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二種類目のモンスター

お読みいただきありがとうございます。

旧版では、二種類目のモンスターからボス戦まで一気に行きましたが、少々長いので分割しました。

内容は旧版と変わっていません。

細かい部分で表現を変えたり追加したくらいです。

左折路の手前で、画面に左向きの矢印が現れた。

X氏は、今度は通路の右端ではなく、曲がり角がある左の壁に背をつけて立った。

壁から覗くように曲がり角の先を伺う。

「ここは曲がるまでに時間がかかるとモンスターがかなり接近してくるので、出合頭に鉢合わせする場合があるんです」

X氏はそう説明した。

「大丈夫です。行きましょう。」

曲がり角の先を確認したX氏がそう言ったので、全員で角を曲がる。

10歩ほど進んだだろうか、レーダーの上部中央に赤い点が四つ現れた。

遠目に見えるシルエットは、今度はゴブリンではない。

四足歩行型モンスターのようだ。

やがて姿がはっきりしてきた。

犬?いや狼タイプか。

大型犬くらいのサイズ感だ。

画面左のENEMY枠に、DARK WOLFと表示が出て、わたしが知っている狼よりも体毛が多く、それが針金のように尖っている四足獣のグラフィックが現れた。

体色はダークウルフというだけあって。ダークグレーだ。

目の前にいるダークウルフは、牙をむいて今にも嚙み付きそうだ。

唸り声が聞こえる。

尖った体毛も、あれは触れると刺さるんだろうか?刺さると痛そうに見える。

爪も鋭く、引っかかれたら痛いどころではないだろう。

ゴブリンは、動きも速くはなかったので、こちらが攻撃を受けるイメージはわかなかったが、ダークウルフは、油断すると攻撃されそう、というイメージが沸く。

「ダークウルフは耐久力がゴブリンより高いので三発当ててください!」

X氏が銃の構えを解かずに叫ぶ。

三発か、思ったより耐久力低いな、楽勝かも、そう思ったわたしはすぐに間違いに気づく。

ゴブリンのようにゆっくり歩いてくれない。

しかもジグザクに動くので、弾が当たらないのだ。

三連射。一発目は当たった、二発目、三発目がかわされた。

横の動きに合わせて銃で追うが、すぐにまた反対側へ移動された。

さらに追いかけて狙いを移動し、三連射する。

またかわされた。

焦りが出てきた。

やばい、かなり近づかれた。

ふとX氏の方を見てみた。

「タン」「タン」とリズムよく発砲音がして、ダークウルフが倒れた。

一発目はわたしが見る前にすでに当てていたようで、2発目と3発目のヒットを見れたようだ。

連射ではなく、リズムよく間隔をあけて撃っていた。

この人は、最初のゴブリンもそうだったが、連射をしない。

必要最小限の射撃で倒している。

自分の受け持ちモンスターを倒したX氏は、私の視線に気づいて声をかけてくれた。

(いや、視線はゴーグルで見えないのだが、顔がそちらをむいているのでわかったのだろう)

「モンスターの移動を追いかけても無理です。移動先の位置を予測して、予測した位置に移動のリズムに合わせて弾を置く感じで!」

リズムに合わせて移動先に弾を置く。

えらく簡単げに難しいことを言われているような気がする。

たしかにダークウルフの横移動は、一定のリズムで行っているようだ。

なるほど、移動幅も同じ距離のようなので、移動先の位置は予測できる。

そこを狙って先に撃っておく。

当たった!三連射の二発目が当たり、ダークウルフがひるんだ。

が、すぐに立ち直って再び横移動を始めたので、先ほどと同じようにリズムを合わせ、移動前に移動先へ弾を置く感じで撃つ。

感覚が分かってきた。

3発目が当たった。

ダークウルフが倒れ、点滅して消えた。

「よし!」

思わず声に出た。

A氏も苦戦しているようだ。

横殴りに連射しているが、ダークウルフの移動を追いかけているようなので、逃げられている。

ダークウルフの背が低く、こちら側の背が高いので、横殴りでは移動するダークウルフに弾が当たらないのだ。

わたしたちの位置は、わたしとX氏が近く、A氏とB氏は近いが、わたしたちとは少し離れているので、わたしとX氏の会話は聞こえなかったようだ。

「必要なら援護しますが、移動先を予測して、予測位置にタイミングを合わせて撃つと当たるそうですよ!」

わたしは少しA氏に近づいて声をかけた。

弾が当たると、ダークウルフは1発で即死ではないが、ひるんで少し後退する。

A氏とダークウルフとの距離がまだ少し空いているところを見ると、おそらく2発は当てて下がらせているようだ。

「わかりました!」

A氏は答えると、撃ち方を変えた。

連射音がリズムを持って聞こえるようになった。

ダークウルフの動きに合わせてタイミングを計りながら撃つように変えたのだろう。

ほどなく倒せるだろう、と思われた。その時、

「あっちゃ!」

別な方向から声がした。

B氏の声のようだ。

見回すと、ダークウルフがB氏から飛び離れたところだった。

飛び離れたということは、めいっぱい接近されたということで、ダークウルフに接触されたのかもしれない。

モンスターに接触されると、プレイヤーにダメージが入る。

パーティー仲間のライフゲージは見えないので、B氏がどれほどのダメージを受けたかはわからないが、ダメージを受けたのは間違いないだろう。

すでにダークウルフに接触されるほど接近を許したということは、おそらく一発も当てられていない。

実際にあのとげとげしい体毛で体当たりされることを想像すると、ゾっとするが、ダメージを受けたと言っても、プレイ上はゴーグルに軽い振動があるだけで、実際に痛みがあるわけではない。

なので、ダメージで撃てなくなることはない。

だがライフゲージの数値が100%ではなくなり、ゲージの色も青ではなくなっているはずなので、焦りは出る。

「攻撃受けちゃったよ!ライフゲージが緑になった!」

B氏が悲鳴のような声を上げた。

「援護いりますか?」

わたしは数歩B氏に近づいて声をかけた。

「助けてください!当たらないんです!」

B氏は、わたしを振り向きながら、そう叫んだ。

わたしは、B氏に近づくと、再びB氏に向かって行こうとするダークウルフの、移動に合わせてタイミングを計ると、2発連射した。

そのうち一発が命中し、ダークウルフが下がった。

「わたしの声に合わせてタイミングを取ってください!右、左」

わたしは、ダークウルフの横移動のリズムに合わせて掛け声をかけた。

B氏は、わたしの掛け声に合わせて弾を発射したが、ダークウルフの姿に向けて撃っているので、弾が届くときにはすでに移動しており、回避された。

「移動する先に向けて撃ってください!右、左!」

B氏は移動先に向けて撃つが、今度はタイミングが合わない。

そうするうちに、ダークウルフがまた接近してきて、あとひと飛びでB氏に接触する位置まで来た。

わたしはもう一度銃撃し、命中したのでダークウルフは再び後退した。

「右、左!」

後退したダークウルフが、再びジグザク移動を始めたとき、わたしの声とB氏が移動先の位置にうまく弾を撃ったのとタイミングが合い、ダークウルフに命中した。

ダークウルフは倒れ、消滅した。


お読みいただいてありがとうございます。

2種類目のモンスター戦です。

前書きに書いた通り、細かい表現で少し追加や変更をしています。

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