表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/50

日常の陰で

 上野国、新田荘。

 総持寺、新田館。

 甘粕重兼は悩んでいた。

 一つは、以前から考えていた食生活の改善。

 もう一つは、新しい目玉商品の開発である。

 前者については、半ば諦めている。

 何しろ、この時代は食材と調味料が少なく、変化をさせるのが難しい。

 まして、重兼は美食家ではない。

 後者は諦める訳にはいかない。

 新田家の収入増加につながる事案で、もうすぐ起こる和田合戦における資金源にもなるからだ。

 今、収入が乏しい訳ではないが、お金があるのにこした事はない。

「何かないかな……」

 自室の床に寝転がり、重兼は考え込んだ。

 別に高価でなくても良い。

 大量生産が可能で、生活必需品に近い物。

 それなら安くても利益が見込める。

「……」

 しかし、思い浮かばなかった。



 相模国、鎌倉。

 重兼が呑気な悩みを抱えていた頃、北条義時は館で二人の男と対面していた。

 泉親衡と青栗四郎である。

「それは本当か?」

「いかにも」

 親衡が答える。

「我等は義盛めに、義時殿を討つ企てに加わるよう持ちかけられましたが、幕府を裏切るなど出来るはずもなく、お知らせに参った次第」

「殊勝な事よ」

 言葉とは裏腹に、義時の胸中には冷やかな思いが満ちていた。

 義盛よりも、自分に勝ち目があると思って裏切っただけだろう。

 まあ、義盛の無能を見抜いたのは褒めてやっても良いが。

 そう思っていた。

 勿論、口には出さない。

 義時は冷静だった。

 しかし、泉親衡の言葉には驚かされた。

「時房殿はからは、聞いておられぬのですか?」

「何だと!?」

 一瞬、理解出来なかった。

 何故、弟の事が出てくるのか?

「以前、義盛と義時殿を討つ話をしていたら、時房殿に聞かれてしまったのですが……」

 義時は答えなかった。

 動揺を隠すのに必死だった。

 何故、弟は、時房は知らせなかったのか?

 まるで分からなかった。

 しかし、それについて考えるのは後回しにした。

 今は、目の前にいる二人を丸め込んで味方につけるのが先だ。

 もしここで、北条家が団結していない事を知られたら、この者達は義盛につくかも知れない。

「……弟からは知らされていた。 ただ、どうしても信じられなくてな。 様子見をしておったのだ」

「左様ですか」

「まあな。 それよりも……」

 義時は思案をめぐらせた。

 義盛は動き出した。

 こちらも対応しなければならない。

 理想は、『将軍に対して謀反を起こした和田義盛を、北条義時が成敗した』という結果になる事だ。

 幸いな事に、現将軍の実朝は義時の手中にある。

 あとは、義盛が謀反を起こす理由を捏造すれば良い。

(どうしたものか……)

 暫くして、義時はある人物の事を思い出した。

 すると、瞬く間に理想的な筋書きが出来上がる。

(これはいける!)

 おのれの成功と勝利を確信した義時は、二人に目を向けた。

「二人とも、耳を貸せ」 

 近づいた二人に義時は、自分の思い描いた筋書きと、それを実現するための指示を伝えた。



 翌日、二人は和田義盛の屋敷にいた。

「信濃に戻るだと?」

「はっ。 所領で兵を集めておこうと思います。 義盛殿もそろそろ、御子息にでも兵を集めさせた方が良いかと」

「なるほど……」

 義盛は頷いた。

「誰かあるか」

 主の声に、下人が姿をみせる。

「義直と義重に伝えよ。所領で兵を集めておけとな」

「はっ」

 下人が下がる。

「それでは我等はこれで」

「うむ。 頼んだぞ」

 二人は退出した。

 顔に邪な笑みを浮かべて。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ