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進級して、刹那は退院した。
「お疲れ、刹那。」
でも。
一旦帰省と言われていた。
それでも嬉しくて。
一旦帰省中たくさん刹那と遊んだ。
刹那は定期的に病院に行きつつだった。
でも帰省期間が長くなったりして、ぼくはまたあの日々が戻ってくると思って嬉しくなった。
そんな気持ちが昂っていた日。
「ゆなくん。子役、年齢が高くなってきてるじゃない?小学4年生で終わりなんだけどね、ここ。もう3年生になりそうでしょ?まだ続けようと思ってる??」
先生にそう言われた。
進級した日から、一年が経とうとしていた。
刹那は、約1年くらい、一旦帰省を伸ばして、あの日々を。同じような毎日を続けていた。
「続けたいです。でも、小学4年生になったら潔くやめます。演技レッスンは無駄じゃないと思うので、仕事にならなくても。」
ぼくがそう言うと先生は優しい笑顔で頷いてくれた。
そこから1年。
必死になってレッスンして、仕事ももらえるように頑張ったけれど。
結局は4年間仕事をもらえず終わった。
「ありがとう、ゆなくん。みうみくん。」
最後はみうみくんと一緒に先生と3人だけのお別れだった。
「さよなら。ぼく、有名になって先生に見つけてもらえるように頑張ります。」
ぼくは宣言して、先生の答えを聞かずに家に帰った。
家に帰ると、そこに刹那はいなかった。
そうだ、1年前、入院期間に入り、半年前に一旦帰省するものの、また入院生活になってしまった。
長かった1年の日々は、2度と戻ってこない気がした。
でも、帰れば刹那がいる気がして。
結局誰もいなくて。
その後2年間。刹那の容体は変化することなく。
手術の準備をしながら入院したり、帰省したりを繰り返した。
そして、ぼくは歌い手になることを決める。
刹那が手術をすることになったからだ。
「頑張って。」
手術当日。
一言告げる。
その後不意にスマホを眺める。
中学生になってもらったスマホで何気なく、流行りの“歌い手”を眺めていた。
ぼくにもできるかもしれない。
そう思ったのは刹那の手術中。
不安の波が押し寄せてくる中の救いの船だった。