プレイ開始
お読みいただきありがとうございます。
改訂版「プレイ開始」です。
旧版での「オープンの日2」と「プレイ開始」をまとめた内容です。
プレイ前の説明をプレイしながらの説明に修正しました。
内容はほぼ変わっていません。
わたしたち三人は、そろそろとステージに足を踏み入れた。
中は薄暗い。
一見、お化け屋敷のような印象だが、そこまで暗くはない。
先頭にA氏B氏が並び、2列目にわたし、少し遅れてX氏が歩く。
けっこう緊張してきた。
自分の心臓がバクバク言っているのが聞こえる。
見える映像は、ゴーグルを通しての景色なので若干の違和感はあるが、カメラと液晶の解像度が高いおかげだろうか、想像より違和感は少ない。
映像はフルカラーだ。
かなりはっきりと見えているといってよいだろう。
液晶画面の視界内には、左側に「ENEMY」と表示された領域があり、その下は枠だけがあって空白だ。
右側に使用弾数と経過時間、それに自分の体力が「LIFE GUAGE」という表示の下に横長のバーと%で表示されている。
すべては視線移動で視認できるようになっている。
スピーカーがヘッドストラップの耳の近くに配置されており、自分にだけはっきりと音が聞き取れるようになっている。
おそらく銃の発射音やヒット音、それにモンスターの叫び声も聞こえるかもしれない。
ゴーグルと銃とベルトはケーブルで接続されている。
ゴーグルの後頭部から伸びたケーブルが、ベルト後部の腰のボックスへ、腰のボックスから伸びたケーブルが、銃のストック最尾部の下部へ、という具合だ。
銃は、HK-MP5サブマシンガンをカスタムした銃のように見える。
ストックは固定ストックで伸縮できない。
マガジンは30連マガジンだろうか。
これも固定で抜くことはできないようだ。
銃は重そうに見えるが、それほど重く感じない。
バッテリーなどは、腰のボックスの方に入っているのだろう。
数歩歩いてみて、床が固くないことに気づいた。
コンクリートむき出しではなく、カーペットのようなクッション性のある素材が敷かれている。
両サイドが塀になっている通路を歩く。
塀は3Mほどの高さでところどころにひびが入って汚れている。
通路の端にはコンクリート片や倒木などの瓦礫がある。
塀からある程度離れて歩いていれば歩行の邪魔になるようなことはないが、あまりにビビって端を歩きすぎると、瓦礫に歩行を邪魔されるかもしれない。
躓いたり、ぶつかると危ないのでは?と思い触ってみたところ、ウレタンのような柔らかい素材だった。
通路前方に左折路が見えてきた。
画面に左向きの矢印が出た。
『左へ曲がれ』という意味だろう。
「左角からゴブリンが出ます!」
突然声がした。
A氏B氏が驚いて振り向く。
明らかにスピーカーからではなく、直接聞こえた声だった。
それも後方からだ。
わたしも驚いて振り向くと、声の主はX氏だった。
彼は銃を構えたままススっと最前列に出ると、通路の右端に移動し、そこで停止して左の曲がり角の先に向かって銃を構えた。
画面の中央上部に三重の円があり、その円の中心より上のやや左寄りに赤い点が4つ現れた。
この円はレーダーで、敵の位置や数を表示する。
円の中心は自分の位置で、中心の上は前方になる。
さらに画面左のENEMYの下に、人型モンスターのグラフィックが現れ「GOBLIN」と表示された。
青いライフゲージと100%という数字も表示される。
その時、曲がり角から、背の低い緑色の皮膚をしたモンスターが現れた。
実写と見紛うほどではないが、とはいえいかにもCGというほどでもなく、それなりにリアルで立体的だ。
たしかに目の前に存在しているように見えて、見入ってしまった。
ためしにゴーグルを少しずらして肉眼でみたところ、当然だが通路とパーティーメンバーは見えるがモンスターはいない。
ゴーグルを戻すとたしかにゴブリンは目の前にいる。
手を伸ばせば触れそうだ。
皮膚はザラザラしているようで、顔はモンスターらしくふてぶてしく醜悪だ。
緑と黒を適当に混ぜたような肌の色をしている。
腰蓑のようなものを身に着けている。
身長は1Mくらいだろうか。
ファンタジー系コミックやアニメのゴブリンそのものだ。
丸腰の相手だが、これを倒すのに躊躇はないだろう。
それが四体、意味の分からない言語を耳障りな声で叫びながら、歩いて出てきた。
こちらに気づいて驚いたようなリアクションをしている。
芸が細かい。
X氏はゴブリンが現れたと同時に、即座に銃を発射し、一体を倒した。
A氏やB氏、わたしがゴブリンをマジマジと観察している間だった。
「残りはそれぞれ一体ずつ倒してください!」
X氏が叫んだ。
言われてハッとした。
初めてのモンスターに緊張しているのと、本当に目の前にいるかのようなCGに夢中で、三人とも銃すら構えていなかったのだ。
X氏の声のおかげで緊張が解けた。
わたしは我に返ると、銃を構えてこちらの方に進んでくるゴブリンに狙いを定め、引き金を引いた。
銃声とともに、弾が発射されるエフェクトが画面内に出て、銃が軽く振動した。
本物の銃を撃ったことはないが、おそらく本物よりはかなり軽く抑えた演出だろう。
しかし、撃っている実感があり、なかなかに満足感がある。
3連射したところで弾が命中し、ゴブリンは体力ゲージが一瞬で赤になり、残量も0%になって倒れた。
弾は曳光弾のように光りながら飛ぶので、照準が合っているかどうかが、分かりやすくなっている。
当たるとヒット音がして、敵の表面で血しぶきのようなエフェクトも出る。
おそらくヒットしたのは一発なので、ゴブリンは一発で致命傷になるのだろう。
倒れると、死体は点滅して消えた。
A氏も銃を連射し、一体を倒した。
B氏は連射しているが、慌てすぎて狙いが定まらない。
モンスターは基本的に受け持ちがあり、どのプレイヤーを攻撃してくるかが決まっている。
自分の受け持ちのモンスターには、自分の画面上だけ、モンスターの頭の上に▼が出る。
残り1体のゴブリンは、B氏に近づこうとしている。
モンスターが狙うプレイヤーは決まっているが、倒すのは狙われたプレイヤー以外のプレイヤーでもよく、パーティープレイの意味はここにあると言っていいだろう。
A氏とわたしが援護しようと銃を構えたが、「待ってください。ここで助けると練習ステージの意味がありません。自分で倒してもらいましょう」
とX氏に止められた。
言われてみれば、まだ最初のモンスターだ。
B氏はめくらめっぽうという感じで撃ちまくっている。
少々パニック気味のようだ。
フレンドリーファイヤ(同士討ち)の判定はないので、被弾してもこちらにダメージはないが、判定があったらここで全滅していたかもしれない。
なにしろ、銃を構えてないのに引き金を引きっぱなしなのだ。
プラクティスステージの最初の敵と会敵した直後、フレンドリーファイヤにより全滅して、しょんぼりしながら退場していく自分を想像すると、なんとも悲しかった。
フレンドリーファイヤの判定が無くて本当に良かった。
わたしが一人で表情をころころ変えているうちに、B氏もゴブリンを倒したようだ。
ホッとした表情のB氏の肩を、A氏が爆笑しながら叩く。
B氏は必死で言い訳をしているようだ。
わたしは友人でもないB氏をからかうわけにもいかず、苦笑していた。
X氏はストイックにもう角を曲がって進んでいる。
ここからX氏が先頭になった。
誰かが言い出したわけでもなく、自然とそうなった。
みんなが自然にX氏をパーティーリーダーと認めたということだ。
通路左側は、廃ビルになっている。
2階建てで、2階の窓が4Mか5Mくらいの位置に並んでおり、窓ガラスははまっていない。
その二階の窓から、ゴブリンがまたしても四体飛び降りてきた。
今度は、各々手にダガーナイフや斧を持っている。
実はゴブリンが現れる前に、X氏が窓に向かって銃を構えていたので、そこから敵が現れるのだろうと予測していた。
レーダーに赤い点が出るよりも早かった。
飛び降りたゴブリンが地面に着地するや否や、待ち受けていたX氏は一体を倒した。
わたしももう驚いてばかりではない。
頭の上に▼がついた一体を、3連射で倒す。
A氏も危なげなく一体を倒した。
B氏はどうやら遊びでエアガンなども持ったことがないようで、銃の構え方もよくわかっていないようだ。
ストックを肩に当てもせずに撃っているので狙いが定まっていない。
だが、先ほどよりはマシで、かなりの弾を使ったがほどなく一体を倒した。
弾数無制限なので、別に問題はない。
そのあとA氏が今更のように、銃の構え方を教えていた。
ストックを右肩に当て、左手でハンドガードを持ち、銃を固定して照準器で標的をとらえる、という具合だ。
今後はもう少し狙いが定まるだろう。
やがて、また左に曲がる角が見えた。
お読みいただいてありがとうございます。
旧版と内容はほぼ変わっておりませんが、説明の場所を変更しました。
細かい表現なども変更しています。
初めての会敵なので、主人公の緊張が伝わっていれば嬉しいです。




