音楽アレルギー
音楽アレルギーのあいつが倒れた。
あいつは、ずっと、母親に音楽に触れないように、学校にも、病院にも、お店にも行かせてもらえなかった。
1歳の誕生日で発症した。ハッピーバースデーの曲で、息が荒くなった。それがお昼頃でよかった。小さな赤ん坊をすぐに病院に運ぶことができた。だが、病名は、明らかではない。アレルギー検査をしても、出てこない。病院内に音楽が流れだした。すると、目を大きく見開き、泣き叫び、苦しもがいていた。音楽と離れて、暮らしていかなければならないことが、決定した。こんなに、悲しいものはない。”No music no life”と言われているぐらいだから、音楽のない日常なんてないだろう。
あいつは、スマホも持っていない。なぜかって、youtubeも、LINEも音楽であふれかえっているからさ。
あっ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は、和田瑞貴。
あいつは、神谷辰也。俺たちは、アレルギーを持っているものどうし、仲良くやっていた。俺は、紫外線アレルギー。こっちも珍しいと思うだろうが、音楽アレルギーなんて、聞いたこともなかった。
辰也は、ずっと音楽には、触れてこなかった。だけど、辰也が倒れて発見された場所は、クラブ。不思議だと思うだろう。音楽に触れてはいけない辰也が、そんなところ行く?辰也が行ったのには、理由があるはず。辰也は、おつかいですら、頼まれたことがないくらい、人と接したことがなかった。辰也はいつも、「僕は、世界を見たい。ここ以外で人と会いたい。」といつも言っていた。だからきっと、「誰か」と会うために、クラブに行ったんだ。
「みず、瑞貴なのか。えっと、ごめん。心配させて。」辰也は、起き上がってすぐに俺にそう言った。
「先生、辰也、起きました。」と言おうとすると、辰也が、震えている手で俺の手を抑えてきた。
「瑞貴、ねぇ、おねがい。誰にも言わないで。」
「…お母さんにも」怯えている目で訴えてきた。
「もちろんだ。絶対言わない。」俺は、まっすぐ辰也を見た。信頼してくれよ。親友。
「ありがとう。僕、クラブに行ったんだ。」
「入る前から、心臓がどきどきしてた。だけど、死ぬ前に、音楽ってものを知っておきたくて。」落ち着いて話していた。
「まてよ、お前、死んでもいいとか言ってんのか。」
「瑞貴だって、太陽の温かさ知りたくないの?」
「知りたいよ。でも、死んだらその体験に価値がなくなるだろ。」「ごめん!」俺は、思わず、ぶった。「痛い、でも、クラブで音楽聴いたの間違いじゃなかったかも。」
「馬鹿なこと言うなよ。俺が、倒れてるお前見て、どれだけ…」
「倒れたのは、音楽のせいじゃないよ。」口笛を吹いている他の患者だけど、辰也は発作なんて起こしていなかった。
「どういうことだよ。音楽アレルギーじゃねぇのかお前。」




