なりませぬ。それに、父上が亡くなってから大崎家はじめ多くの国人たちが伊達家を見くびておりまする。それゆえ、見逃してはならぬのです」

「なればこそ、お主の伯父である義光殿を頼みなされ。兄上は、義弟である我が夫を亡くして困っている甥を見捨てるような薄情な者ではありませぬぞ。一族家臣たちを守り慈しむことこの上ないお方じゃ。のう、兄上。政宗を助けてたもれ」


 義光は無言であった。政宗も、義光を睨みつけている。


「さて、こうして助け合わねばならぬ二人が、戦いあう事こそ、愚かで馬鹿なこと。私にとっては、大事な二人が戦いあう世こそ、地獄。そうであるならば、妾はそんな姿を見とうはないゆえ、この世を去りたく存じまするぞ」


 義姫が手を上げると、ズドンという鉄砲が一発放たれた。義光と政宗はともに驚き、音のした方に目を向けた。  


「あれなるは、我が伊達家の誇る鉄砲隊の面々。妾の命令で、妾を撃つよう命じておる。二人が殺し合う地獄を見るよりは、我が夫と同じく鉄砲で撃たれて死ぬるが本望。さ、政宗、我が夫と同じく、お主の命で妾を撃ち殺してたもれ」

 

 かつて政宗と対立した二本松義継という国人領主がいた。政宗の攻勢に不利を覚り、義継は、義姫の夫であり、政宗の父の輝宗を人質として拉致しようとした。輝宗は、自身の存在が今後の政宗の枷になることを嫌った。そのため、輝宗は自身を鉄砲隊に撃たせて死んでしまったのである。

 それと同じく、母を撃てということは政宗にはできなかった。


――これは、敵わん――

 義光は、義姫の機転と度胸に改めて舌を巻いた。義光は、政宗の許に歩み寄った。


「がっはははは、政宗よ我らの負けじゃあ。ここは、お義のいう事に従い、互いに兵を退くといたそうではないか」


 政宗も異存はなかった。義姫は、満足そうに頷いた。


 この義姫の行動によって、最上家と伊達家の全面戦争は回避されたのである。


◇◇◇


 秀綱は、このやりとりを嘉蔵から聞いた。嘉蔵は、何度か義光と秀綱の間の書簡のやりとりで、山形と上方を往復していた。そして、この場面に居合わせたのである。嘉蔵が、秀綱と光安に語る話には、臨場感があった。


「秀綱よ、さすが殿の妹御だな」

 光安も感に堪えぬ風に話した。


「ああ、おかげで大規模な戦は避けられそうだな」

 秀綱も安堵のため息をついた。


秀綱と光安は早速に家康にも報告をした。家康も安堵の表情を見せた。そして、併せて、秀吉との面会の時期が決まったと知らせてきた。10日後に聚楽第で、秀吉に面会できるとのことであった。


――戦は避けた。出兵の名目も、正室の実家を救うためであるという名分は保てるからな――

 

 秀綱と光安は、今度は自分たちの戦だと思って臨む決心をしていた。

 

次回は、秀綱と光安は、豊臣秀吉に面会をします。


秀綱の目には、秀吉はどう映るのか

 


お楽しみにお待ちください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ