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悪役令嬢の息子の話

作者: 山田 勝

「ケビン、モモカさんと遊んではいけません」

「どーしてだよ。母さん」

「どうしてもよ。貴族の家ですわ。貴方、貴族分かっている?」


「分からないよ。でも、モモカちゃんの家、とても大きくておばさんも優しいよ」

「そう、なら、モモカさんの家の子になっちゃいなさい」


「母さんの馬鹿!」

「こら、ケビン、待ちなさい!」




 ・・・・・・・・・・・・



 今日、母さんと喧嘩をした。

 とても良い母さんなのは分かっている。普段は友達を差別しない。

 しかし、貴族の子と遊ぶと途端に嫌がる。


 これは母さんの秘密に関係していると思う。

 最近分かったことだが、母さんは品があるらしい。


 友達の家に行った時に分かった。



「うわー、何だよ!」

「え、母ちゃんの下履きだよ。ケビン、変なの、お前のうち干さないのかよ」

「見たこと無いよ!」



 どうやら、母ちゃんはこっそり干しているらしい。

 前から美人だとは思っていた。

 話す内容も街のマダム達とは違う。



「ねえ。ねえ。奥様、今月号の『王国婦人の友』新聞、読みました?『旦那様は男色家だった!あなたの旦那様は大丈夫?男色家の見分け方特集』ですって」

「ギャハハハハ、見た。見た。男のくせにイケメン吟遊詩人に行く旦那はヤバいってあったわね!」


 とスキャンダルを話すが、うちの母ちゃんは、


「フウ、嵐が来たからお野菜が高くなるわね・・・良い保存方法ないかしら?」


 と婦人新聞を読んでいる。



 うちでは母さんが勉強を教えてくれるが、教材は母ちゃんがつくってくれたものだ。



「母さん。書けたよ」

「そう・・・良いわね」


 父ちゃんに聞いて見た。

「ねえ。母さん。もしかして、貴族の家の住み込みの家庭教師だったの?」

「おう、ケビン、お前のスキル判定式の日に教えてあげるよ」

「ヒヒン、ヒヒ~ン」(ご主人、仕事だぜ)

「おう、白、行こうか」


 父さんは、馬子をしている。珍しい白馬だ。

 力も強そうだ。

 僕も馬子になろうと思っている。馬子ならテイラーだったら良いな。


 スキル、全王国民が付与されているわけではない。

 12歳の誕生日に教会で鑑定されるのだ。

 そこから、スキル持ちは選別される人生を送る。


 だが、スキルは王族が勇者、聖女、貴族が剣聖、賢者、魔道師を独占をしていて、平民のほとんどはスキル無しだ。

 良くてお針子、鍛冶職でも出れば王宮に召し抱えられるまでもある。


 貴族令嬢も有力なスキル持ちと結婚しようと躍起になっているようだ。

 良いスキル持ちの貴公子に群がる。


 だが、モモカちゃんは貴族令嬢だけど、こんな平民の中の平民の僕にもモモカちゃんは優しい。ピンク色の髪の可愛い子だ。



 あ、ついた。街の中で一番大きなお屋敷だ。


「モモカちゃん!あ~そ~ぼ~!」


 すると、ドアが開き。門番さんが出てきた。モモカちゃんも一緒だ。息切れをして僕を迎えに来たのか?可愛いな。


「ケビン様、お待ちしておりました」

「ハア、ハア、キャー!ケビン様、待っていたわ!」



 部屋に案内され、母さんと喧嘩したことを愚痴った。


「まあ、ケビン様のお母様って、切目の厳しい方ね。私の伯母様はとても優しいわ」


「伯母様って?」

「私のお母様のお姉様でピンク髪のとても可愛らしい方ですわ。男の子が生まれなくてね。いたら絶対可愛がるって言っていたわ。私の名のモモカの名付け親でもあるわ」

「ふ~ん。不思議な響きだね。でも可愛いよ。あ、そのこれは、好きとかではなくて・・」

「おやつも食べ放題ですわ。私、ケビン様、好きかも、貴族になったら婚約しやすくなるわ。キャ」

「え、うちの母さんもおやつを作ってくれるよ」


 途中、変な雰囲気になった・・・


「勉強もそんなに頑張らなくても良いのよ。ケビン様のお母様は少し厳しいと思うわ」

「まあね。でも、優しいところもあるよ。ほら、お守りも作ってくれた」

「フフフ、それよりも、ケビン様のために勇者セットを買ったのよ」

「ええ、マジ?見せて!」



 勇者セットとは子供の間で勇者ごっこが流行っている。羽のついた兜に、盾、木刀のオモチャだ。


 母さんは買ってくれない。まあ、お高いから仕方ないけど、モモカちゃんは僕のために買ってくれたのか。


 庭に出て、護衛騎士に素振りを教わった。

 羽のついた兜を被って、オモチャの聖剣を素振りしてみた。


 ブゥン!


 大きな音が出たな。これもオモチャの効果音か?



「フフフ、さすがケビン様、とても似合いますわ」

「えへへへ、オモチャのしかけだよ」


「いや・・・これはもしかして・・ケビン様、スキル鑑定楽しみですな」

 と護衛騎士は感心してくれた。まあ、リップサービスだろう。行商人のおっさんに褒められているので慣れている。


 庭におば様、モモカちゃんのお母様が呼びに来た。


「そろそろおやつにしましょう。部屋に入って。モモカ、ケビン君、喜んでくれた?」

「ええ、さすが血ですわ」


「おば様、有難うございます。モモカちゃん。血って、父さんは馬子ですよ。すごいケーキだ!」

「フフフフ、食べながらで良いから聞いてね」


「はい」

「あのね。おば様の子になったら、毎日、勇者ごっこが出来るわよ」

「すごいですね」

「その勇者セットはあげるわ」

「ありがとうございます!実は欲しかったのです・・でも、母さんは嫌がるから、辞退します」


「フフフ、そんなお母様、気にすることはありませんわ。ところで、うちの家門の子にならない?」

「え、でも、母さんが心配するから・・・」



「あの女、ゴホン、私の姉、ウェンリーはね。嫁ぎ先で子供は女の子しか生まれていないのよ。嫁ぎ先で肩身の狭い思いをしているわ。元々は身分差の恋でね。スキルのある子が必要なの。勇者のスキルがあれば・・・・あら、寝ちゃったわね」



「お母様、眠り薬効いたわね・・・でも、スメラギア公爵家の血でも市井に落ちればクソガキじゃない。お母様、こんな子と婚約するの嫌だわ」


「フフフフ、ケビンと婚約すれば一生安泰ですわ。あの女の物は、全て取り上げるのがお姉様の方針ですわ。これから洗脳して、あの女を嫌いにさせますわ」



 その時、馬のいななきと、門が轟音とともに崩れた。

 煙とともに出てきたのは、一人の騎士と、蝶のアイマスクをつけた真っ赤なドレスのマダムだった。



「奥様、あの切目の女が来ました!旦那も一緒です!」

「何ですって、ローズマリー!あの憎き女が!」




「オ~ホホホホホ、誘拐の現場を押さえましたわ!さあ、ケビンを親元に返すのよ!私は正義の魔道師!紅薔薇!」

「と、お付きの白馬の騎士のロードだぜ!」



「バレバレだわ!ローズマリーと元護衛騎士のロドリゲスじゃない!」

「奥様、ケビンのお守りからわずかに魔力反応が!」

「もう、遅いわ!相手はババアとおっさんよ。やっておしまい!」


「まあ、あんただってババアでしょう!」

「ローズマリー、冷静に!」


「ババア、無理するな!」と嘲笑する魔道師、騎士達を投げ倒して。



 二人は圧倒的な魔道と武力でこの屋敷を無力化した・・・






 ☆☆☆ケビン視点



 気がついたら、家にいた。



「ケビン、モモカさんの家で寝ちゃって、あちらさんが送ってくれたわ。だめよ。他所様の家で寝ては」


「母さん・・・いろいろごめん」


「いいのよ。モモカさんね。ご夫人と王都に帰るのですって・・・」

「急だな。そうか、少し残念だ」


 僕の初恋は終わったか。そうか、貴族令嬢と結ばれるのはあり得ないから、母さんは遠ざけたのかな。



「ケビン、机の上をみてみなさい。お父さんがオモチャ買ってくれたわ」


 急いで勉強部屋に戻ったら、欲しくてたまらなかった勇者セットがあった。


「うわ。有難う。・・・でも、剣が布で出来ている・・」

「ええ、そうよ。勇者セットで剣術ごっこをして、怪我をする子が続出して発売禁止になったのよ。木刀ですからね」


「ふ~ん。でも締まらないよ」


「明日から冒険者ギルドに行きなさい。剣術を教えてくれるように頼んだわ。やるなら正統の師について行うのよ」


「母さん。有難う!」


 母さんは寂しそうな目で僕を見る。

 僕は10歳、後二年でスキル判定の儀がある。それが、終わったらどこかに修行だ。



 ・・・その後市井で、紅薔薇と名乗るマダムとロードと名乗るおっさんが、ケビンを狙う貴族たちと戦い。

 吟遊詩人に歌われることになる。ケビンがその正体を知るのは、後、もう少し先だ。











最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
仮面を着ければ親族でも正体不明の某○ンダムのお約束が通じない悪役とは空気を読まないおばさん達でしたね(笑)
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