世紀の大発明
「博士、とうとうこの日が来ましたね」
「ああ。ありがとう、山田くん、きみのお陰だ」
研究ラボにて、年老いた教授と若い助手が、悲願の発明・自律可動式嘘発見器百七号を完成させた。
この自律可動式嘘発見器とは、嘘を発見した場合、その嘘付き相手に痛烈な攻撃を喰らわせると言う設定にしてある、誰が得するのか不明で、ある種画期的な物だった。
「は、博士、まずは起動させてみませんか?」
「そ、そうだな。山田くん」
逸る気持ちを抑えつつ、二人は恐る恐ると言った面持ちで、起動ボタンを押した。
その電気信号を受けた自律可動式嘘発見器百七号――人間を模した鉄の塊は、低重のモーター音を響かせながら、仰向けに寝かされていた台から起き上がった。
「う、動いたぞ! 山田くん」
「うご、動きましたね教授!」
台から降りた自律可動式嘘発見器百七号が、人間の屈伸を模倣するように膝関節を伸ばしたり、腕関節を伸ばしたりと、アクティブにアップを始める。
「やりましたね! 教授」
「…………」
「教授?」
教授は感動のあまり失神していた。
「ダメだこのジイサン」
助手はやれやれと首を横に振る。
「はっ!?」
僅かな失神から立ち直り、教授は辺りをキョロキョロと見回した。
「今、ワシの悪口を言わなかったか?」
「え、言う訳ないですよ教授ぐはっ!?」
自律可動式嘘発見器百七号の飛び膝蹴りが助手の腹部に決まる。
「自律可動式嘘発見器百七号はいかなる嘘も見抜く。山田くんはそんなことも忘れたのか?」
助手は腹部を押さえながら、よろよろと立ち上がる。
「すみません。忘れてました」
「なんたることだ。助手である君がワシの信念の結晶を忘れるとは。ワシはついぞ忘れたことはなかったぞぐはっ!?」
自律可動式嘘発見器百七号の飛び膝蹴りが教授の腹部に決まる。
「教授も忘れていたってことじゃないですか! 今まで真面目に尽くしてきた僕がバカみたいじゃないですかぐはっ!?」
自律可動式嘘発見器百七号の飛び膝蹴りが助手の腹部に決まる。
「そうか……きみは真面目に尽くしてきた訳ではないのだね」 教授と助手は腹部を押さえながら、よろよろと立ち上がる。
「これなら約束していた娘との結婚はなしだぐはっ!?」
自律可動式嘘発見器百七号の飛び膝蹴りが教授の腹部に決まる。
「……約束は嘘だったんですか?」
「……嘘ではないぐはっ!?」
立ち上がろうとしていた教授の腹部を、自律可動式嘘発見器百七号の飛び膝蹴りが襲った。
「嘘だったのか……」
発明は大成功だった。