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第10話 介抱



「お兄ちゃん朝からどこ行ってたの浮気!? ——ってなんでそんなボロボロなのどうしたの大丈夫だれにやられたの!?」



 ウララの絶叫がズタボロの体に響いた。


 玄関で力尽きた俺は、ウララに抱きかかえられながらベッドに運び込まれる。


 ピンク色の壁紙にたくさんのぬいぐるみと俺の写真。


 ファンシーでかわいらしくも気持ち悪さとが同居したウララの部屋のベッドに寝かされた俺は、身の危険を感じつつも指一本動かせない。



「すごい汗……すぅ……すぅ……はぁ……っ、血管中お兄ちゃんの匂いでいっぱいだ……ふぅ」



 助けてください誰か。



「ま、まずは服、脱がせるね!」



 ジジジとウィンドブレーカーのチャックが下に降りていく。



「な、なんか部屋、暑くない? ウララも脱いじゃおっかなあ」



 床に投げられたウィンドブレーカーのすぐそばに、ウララのパーカーが脱ぎ捨てられた。



「つつ次は、シャツだね……っ、はぁはぁ」



 目の据わったウララが、鼻息荒く俺のシャツを真っ二つに引き裂いた。


 おいおいおい、おいおいおいおいおいおいおいおい。


 それは流石におかしいだろう!?



「じゃ、じゃあウララも脱いじゃお……んしょっと。……えへへ」


「っ!?」



 互いのシャツが床にふわりと着地した。


 野球拳ですか、これ。いやそれよりもタチが悪い。



「お兄ちゃん……あったかいね」



 上半身を裸にされた俺へ、同じく桃色の下着だけとなったウララがにこやかに体を寄せつけた。


 下着越しにやわらかな胸の感触が伝わってくる。ウララの温かい熱が、俺の頭をくらくらさせた。



「汗、拭いてあげるよ」



 おそらくアイテムボックスから取り出したと思われるタオルと桶と給水ポット。


 やけに準備がよかった。まるでこんな事態を想定していたかのように。


 怖。


 ポットから桶に注がれた液体から湯気が溢れる。そこにタオルを浸すと、ウララは俺の顔から汗を拭きはじめた。



「んっ、んっ……ぅ、はぁ」


「……!」



 生暖かいタオルが俺の体をなぞるたびに、密着したウララの胸も形を変えて滑る。


 意識を逸そうにもうまく逸せない。目線は、固定されたかのようにウララの谷間を見つめていた。



「お兄ちゃん……っ、お兄ちゃん……そんなにみられると、恥ずかしいな……ぁ」



 俺の視線に気がついたウララが、恥ずかしそうにしながらも強調するように押し上げる。



「そんなにすき……?」



 ウララは胸の谷間を指でなぞって言った。


 俺のではない、ウララの唇の端から垂れた液体が、胸の奥底に伝って消えた。


 どうにかなってしまいそうだった。


 様々な感情が入り乱れる。このまま、ウララを抱きしめて押し倒したい衝動に駆られる。が、幸か不幸か、元気なのは下半身だけでまだまともに体は動かない。



「もっといい景色、みせてあげる」


「……っ!?」



 ウララが立ち上がる。しゅるっと布が解ける音。床に、スカートが落ちた。


 白い素足がゆっくりと持ち上がって、ウララは俺の上に腰を下ろした。



「どう……かな?」



 ぜ……絶景です。



「喜んでくれてうれしいな。……ふふ、ねえ。なんかあたってるよ、お兄ちゃん」



 言って、ウララはズボン越しにタオルを当ててきた。


 布越しだというのに、俺は思わず息を漏らした。



「いけないんだ。いけないんだよ、お兄ちゃん。妹に興奮しちゃ、だめなんだよ?」



 片方の手で押し込まれながら、もう片方の手が俺の胸をなぞった。



「でも、仕方ないよね。お兄ちゃんは、ダメダメだから。妹に興奮しちゃうようなダメな人だから、しっかりもののウララが面倒見てあげなきゃだから」



 ウララの腰の位置がズレる。


 与えられた刺激に、腰がわずかに浮いた。


 ウララの声に、ひときわ妖艶さが増す。



「んふ、っ……お兄ちゃんはなにも心配しなくていいよ。ウララが、守ってあげるから。誰かになにを言われたって、ウララが守ってあげるからお兄ちゃんぅぅぅ……っ!」



 腰を動かしたウララが電流をあてられたかのようにビクッと跳ねて倒れてくる。すぐ目の前に、ウララの顔がある。


 トロンとした半開きの瞳が、俺を覗き込む。


 鼻先が触れて、金色の髪から甘い匂いがした。



「お兄ちゃん……」


「う、らら……っ」


「いいよね。お兄ちゃん。ずっと我慢してたんだから」



 腰が、動く。

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