4話 テロ3
アリステアが魔術の檻を解析しているとき、同時に檻の中の時間のながれを変える魔術を使っていた。
それにより、外での1日が檻の中では1年となる。
檻の解析には5時間ほどかかったが、外では1分程度しか経っていない。しかし、この魔術の完全密閉された空間でしか使えないという条件がある。その条件を満たすことができる魔術で作られたことが不幸中の幸いだった。
「よし。おわった。」
「出れるの?」
解析が終わり、魔術を解除する。
カルは何もないところで5時間も耐えてくれた。
安全に国に返し、保護しなければならない。
魔術の檻が崩壊していき、跡形もなく消えた。
周りを見てみると見たことのないような景色が広がっていた。
草木が枯れていて、地面が赤みがかっている。
空気も気持ち悪く、呼吸もしづらい。
すぐにカルが体調不良を訴えた。
アリステアは保護魔術をかけて、カルを落ち着かせる。
しかし、檻を解除した先は変わらず地下室の中だと思っていたが見知らぬ土地に飛ばされてしまった。
転移や転送系の魔術はないのでスキルかアーティファクトだろう。
とりあえず探索用の魔術を使って元いた場所を探す。
魔術を使っても中々見つからず、見つけるのに10分ほどかかってしまった。
そして見つけたは良いもののかなり遠い場所に転送されてしまっていた。
今いる場所は魔族の領土のど真ん中で国からかなり遠い場所だ。
強力な魔族も多く、移動にも時間がかかる。
カルを連れてはかなり厳しい道のりだろう。
「わああ!」
そう考えているとカルの叫び声が聞こえた。
カルの目の前に大きな魔物が立っていた。
高さ10メートルで四足歩行、鋭い牙、鋭い爪を持ち足や胴が太い。
それはまるでゾウにライオンの顔と爪がついたような化け物のようなものだ。
アリステアはそれを見るやいなやすぐに1発殴る。魔物が体制を崩した後、1発殴って魔物の体を抉りながら殺した。
カルに見せるには少し残酷なのですぐに魔術で燃やした。
その後はカルの体調を見ながら進んだ。
道中はカルに保護魔術や治癒魔術をかけながら魔族を倒しながら進んでいき、国に帰ってきた。
全力で走れば数秒で帰ってこれたが、カルがいたので30分ほどかかってしまった。
「カル、帰ってきたぞ。」
帰ってきたが、何か物騒な気配を感じる。
とりあえず、アリステアはカルを信頼できる孤児院に預けた。
「ここで待ってろよ。」
「わかった。」
預けた後、すぐに走り出した。
アリステアは魔術で問題のありそうな場所を調べた。
軍の寮舎、放送所、議会。
この3つの中で危険な状態なのは議会、次に放送所、最後に寮舎だった。
アリステアは急いで議会の方に向かう。
議会に着くと数体の死体と倒れている魔族解放教会の人間がいた。
少し先に行くと瀕死の少年と怯えて座り込んでいる少女がいる。
少女の前にはアリステアを魔術の檻に閉じ込め、転送のアーティファクトを使っていた男が立っていた。
すぐに間に割って入り、その男を拘束した。
アリステアはその後すぐに放送局に行った。
そこでは魔族解放教会の人間と兵士が共闘しており、2対3の状態で膠着している。
なぜ魔族解放教会同士で戦っているのか疑問に思いながらもとりあえず放送局を守っている方に味方して3人の魔族解放教会を拘束した。
「どういうこと?なんで仲間割れしてるの?」
アリステアは魔族解放教会のローブを着たさわやかな青年に聞いた。
「彼らは過激派で私は保守派です。私は彼らの悪行を止めるために来ました。」
「なるほどね。ありがとう。詳しい話は後で聞くよ。あと、君もありがとうね」
そう言いながら魔族解放教会と戦っていた女性を見た。
彼女は凛々しい顔をしていてショートカットで髪が短く、引き締まった体をしている。
「アリステア特別中将殿。お会いできて光栄です。私はシャイニング・ハート一等兵と申します。」
ハートは敬礼しながら言った。
「ハート一等兵良く頑張ってくれた。この後は残っている兵と一緒に負傷者の救助と一般人の安全確保を頼む。私はテロリストたちの拘束と輸送をする。」
そう言った後、ハートはすぐに行動した。アリステアは倒れている魔族解放教会の人間全員を担ぎながら保守派の青年と一緒に他のテロリストがいる留置所に向かった。
この国は宗教の自由があり、魔族解放教会は世間では変な新興宗教という認識だったがいつの間にか過激派と保守派に分かれてしまっていた。
この保守派の青年はただ魔族と仲良くしたいという思いを抱いて魔族解放教会に入ったが、過激派の勢力が強くなってきてしまって今回の騒動になってしまった。
青年と会話をしていたら留置所に着いていた。
留置所にいる兵士に事情を説明し、青年を預けた。
過激派を止めるためとはいえ、市街地で剣を抜いので軽い罰則はあるが戦闘中は防御に徹していたので彼は誰も傷付けていない。すぐに解放されるだろう。
留置所の中を歩いているとローレンスと呼ばれていた過激派の一人を見つけた。私がわざわざここに来た理由は彼に会うためだ。
「君が私を閉じ込め、遠くに飛ばしたんだね?」
「ああ、そうだよ。転送のアーティファクトを渡されてそれを使えって言われた。」
「誰に?」
「わからない。会議は基本的に薄暗いしみんなフードを深く被っているから顔がよく見えなかったから。」
「そうか。それと、なぜ犬族の君が人間しかいない魔族解放教会に入っていたんだ?」
人族と犬族は多種族の勢力に対抗するため、同盟を結んでいるが基本的に別々の場所で暮らしている。多少交流はあるが文化が違うので一緒に暮らすことはできない。
「僕は犬族にしては弱すぎたんだ見ればわかるだろ。そりゃ、人間に比べたら強いさ。だから僕の住んでるところから迫害され追い出された。逃げて行った先で魔族解放教会の人に保護された。あの人たちは優しかった。僕を愛してくれた。そして僕には魔術の才能があったんだ。あの人たちに恩を返したかった。」
ローレンスはかなりの人間を殺していた。重い罰を受けることは免れないだろう。しかし、魔術の才能はかなりある。私の部下として再教育する手を考えていいかもしれない。
最後にはグリフィスに会いに行った。この後予定があるから早く済ませなければならない。
彼は体の損傷が激しく、生きているのも奇跡なほどだった。
今も隣でユズが魔術をかけ続けている。
アリステアも到着してすぐに魔術をかけた。
「これでもう大丈夫だ。」
ユズは驚いたようにアリステアを見つめた。
治療に専念していたせいで来たことに気づかなかったらしい。
アリステアの魔術はレベルが高く、魔術でできる範囲はすでに終わった。
あとは自然回復を待つだけだ。
アリステアは魔術で戦況を見ていた。
グリフィスはロバーツと戦っていた時に一瞬だがアリステアの腕力を上回っていた。
アリステアはもし、彼が上手く成長すれば自分を超える力を持つかもしれないと思っていた。
しかし、彼の力には危うさがあった。
そのため、彼を気にかけなければならない。
わざわざ来たのはそのためだ。
「君、後は頼んだよ。」
そう言い、アリステアは前線に向かった。
本当なら子供と遊んだ後、すぐ前線に向かう予定だったが色々あって出発が遅れてしまった。ラーバン大将は大丈夫だろうか。




