7.この脳筋どもめ!
今の時間は、見習い騎士たちが休憩中なのか。本当に時折しかすれ違わないのに、その全員が簡素な革の防具を身に着けていた。
騎士の国であるエークエス王国では、正式な騎士の場合は正装していれば、胸に必ず身分や所属を示すための徽章をつけているので、見分けられる。
ただ訓練中につけるようなものではないから、その代わりに正式な騎士と見習いとを見分けるために、防具に差をつけていた。
(ゲームでは出てこなかったけど、この国では当たり前のことだったりするのが、結構不思議かも)
ちなみに簡素な革の防具は、見習いの時にしか身に着けない。だからすぐに判別できたわけだけれども。
彼らは先頭を歩く騎士団長に驚き、さらにその後ろを歩くプルプラを見て目を見開いたあと、急いで端に下がって頭を下げている。
この間、私に目が向くことは一切ない。
(分かるけどさぁ……)
プルプラの横とか後ろとか、騎士たちが固めてるわけだから。そっちに目が行くのは必然なんだけど。
一応私だって、王族なんだぞ!
(……ま、攻略対象キャラはちゃんと仕事してるけどね)
プルプラから一番遠い私の隣を歩くのは、メインヒーロー。そして後ろは、無口キャラ。
意外や意外。一見軽薄そうに見えるキャラも、最後尾で私とプルプラのちょうど間を歩いていた。
もしかしたら、彼らもこの時点で色々見られていたのかもしれない。その上で、選ばれたのだとすれば。
(妥当といえば、妥当かも)
それに、プルプラは時折私に話しかけてくるから。目に入りやすい位置でもある。
それを狙ってやっているのかどうかは別としても、騎士として職務を全うできるかどうか、誠実かどうかを判断されているのであれば。
(私のほうについた人物は、確実に一歩リードしてる)
その中で、彼らだけが選ばれた理由は分からないけれど。
私のほうに五人いて、プルプラのほうに十人近くいるわけだから。ある意味で、ふるいにはかけやすいだろう。
なんて。
感心していられたのは、ここまでだった。
「うおおぉぉ!!」
訓練中だから、邪魔をしないように少し遠くから見ていたはずなのに。一人、また一人とこちらに気づいたと思ったら。
目に見えて張り切り出す、彼らの目線は。プルプラにしか、向けられていなかった。
この脳筋どもめ!
(欲望に忠実過ぎる!)
私なんて、眼中にもないんだと。態度で示していると、なぜ気づかないのか。
貴族なんだから、少しは腹芸でもしてみせろと言いたくなるけれど。騎士にそんなものを求めるのは無駄だと知っているので、私も一切口を開くことはない。
ただ、既婚者までプルプラを見て、やに下がっているのは。どうかとは、思うけれど。
(これだから、この国の騎士は嫌なのよ)
正直、若干ロリコン入ってない?
男は若い女の子が好きだって聞いたことがあるけれど、私とプルプラって年子なのよ?
それで、この扱いの差って……。
(ほんっとにさぁ。よく『キシキミ』のヴァイオレットは、この国に残ろうとしたよね)
王族とはいえ。残る理由があるとはいえ。
誰も、自分を見てくれないような国に。
「騎士とは、本当に凄いですね。ねぇ、お姉様」
「えぇ。本当にね」
こんなに可愛い妹を、裏切ってまで。
(私は、そんなことできない)
プルプラを裏切ることも、誰も自分を見てくれないような国に留まることも。
だから、いいの。次の魔力持ちが生まれてくるのを、期待すれば。
たとえそれが、王族として生まれた責務を放棄することだったとしても。