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3話 テロ2

アリステアが魔術の檻に閉じ込められ、転送のアーティファクトで飛ばされたとき。

魔族解放教会の過激派は国家転覆を始めた。

過激派は議会、放送局の制圧を始めた。


議会は連合国の要である。

防衛や外交や行政など国の全てを議会で決定しているので、警備のためかなりの戦力が置かれている。

しかし、今は魔族の討伐のため今までで一番手薄になっている。

今の議会の警備には若く、経験の浅い兵士たちが多くいる。

「ラーバンさん大丈夫かな」

議会を警備している16歳の剣士の少年がつぶやいた。

体つきはしっかりしているがまだ子どもらしさの残る顔つきをしている。明るい茶髪に少しパーマがかかっているくせ毛で、目の奥には情熱を灯しているような力強さがある。

「ちょっとグリフィス、大将をつけなさいよ」

隣にいる同い年の魔術師の少女がその少年に注意した。

少女は少年と同じ軽装備だが剣ではなく杖を持っている。少女は黒髪のポニーテルで髪の長さは肩くらいまである。

その2人は親しげに会話している。

「今回は魔族の軍勢が多いんでしょ?」

「でもよユズ、ラーバンさんならどんな敵でも吹っ飛ばしちまうよ!」

「私語は慎みなさい」

2人が会話していると上官に注意されてしまった。


上官の注意されたあと、敷地内を警護していると入り口のほうが騒がしくなってきた。

「正門のほうかな?」

少女は不安げになりながら言った。。

「行ってみよーぜ」

2人は持ち場を離れ、騒がしい方に行ってみた。

そこに行くと死体が2体転がっていた。

おそらく門の前にいた守衛だろう。

その上には魔族解放教会のローブを羽織った奴が2人立っていた。

「何をしている!速やかに投降しろ!」

その場にいる数人が唖然とし、怯えて戸惑っている中、上官が叫んだ。

「無理に決まってんだろ!殺すぞ!」

ローブを羽織った一人が怒鳴った。身長180センチほどのガタイのいい男だ。

上官はその怒号に一瞬うろたえたがすぐに気を取り戻した。

「全員、その2人を捕らえろ!」

上官がそう言った後、兵士1人が突っ込んでいったがガタイのいい男が向かってきた兵士を視界の外まで殴り飛ばしてしまった。

その光景を目の当たりにした兵士の1人が喚き声を上げながら逃げた。

それを見た他の兵士たちも武器を置いて逃げ出そうとしたが、ガタイのいい男は最初逃げた兵士含め、逃げようとした兵士たちを次々と殴って吹っ飛ばしていった。

「うるせえよ!黙れ!」

殴り飛ばし終わった後、ガタイのいい男は死体に向かって叫んだ。

その場には少し離れたところにいた剣士の少年と魔術師の少女、そして上官の3人しか残っていない。

少年は怯えながら剣を構えて、地べたに座り込んで失禁している少女を庇うように立っている。

上官は少年の横で槍を構えている。

「ユズ!しっかりしろ。」

少年は少女を呼びかけた。

「グリフィス!ユズを連れて逃げろ。」

上官は少年の名前を呼び、前へ出た。

「嫌だ!俺はヒーローになるんだ!逃げてちゃヒーローになれない!ここで逃げたらダメなんだ。」

グリフィスは自分の震える体を押さえつける。

「ごめんユズ。俺に強化魔術をかけて。」

「うん。わかった。」

ユズは震えながらも杖をつきながら立った。

「死ぬなよ。」

上官はそう言い覚悟を決めた。

そんな中、ガタイのいい男が隣のもう1人のローブを羽織った奴に喋りかけた。

もう1人の魔族解放教会の奴はグリフィスよりも小さく弱そうに見える。おそらく男だと思うが、華奢すぎて男のようには見えない。

「なあローレンス、あいつらって殺していいの?」

「確か、武器を持っているやつは殺して武器を持ってない奴が降伏したら捕まえろって言われてたな。だからわかんない」

「だったら殺して良いってことだろ!頭悪いなあ!」

「僕よりも君のほうがバカだろ!」

グリフィスたちは彼らの言い争っている内容が理解できなかったが、理解できないことを認識するほどの余裕はなかった。

そして、その2人が言い合っている中、上官がローレンスと呼ばれていた小柄な男に向かって突っ込んでいった。

上官が小柄な方の懐まで入ったところで

暗闇の穴(ダークフォール)

ローレンスがそう言うと、上官は闇に包まれた。そう感じたすぐあとに、長時間奈落に落ち続けているような感覚に陥った。

気がつくと上官は倒れていた。

「今のは魔術だよー。気づいた?」

ローレンスは満面の笑みで上官に話しかけるが上官は恐怖で声が出なかった。

「返事しろよ。」

そう言った後、上官を蹴り飛ばした。

その時にフードが外れ、顔が露わになった。

彼は毛深く、目がまんまるで頭の横ではなく上に尖った耳がついていた。

彼は犬族であった。

犬族は人族よりも身体能力や五感が優れている。

「こっちもやろーぜ」

グリフィスたちが上官の方に注意が向いているとガタイのいい男が少年に向かって言ってきた。

グリフィスは構えたが男は一瞬で目の前に移動し、グリフィスを殴り飛ばした。

かなり飛ばされたが、ユズの魔術のおかげで即死は免れた。しかし瀕死の状態となってしまった。

「もう終わりかよ!」

ガタイのいい男がそう叫ぶと飛ばされた方向からグリフィスが歩いてきた。飛ばされる前のグリフィスとは雰囲気が全く違う。

「勝負はこれからだろ!」

瀕死のグリフィスは笑いながら歩いていた。

「俺の固有スキルは起死回生(しっぺがえし)!ダメージを受ければ受けるほど自分自身が強くなる!」

「そうか!俺はロバーツ!固有スキルは衝撃(インパクト)!殴ると同時に殴った威力の数十倍の衝撃を与える!」

ロバーツと名乗るガタイのいい男はグリフィスの雰囲気がさっきまでとは全く違うことに気づいた。

自分の固有スキルを明かすことはなんのメリットもない。

しかし、お互いはハイになっておりそんなことはお構いなしだ。

ロバーツは全力でグリフィスを殴ろうとするが弾き返される。よろけている間にグリフィスは畳み掛ける。

何度も胴体を殴りつける。

その間グリフィスは笑みを浮かべている。

その光景を前にしてユズは怯えているが気にせず殴り続ける。

そのまま殴っているといつの間にかロバーツは動かなくなってしまった。グリフィスの右腕も。

「え、やられたの。」

声のした方を向くとローレンスが上官の生首を持って立っていた。

グリフィスは悲しんだ。

兵士になりたての自分を気にかけてくれた上官を殺された。

怒りがこみ上げる。

「何やってんだよ。ガキ相手にやられんなよ。怒られるだろ。バカだなあ。ていうかバカってなんだ。頭悪いことか。自分より頭悪かったらばかってことなのか。でもそれって主観的なものだよな。勉強できなかったらバカってことか。僕は魔術がうまいからあいつのほうがバカだよな。あいつ僕にバカって言ってたよな。おかしいよな。なんでバカにバカって言われなくちゃいけないんだよ。」

ローレンスは周りを気にせず喋り続ける。

グリフィスは歩きながら近づき、左腕で全力で殴る。

「痛いな。強いな。」

全力で殴られ、かなりの距離を飛ばされたはずだが、ローレンスは意外にもピンピンしている。

グリフィスはすぐに追撃に出るが避けられてしまう。

「君は強いから一瞬でケリをつけよう」

そう言うとローレンスは指先に魔力を込める。

グリフィスはすぐに止めようとしたが遅かった。

超高圧雷砲(ピストレットエレクト)

直径1メートルの電気の塊が超音速でグリフィスにぶつかる。

電気の塊はグリフィスを押しながら50メートルほど進んだところで消えた。

体の正面は焼け焦げ、倒れてしまった。

しかし、まだ立とうとする。

「あれ、普通は貫通して体は蒸発するのに。なんで生きてんの。君のせいかな。」

ローレンスはそう言うと怯えて立っているユズの方を見た。

「君、魔術の才能あるんだね。僕ほどじゃないけど。魔力の底が見えない。将来が怖いね。殺すよ。」

ユズを殺そうと魔術を使おうとするとグリフィスが飛んできた。

「何終わった気になってんだよ。まだまだやれるぜ!来いよ!おい!ユズ!もっと魔術をかけろ!」

全身が傷だらけで血だらけの中、笑っているグリフィスに怯えながらユズは頷き、黙って身体強化魔術と治癒魔術をかける。

右腕は動かず付け根から垂れていて、胴体と顔の正面は焼け焦げている。

それでもグリフィスは笑っている。

固有スキル起死回生(しっぺがえし)はダメージを受けると自分自身が強くなるが、同時に体内に快楽物質が出て興奮状態になる。

これにより、アドレナリンが分泌されグリフィスは痛みを感じない。


「もっとやろう!もっと!」

「しょうがないなあ。いいよかかってきな。」

そう言うと同時にグリフィスが殴りかかる。

ローレンスも負けずに殴り返す。

グリフィスはその場にいるままだが、ローレンスはふっとばされた。

「痛え。本気出さないとな。空気の手足(ギアエア)。」

ローレンスはそう言いながら合掌をした。

それと同時にグリフィスは左右両方向から潰されそうになる。

空気の塊が強い力で押してきているが、それ以上の力で押し返す。

動ける空間ができたところですぐに抜け出す。

空気の攻撃を避けながらローレンスに近づく。

殴ろうとするときローレンスも自身の拳で殴り返そうとした。

しかし、拳が届く前に気を失ってしまった。

ローレンスは気を失い倒れそうになるグリフィスを思いっきり殴り飛ばした。

「うあー。強かった。じゃあ次は君の番だね。」

ユズの方にゆっくりと歩いていく。


そんなとき2人の間に人影が入ってきた。

「ええ。早くねえ?」

驚くローレンスの前には生きる伝説と呼ばれているアリステア・テイラー特別中将が立っていた。

「遅くなってすまない。後は私に任せろ。」

ユズはその声に安心して気絶して倒れてしまった。

少しでも変な動きをすればすぐ殺されると感じ、ローレンスは呼吸することにも細心の注意を払った。

目で追うことのできないスピードで移動しグリフィスに治癒魔術をかける

「ひどい損傷だ。よく頑張った。」

その後、すぐにローレンスの目の前に移動する。

「あのお。降伏するんでお手柔らかにお願いします。」

ローレンスがそう言ったあと、いつの間にか気絶させられた。






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