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銀の騎士とアメジストの君 ~乙女ゲームの悪役王女は、お助けキャラを攻略したい!~  作者: 朝姫 夢
本編

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33/64

33.見てしまった

 当然といえば当然だけれど、今まで一度もそういった場面に遭遇(そうぐう)してこなかった私は、自分で思っていた以上にショックを受けていた。

 だって……。


「見てしまった……」


 推しとヒロインが、話しているところ……。

 お助けキャラだから、そうなんだけど……!

 というか、なんでそんなに攻略キャラに詳しいの!?


「本人に聞いたこと、ないんだよね」


 自室でお行儀(ぎょうぎ)悪く机に突っ伏しているけれど、誰もいない今だけは許してほしい。

 というか、本当に今までプルプラとジェンティーが会話しているところなんて、一度も見たことなかったから。本当に助言しているのかすら、(さだ)かじゃなかった。

 今回のことで、それが真実だったのだと知ってしまったわけだけれど。


「そりゃあプルプラは、たくさんの侍女と護衛を引き連れていたけどさ」


 それでも、わざわざジェンティーと話していたのは、事実でしかなくて。

 いや、分かってるよ? ただの知り合い程度でしかないって。

 だってそうじゃなかったら、二人が接触することを周りが許さないだろうから。


「……プルプラ、嬉しそうだったな」


 しかも周りの侍女や護衛たちも、ちょっとほっこりしたような表情だったし。

 もっと言えば内容だって、本当にただのアドバイスだったんだけどさ。


「…………いや、おかしいでしょうよ」


 そもそもなんで、他国から来た学者にアドバイスを求める? そしてどうして、彼は攻略キャラの好みや行動を把握(はあく)している?

 ゲームだったら、そういう仕様だからっていうメタ発言で許されたことも。現実に起こっていることだと考えると、疑問しか湧かない。


「恋愛対象じゃないって、知ってるけどさぁ……!」


 最推しが攻略できないキャラクターだったことは、私が一番よく知ってる。なんせ、何度も何度も通い詰めたんだから。

 何週もプレイして、裏ルートとかあるんじゃないかって必死に探して。

 それでも、見つけられなかったんだから。


「掲示板でも、隠しキャラなしって書かれてたし」


 だからプルプラとジェンティーの間に、恋愛感情がないのは理解している。

 いやまぁ、ちょっとモヤモヤしてはいるけれど。

 でも問題なのは、そっちじゃないんだよ。


「ジェンティーに限って、ないとは思うけど……」


 そもそも、侍女やら護衛の騎士たちやらが、彼の言動に不信感を抱いていないのであれば。おそらく大丈夫な、はずだし。

 入国の際に色々とチェックした上で、安全な人物だと判断したから、王城に招かれているわけだけど。


「間者ではない、はず」


 個人的にはそう思いたいし、国の体制的にもそうじゃないと困る。

 だから、私が疑う必要なんてない。

 そう、そのはず。……なんだけど。


「あぁ、もう!」


 思い出そうとしなくても、脳裏(のうり)をチラつくのは。楽しそうに会話している、プルプラとジェンティーの姿。

 そしてそのたびに湧き上がる、焦りと不安。


「私だって、ジェンティーと恋愛なんてできないんだけどさ」


 分かってる。分かってるけど。

 せめて今だけはまだ、彼の恋愛模様とかは知りたくない。

 プルプラが相手ならば、なおさら。


「……ジェンティーがプルプラに恋しちゃったら、本気で立ち直れないもん」


 ゲーム中、彼はどうやったって恋愛対象にはならなかった。ヒロインでは、攻略できなかった。

 そういうキャラクターだからこその、安心感があったのに。

 それが崩れ去ってしまったら、本気で現実に希望が持てなくなる。


「どうせ、いつか会えなくなっちゃうんだから」


 それまでは、推しの恋愛なんて知らないままでいさせてくれと。生粋(きっすい)のオタクっぷりを発揮(はっき)しながら。

 私はただ、祈ることしかできなかった。



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