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過去編2 魔女視点

シオンに初めて出会った時、師匠に会う前の昔の私を見ているようだった。

今にも消えてしまいそうに儚く、憎しみに囚われていた頃の私と重なって見えた。

基本誰とも関わらないように生きてきた私が彼を気になったのはそのせいだろう。


「敵なんかいない」

私はいつの間にか呟いていた。

シオンの辛そうな顔を見ていると自然と出てきた。

それでもまだ泣き続けている。

こんな時どうすればいいだろう。

ほとんど人と関わっていないせいで話し方すら忘れてしまった。

とりあえず私はシオンを抱きしめた。

優しく、そっと。

私の親代わりとなってくれた師匠も私が泣いていた時よくそうしてくれた。

「あの、もういいですよ。」

シオンはいつの間にか泣き止んでそう声をかけてきた。

「ありがとうございます。落ち着きました。」

「よかったら、何があったか教えてくれないか。」

「いえ、なんでもありません。あんなことで泣いていたら英雄になんてなれないので。」

私でよければ相談相手になってあげようと思ったのだが思っていたより強い少年だった。

「そうか、じゃあ偶に遊びにおいで。おそらく長いことここに留まるだろうから。」

この森は魔力が満ちており、私の魔術がうまく使いやすい。幻術、探索の魔術で追ってからバレずに長いことこの森に居座れるだろう。

彼にはバレてしまったが問題ないと思う。

「わかった!じゃあね。テラさん。」

帰る時には子供らしい笑顔になっていた。



それから、シオンは2日に1回くらいの頻度で私のところにやってくるようになった。

「そういえばこの前、長いこと留まるって言ってたけどそんなことして大丈夫なの?」

「ああ、幻術回避(ミスディレクション)を使っているからな。この森に入っても私の元にはたどり着けない。」

「でも僕は会えたけどなんで?」

「私に合おうとしていなかったからかな。」

一応千里眼(サードアイ)で周りの状況がわかるから意図的に避けることはできるがシオンを初めてみた時、妙に目を引かれた。

「へえ、だから初めの方にここに来たときに村の人にバレたんだね。」

「いや、あれは少し油断していた。」

想定以上にこの場所の環境が良かったので浮かれていたときだ。

「テラさんって魔女って言われてるから怖いのかと思ってたけどそうでもないんだね。」

無邪気に笑われてしまった。


私はシオンに私の旅してきたところの話をしてあげた。10メートルくらいの大蛇や龍が住んでいる岩山の話、外を出歩くたびに税金が取られる国の話。他には国民全員が幸せそうに暮らしている国の話。

どんな話でもシオンは熱心に聞いてくれた。

おもしろい話だったら笑って、悲しい話だったら悲しんでくれるから話しているこちらも楽しくなる。

シオンは身近な自分の話をしてくれる。

「テラさん。そういえばこの前ね、ユリと水を出す魔術の練習をしてたらね。僕が失敗してユリをびしょ濡れにしちゃったんだ。そしたらユリね。『水はやべえだろまじで。』って怒っちゃんだ。おもしろいよね。」

面白いのか?

少しまずいんじゃないのか。

でも、とてもいい笑顔をしている。

「そうか。」

とりあえず相槌を打っておいた。

そんなことを話していたら日が暮れだしていた。

「そろそろ帰らないと。じゃあね。」

「またな。」

シオンは楽しそうに聞いたり話したりするがユリや自分以外の話はほとんどしない。

この前の泣いていた理由もまだ聞けていない。

私に追いに来る時、偶に目を赤く腫らしてくることがある。

おそらく泣いてから来ているのだろう。

心配なので過保護かもしれないが千里眼(サードアイ)でシオンを観察することにした。



ちょうどシオンを見つけた時、恐る恐る家に入ろうとしていた。

自分の家なのに怯えば我那覇入り、リビングに誰もいないことを確認したら安堵している。

そのまま自室に行き、本を読みだした。

シオンは11歳か12歳くらいだがその部屋には木剣があり、本も多く大人びた部屋に思える。


次の日、シオンは朝早くから起き父親と剣の稽古をしていた。

二人は稽古中では真剣な顔をしているが、休憩中では雑談をして親子らしい空気がある。

昨日は家に入る時に異様に怯えていたから家の人間と何か問題があるのかと思ったが父親とは仲がいいのだろうか。

それよりも稽古中にたまに私と目が合う時がある。

この千里眼(サードアイ)はあくまでこちら側から見ているだけであって向こう側では視認できるものがないからこちら側に気づきようがないはずだ。

稽古の後は母親と合流し、リビングで三人で食事をとっていたことから母親とも問題がないのだろう。

「シオーン遊ぼ―」

声をかけてきたのはシオンと同い年くらいの明るい女の子だ。

おそらくシオンがよく口にしていたユリという子だろう。

「食べ終わったら行っていい?」

「進度は早いくらいだし、いいんじゃないか。」

「すぐ行くー」

シオンは昼ご飯のカツ丼を急いで掻き込んだ。



二人は歩きながらシオンが話し出した。

「今日は何して遊ぶの。」

「えーっと、じゃあ。日向ぼっこでもする?」

「もしかして決めてなかったの?」

「えーいいじゃん。シオンは最近よくどっかいっっちゃうんだもん。」

「まあいいけど」

「それで今日は何してたの?」

「父さんと剣の稽古かな。」

「魔術はやってないの?」

「今日はやってないかな」

「ここいい感じだ。」

いい場所が見つかったらしく二人は原っぱに座り、喋り続けている。

「この前みたいな水の魔術はないの?」

「この前って、めっちゃキレてたじゃん。」

「でも楽しかったし。」

「今までのは全部見せたし、もうないよ。」

「そっかーそれでね。」

ユリがそう言った後、小鳥のさえずりだけが響いた。

お互いが黙っているがユリもシオン気まづそうにせず、彼方を見つめている。

少し経ったあとユリが話し出した。

「ねえ、私ちょっと考えたんだけど。シオンのこと好きだよ。」

「僕もだよ。結婚したいと思ってる。」

「え!ほんと?うれしい!大人になったら結構しようね。」

「うん。」

「結婚しても私たちこんな感じかな。」

「かもね。」

「かもねって。それ嫌ってこと?」

「嫌じゃない。」

「そっか!よかった。」

「僕、ユリと一緒にいると楽しいよ。」

「私も。楽しい。」

二人はその後も他愛のない会話をして家に帰った。


家に帰る途中、シオンの家が騒がしかった。

「ユリ、家に帰ったほうがいい。」

「うん。」

シオンは危険を感じ、途中まで一緒に帰っていたユリと別れた。

急いで帰った先では多くの兵士が集まっていた。

大雑把に数える50人はいるだろう。

シオンの父親と武装した兵士が会話をしていた。

「早く処理したほうがいいだろう。」

そういったのはシオンの父親だ。

「そうですね。」

それに兵士も賛同する。

「今も魔女はこちらを見ているのだから」

そう言い、シオンの父親はこちらを指さした。

シオンのほうではなく、私自身を。

すぐに私は魔術を切った。



稽古中にこちらを見てきたのは気のせいじゃなかった。

千里眼(サードアイ)を通してこちらを認識できるほどの実力者がいる。

魔術を使ったとしても大した時間稼ぎにならないだろう。

早くここから逃げ出さなければ私の身が危うい。

そう思いすぐにその場を逃げ出した。

結構気に入っていたんだけどな。残念だ。

普段はシオンと話すことしかしていないから暇なときはこの森を探索していた。

おそらくこの森のことは村の人間より詳しいだろう。

村から遠く、わかりずらい道から逃げ出した。はずだった。

「こっちにいるぞ。」

なぜばれているんだ。

シオンの父親か?

もし、彼がそこまでの実力者だったら相対するのはかなりまずい。

それなら兵士数人を相手にしてそこから突破したほうがまだマシだろう。

私は戦闘向きではないにしてもその程度なら造作もない。

木の根(ウッドウィップ)

木の根を周囲から無数になり兵士に巻き付き、行動不能にさせる。

しかし兵士たちは優秀なのか、根を切りすぐに戦闘態勢に戻る。

それでも私の懐には入ろうとせず、牽制をするだけで時間を稼いでいるだけ。

まずい、時間が経てばシオンの父親が来てしまう確率が上がる。

「初めまして、魔女さん。」

時間切れだった。

「初めまして。あなたの名前は?」

「アーサー・アリステラ。」

「私は」

「いい。剣の錆になる名前は聞かないようにしているんだ。悲しくなってしまうからね。」

緊迫した空気が漂う。

先にアーサーが踏み込んでこちらに迫ってきた。

木の根(ウッドウィップ)!」

「おっ!」

彼の動きは想定以上に早く、彼の頬に傷をつけてしまった。

「楽しくなってきたな!」

誰も傷つけるつもりはなかったが、そんなことを考える暇がなくなってしまった。

彼は本気(マジ)だ。

こちらも全力で行かないと殺してしまう。

やるしかないのか。

シオンの父親だぞ。

木の根で何とかしのいでいるが、彼はすぐに私を殺すことができる。

時間の問題だ。

やるしかない。

私は決心し、無数の木の根を彼の心臓にめがけて突き出す。

「テラさん!」

その声と同時に私の心臓に剣が突き刺さる。

気を取られた。

しくじった。

シオンのせいじゃない。

私の考えが甘かった。

この小さな村にこれほどの実力者がいるなんて。


「テラさん!死んじゃいやだよ。」

シオンが声をかけてきている。

やはり死ぬのだろう。

「シオンそんな奴にたぶらかされるな。俺の息子だろう。」

「あんたみたいな父親知らない!テラさんが僕の親だ。」

シオン。

憎んではだめだ。

「シオン。これを託す。英雄になるんだろ。」

そういいながら私はシオンの胸に手を伸ばし、託した。

固有スキル英雄(紡ぐものたち)









とある村


A「最近、アリステラって人が前線で活躍しているらしいな。」


B「アリステラって無冠の英雄の?」


C「違う。その人はもう退役して今は50歳くらいだろ。」


A「どうやら、その息子らしい。だけど父親と喧嘩して家出した後軍に入ったらしいな。」


B「その話聞いたことある。息子が魔女と駆け落ちしようとして喧嘩したんだって。」


C「じゃあ、今はその魔女とよろしくやってんのかもな。」


B「かもな。」


A「今は魔族の勢いが強いらしいから、新しいアリステラが俺たちの希望になってくれるといいな」


C「だな」

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