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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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秀綱、再び上方へ

秀吉登場まで行けなかったです。

しかし、秀吉に会うまでに出したかった駒姫を出すチャンスだと思って、登場させました。


豊臣政権は、大大名有利な裁定を行う印象です。

その理由も描いてますので、少々長くなってしまいました。


東国一の美女とうたわれた駒姫は、太史慈の記憶ではある人に似ています。

それは、最上の今後を暗示しています。


今回は、あまりアクションはないんですが、次回に向けての変化を生じさせる回です。

 秀綱は、最上義光からの酒を注がれた。隣にいる光安も同様であった。

 

 最上家では、節目節目の大事な場面で、酒宴を催した。主従が、酒と料理を共有し、互いに疑い疑念がないことを表したのである。料理や酒は、互いの膳から取り合うことで、毒のないことを身をもって証明したのである。


 だが、それ以上に義光が、「同じ釜の飯を食う」ことを重視し、主従や家臣間の結束を固めたいと思っていたのである。


 そして、今回、義光は、新たな天下人と目される豊臣秀吉に使者を送って、誼を通じようと考えたのである。人選は、織田信長に好感を持たれた秀綱と光安に自然と決まった。斯くして、二人は今回の宴の中心になってしまったのである。


「今回の使者の役割は、豊臣秀吉に敵対する意思はないと示して、現在の領地を認めてもらうことにある」

 義光は、厳かに言った。秀綱は、頷いた。

――秀吉殿は、信長殿の後継者だ。悪いようにはならないだろう―― 

 秀綱は、楽観していた。


「殿、此度の使いは、難しゅうございます」

 光安は懸念を表した。


「何故じゃ?」

 義光は問うた。


「秀吉殿は、織田信長殿と親しかった者たちを嫌ってございます。それは、疚しさにございましょう。現に、信長殿に絶対の忠誠を誓い、織田家第一を考えた柴田勝家殿を滅ぼし、信長殿のご子息を害し、阻害し、織田家を簒奪したのは、秀吉様にございます。その疚しさを常に感じておるように思います」


「儂も思うところはある。しかし、天下を治めるには、正当性よりも力であろう。それをどうこういう

つもりはない」

 義光は、複雑な思いを抱く顔で話した。秀吉という人物を、心の中では認めていないのだろうと秀綱は感じた。


「左様です。力が大事なのです。ですから、秀吉殿はその力をもつ人々からの支持を集めることを重視してございます」


「それは、大大名をひいきするということか」

 脇から秀綱が割ってはいった。光安は頷いた。


「既に豊臣政権内で、力を得ている大名家は、毛利輝元殿、前田利家殿、徳川家康殿などの100万石格の大名方です。彼らが支持するということで、自己の正当性を強めております。そして、ここに上杉景勝殿が加わることは必定」

 

 庄内をめぐって争っている上杉景勝の名が出たため、座がざわついた。


「我らは一歩、後れを取っておるか」

 光安は認めた。


「だからこそ、取次役として引き続き、家康殿に頼ろう。家康殿も、我らには好意的だ」

 秀綱の言葉に、光安は首を振って否定した。


「家康殿に頼るしかないのだ。だが、上杉は、豊臣政権の中枢にいる人物と強い繋がりをもっている奴がいる」


「直江兼続か」

 義光は、その口を出して、ため息をついた。


「だからこそ、庄内に上杉が手を出せぬよう、会津の蘆名を通じて、新発田重家殿の反乱を助けているのだがな」

「即刻、やめましょう。蘆名家だけでも、今は十分に善戦できるだけの力を新発田殿は蓄えております。今のうちに手を引いて、反乱を支援した痕跡を消すべきです」

 

「惣無事、か」

 席にいた剛力無双の延沢満延のべさわみつのぶが、呟いた。


「左様です。先年、九州に出されたこれを、上杉殿は奥羽に持ってくるでしょう」

 光安は、満延の言葉に我が意を得たりと頷いた。


「だが、現状では庄内は我らが有しておる。これを守れば、問題はあるまい」

 秀綱は、光安に尋ねた。


「で、あればよいのだがな」

 光安は、翻って義光をみた。

「とにかく、上方に我ら行ってまいります。殿も戦は決してなさらぬように、ご自重くだされ」

「わかった」

 義光が、頷いたとき、一同が集まった座に、赤い打掛を着た少女が入ってきた。

「姫様、なりませぬ」

 後ろから、侍女も追ってきたが、少女においつけなかった。


「おお、お駒か」 

 義光は相好を崩した。8歳になる、最上義光の娘、駒姫であった。義光に似ない美貌の持ち主になるであろう、母の大崎御前に似て目元涼しく、聡明であると、家中でも評判であった。

 義光も見た目とは違って、源氏物語に造詣が深い。父の義光自らが、源氏物語の話をするなど深く愛された姫であった。


「こんなむくつけき男どもの中に来てはならんぞ」

 義光は、侍女に手を引かせて、駒姫を奥に帰らそうとした。だが、駒姫は帰らず、義光の許にあった瓶子を手に取って、秀綱に酒を与えようとした。秀綱は、盃で受けた。駒姫は、重さに震えながら、ゆっくりと盃に酒を注いだ。


「お主が鮭延秀綱殿か」

「いかにも」

 少しあどけない、ゆっくりした声で駒姫は話した。

「父が、お主を大事な家臣だからとよく話をするのです。父は、鮭がとても好きなので」


 駒姫の言葉に、座は沸いた。

「左様じゃなあ、鮭好きの殿の側近に、鮭延秀綱殿はうってつけだなあ」

 このような声が上がり、緊張した空気が弛緩した。ニコっと笑って、駒姫は退出を促す義光の言葉に従って、奥に下がっていった。



 

 秀綱は、急に頭痛を感じた。眉間に皺寄せていたら、ある女性の顔が浮かんできた。


 その顔は、夫・孫策の戦に従う太史慈に、「夫の背中を頼みます」と語った顔に似ていた。

――大喬だいきょう様!!――




 秀綱はあやうく叫びそうになった。光安も、何かを察して黙っている。


「おい、秀綱。娘はお主を気にかけているようだが、浮かれるな。いくらお主でも娘はやらんぞ」

 義光は、駒姫が奥に下がったのを見届けて、再び正面に座った。


それがしも、いかに忠義を尽くす殿であっても、義父上ちちうえと申し上げる度胸はございませぬ」

「がっははははは、こやつめ、言いおるわ」

 

 姫の乱入によって、宴は賑やかなものになった。だが、秀綱は、あの駒姫がやってきたことの意味を考えていた。


――ここは、義光様の危機の始まりという暗示なのかも知れぬ――


 ならば、最上家のために、殿を守り抜くまでだと秀綱は決意した。



 天正16年(1588年)正月 

 秀綱と光安は、上方に向けて旅立った。目的は、秀吉に面会して、現在の領地の支配を認めてもらうようにするっことであった。


 しかし、この年、出羽山形の南 米沢にいる義光の甥 伊達政宗が、義光の運命を大きく揺るがしてしまうのであった。

 


次回は、伊達政宗がやんちゃして、義光と激突する予定です。

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