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銀の騎士とアメジストの君 ~乙女ゲームの悪役王女は、お助けキャラを攻略したい!~  作者: 朝姫 夢
本編

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42/64

42.突然の別れ

「どういう、こと……?」


 その日渡されたのは、一通の手紙。

 差出人の名前は、ジェンティー・ヴェフコフ。紛れもない、私の推しキャラその人からだった。


「急ぎ戻らなければならない用ができてしまったとのことで、お忙しいヴァイオレット様にせめてお手紙だけでも、と」


 確かに、最近は忙しかった。プルプラの婚約発表に『銀の騎士』のお披露目と、国を挙げての行事だったから。

 王族である私も、当然参加しなければならないわけで。結果、ここしばらくはジェンティーに会えなくなっていたけれど。

 まさか、久々に訪れた図書室で。司書のおじいさんに、彼から預かった手紙を渡されるなんて。


(しかも、ジェンティーはもう、いない?)


 あまりにも唐突すぎる展開に、頭がちゃんと働いてくれない。

 確かに、いつものサロンに寄っても彼の姿が見当たらなかったから。もしかしてと思って、こちらに来てみたけれど。


「国中が慌ただしく過ごしておりましたからな。この老いぼれぐらいしか、手の空いている者がいなかったのですよ」


 おじいさんは、そう言ってくれるけれど。もしかしたら他に手紙を預けられる人物に、心当たりがなかったのかもしれない。

 だって私は、これでもこの国の第一王女。本来ならば、気軽に手紙のやり取りができる相手では、ないはずだから。

 しかも、誰もが忙しそうに動き回っている中、わざわざそのためだけに呼び止めるなんて。


(きっとジェンティーなら、そんなことしない)


 だから、図書室(ここ)だったんだ。

 私たちが最初に出会った、この場所なら。普段から人が少ないことを、知っていたから。


(急ぎの用って、なんだろう)


 考えてみれば、彼の出身国を聞いたことはなかった。

 世界は広いから。いくら一国の王女とはいえ、全ての国を把握しているわけでもないし。

 それよりも、目の前にいるジェンティーと一時(いっとき)でも会話できることのほうが、ずっとずっと大切な時間だったから。


(……ちゃんと、お披露目とか見れたのかな)


 街中がお祭り騒ぎのようになっていた、あの華やかな期間を。彼はちゃんと、自分の目で見ることはできたのだろうか。

 民衆へのお披露目が終わっても、各国からお祝いに来てくれた使者を、もてなす必要があったから。

 せめて私が忙しくしていた間に、街の活気だとか儀式だとかを見ていられたのなら、いいのだけれど。それはきっと、彼の今後の研究に役立つはずだから。


「中身は(あらた)めておりませんので、そのままお持ちください」

「……いいのかしら?」

「お二人の関係に、やましいことが一切なかったのは、誰もが知っている事実です」


 そう言って、おじいさんが私の後ろに控える侍女や護衛に、目を向けたから。つられて、そちらを振り向けば。

 全員が、しっかりと頷いてくれる。


(あぁ、そっか)


 私たちが普段サロンという、ある種公の場で開かれた空間にいたからこそ。会話内容も、ただの世間話の延長線上でしかなかったからこそ。

 今こうやって、彼らは信頼してくれているのだ。


「……ありがとう」


 ジェンティーとの突然の別れは、まだすぐには受け入れられないけれど。

 それでもまずは、一刻も早く、この手紙の内容を確認したい。


「ごめんなさい、今日は――」

「承知しております。どうか、ごゆっくりお休みください」


 それは、私が昨日まで忙しかったからという、(ねぎら)いの言葉であるのと同時に。

 唯一と言っても過言ではない、人生初の友人との、初めての別れに傷心(しょうしん)だろうからという、おじいさんなりの気遣いだったのだろう。


「えぇ、そうするわ。ありがとう」


 それを素直に受け取って、私はついさっき入ってきたばかりの図書室の扉を、もう一度くぐる。

 早く、早く。

 そんな焦燥(しょうそう)にも駆られながら、普段よりも早足(はやあし)で向かう先は。

 一人でこの手紙をゆっくりと読める場所である、先ほど出てきたばかりの自室だけだった。



~他作品情報~


 本日5/25は、コミカライズ版『幽霊令嬢』の更新日!(>ω<*)

 pixivコミック様にて、まだまだ全話無料で読めますので、ぜひ!!



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