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政治経済エッセイ

消費税20%への布石 10.1開始インボイス制度とは何か?

作者: 中将

質問者:

 ついに23年10月1日になりました。消費税のインボイス制度が始まってしまいましたね……。

 この制度って結局どんな制度なのか今一度教えていただけますか?



筆者:

 凄く端的に言うのならばインボイス制度は「弱者いじめ」の制度と言えますね。

 会計処理の事務負担は無駄に増えますし、物価の値上がりに拍車をかけるでしょう。

 たった2500億円の増収のために国民は大きな負担を強いられます。


 これまで消費税免税業者だった1000万円以下の売り上げの方を強制的に課税業者にすることや(インボイス登録は課税業者しかできない)、免税業者においても収入が下がる可能性があります。


 消費税は簡単に言うと粗利(売上げ-経費)から強制的に10%むしり取っていく制度です。

 つまり事業者の利益から直接課税されていると言ってもいいのです。


 ネーミングは“消費税”とあるので消費者が払っているような錯覚があるのですが、内容的には事業者が納めるので“売上税”と言える性質です。

 レシートの「消費税の欄」で〇〇円と書いていることや、

もうこの税の名前そのものから“罠“と言えると思いますね。


 これまでは1000万円以下の売り上げの方は免除されており、適格請求書発行業者(1000万円以下の消費税対象業者)にならないこともインボイス制度が始まってからも“可能”ではあります。



質問者:

 そうですよね。強制ではないから問題ないという意識もあると思います。



筆者:

 ところが、23年9月の大阪信用金庫の641社へのアンケートによりますと

『取引先が適格請求書発行事業者でない場合、「発行事業者になるよう依頼」30.3%、「価格交渉の実施」8.6%、「取引先変更を検討する」6.5%など、今後の取引を見直すことまで考える企業がありました。』

 とあります。


 つまり約4割の会社においてはこれまでの料金では取引をしなかったり、適格請求書発行業者でないと取引をしないと言っているのです。



質問者:

 なるほど、これで実質的に強制的に利益の10%が国に持っていかれてしまうということですか……。



筆者:

 鈴木財務大臣は「増税ではない」と言っていますし、自由と見せかけた民間同士による“事実上の強制“ですからよっぽどタチが悪いですね。


 しかし問題なのは、ソリマチ株式会社の調査によると、

 フリーランスや小規模事業者のうち、インボイス制度について概要を知らない人が約2割

また、インボイス制度への対応をしていない人のうち、「やり方がわからない」と回答した人も約1割いることがわかっています。

 つまり影響を受ける1000万円以下の売り上げの人たちの2割の人たちは概要すら知らないのです。

 これも政府の周知が足りないと言えます。



質問者:

 「益税」は無いにしても、免税業者の人たちが恩恵を受けていたことについて「ズルい」という意見があると思うのですがそれについてはどうなのですか?



筆者:

 心が冷たい経済学者や官僚、インフルエンサーなどは「これまで益税をむさぼっていた」「税金格差を是正する」などと言って、全く関係ないと思い込んでいる一般国民がそれに同調しているわけなんです。


 「今儲かってない奴らがいなくなっても構わない」という人もいますけど、すぐに売り上げが爆発的に上がる人ばかりではありません。徐々に売り上げのステップを踏んでいく人だっているはずです。そういった人たちの腰を折るような制度がこのインボイス制度だと言えるのです。


 そもそも思うのですが、所得の低い人たちに対して税金の優遇政策があるのは当たり前なんです。

 国は高い所得の人から税金を取って低い人に渡す「所得の再分配」の機能がありますからね。


 ところが今の日本は全く逆行していると言えます。

 ただでさえ日本は所得再分配の前と後で、分配が酷いことを示しています。

貧困率がどれくらい下がったかを示す「貧困削減率」という指標で、経済協力開発機構(OECD)の分析で、各国は再分配後に貧困率を20~80%削減していますが、日本だけが唯一、共働き世帯やひとり親世帯で、貧困率を8%増加させていたという悪夢のような実態があります。

(ちなみに高齢者世帯も所得は低いので所得の再分配機能が全世帯で見るとマシに見えるようになっています)


 つまり日本政府というのは端的に言えば、無駄に徴収して利益者集団にばら撒きすぎているのです。

適切に分配できないのであれば、極論を言うのならばあらゆる補助金を無くして、税金を下げたほうが国民1人当たりの生活は良くなるでしょう。

 

 恐らくはこのインボイス制度でもって更に所得の再分配の機能は損なわれるでしょうね。



質問者:

 実際に始まってみて悪いことが解るタイプの制度なんですね……。



筆者:

 一般消費者の方も無関係なことではありません。

 1000万円以下の売り上げの業者による消費税分の商品への値上げが起きることがまず想定されます。

 

 FLASHという週刊誌の23年9月21日の記事では厚生労働省の賃金統計を掛け合わせて人件費を算出したところ、全国で毎月約3400億円、年間4兆円分のコストが増える可能性があるという試算もあります。

 


質問者:

 無駄に残業ばかりが増えて生産性も下がりそうですよね……。



筆者:

 生産性を上げていけ! と言いながらこんなにも無駄な仕事が増えるのですから失笑するしかありません。

 高額な会計ソフトですと、領収書をスキャンした際に書いてある適格請求登録番号からちゃんと本人かどうか確認するシステムも搭載しているようですが、中小零細にはそんなソフトも買えません。


 本来ならばこのようなことをマスコミがしっかりと追及していかなくてはいけないのですが、一部の週刊誌以外では政府のオウム返しのように「益税解消する素晴らしい制度だ!」とでも言わんかのような論調で呆れ果てるばかりです。


 マスコミが適切な理解をして報道していないことが国民の適切な消費税の理解が広がっていない最大の要因だと思います。


 特に「益税」でないことは過去に1990年東京地裁判決や、23年2月10日 衆議院内閣委員会での金子財務大臣政務官回答でも明らかになっていることは伝えなくてはいけないことです。


 草の根で僕たちのような無名の人たちが頑張らなくてはいけないのです。



質問者:

 本当にマスコミの方々は困ったものですね……。



筆者:

 更に、適格請求書発行事業者として登録されることの“リスク”も存在します。

 国税庁のインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトに登録番号と公表情報が公開されます。本名を隠して活動している漫画家や声優、VTuberなどのクリエイターも、このインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトに個人情報が公開され、ストーカーや脅迫にさらされる可能性もあるのです。


 こうしたリスクもあるので廃業して他の職業に転職せざるを得ない状況に追い込まれてしまうのです。



質問者:

 本当に何のメリットも国民に無いんですね……。

 


筆者:

 ただ、これは「消費税を更に上げるための布石」という見方もあると思うんですよ。

 「煩雑な手間を無くすためにインボイスを廃止します。その代わりに一律税率15%にしまぁす」

 「15%だと計算が面倒だと思うので、20%にしまぁす」

 などと言って上げていくのです。


 このインボイス制度に賛成している方々は、「益税の是正」という美辞麗句に踊らされているだけか、「格差が更に広がる」「手間が増える」ということと無関係な上級国民のどちらかだと思います。



質問者:

 消費税が他の国より低いと言われていますけどそれについてはどうお考えですか?



筆者:

 「消費税だけ」を見れば確かにそうでしょうね。

 ただ、国債を含めた国民負担率だと「6公4民」でかなりの上位です。

(そもそも日銀が負担している国債は全く返済が不要ですが、なぜか返済する気満々です)


 日本より国民負担率が高い国々は全て高福祉国家で高齢者の方々は安心して暮らしています。

 

 しかし、日本では「老後の2000万円問題」という言葉があるように年金のみでは暮らしていけません。

 つまり、未来の希望が無いままに税金を納めている「中福祉高負担」という感じでしょうかね?


 29日、首相官邸で消費税のインボイス(適格請求書)制度に関する初の関係閣僚会議では「事業者の悩みを的確に把握してきめ細かく取り組み、一つ一つの課題に対応していく」

 とかしょうもないことを言っていますが、詭弁は良いからインボイスの停止、そもそもの消費税を廃止ししたほうがよっぽど国のためになります。



質問者:

 徴収してばら撒くのが“彼ら”のやり方と過去のエッセイでも何度も紹介されてますよね……。


 しかし、インボイス署名が一時受け取り拒否(29日にようやく受領)されたことで「納税拒否」というトレンドまで入ってきていますが、私たちはどうすればいいのでしょうか?

 「納税拒否」は抵抗になるのでしょうか?



筆者:

 滅茶苦茶に悔しいですし、その気持ちもよく分かりますが、とりあえずは法令遵守するしかないですね。

 日本は法治国家なので納税額を言われたら、計算方法が間違っていない限りそのまま納めるしかないと思います。

 納税をすることができない合法的な理由が無ければ追徴課税などでさらに納めなくてはいけません。


 日本で生活をする限りは資産差し押さえなどをしてでも納税を強制してくるので、そういう抵抗は無駄だと思います。

 公的書類の中に“納税証明書”というものを提出しなくてはいけないことがあるので、そういった際に公的機関から書類をとることができなくなることがあります。


 その前提の上で、インボイス制度の問題点、マスコミの問題点、緊縮財政の問題点、消費税の問題点を気づいた人から訴えていって国の政策を少しでも動かせていけるように努力していくしかないと思いますね。


 諦めてもダメですが違法行為をすることも国の思う壺なんで合法の範囲内で抵抗していくのがベストだと思っています。



質問者:

 確かに国の政策が悪いからと言ってこっちが違法行為をしていたら本末転倒ですものね……。

 例えば暴力革命などではなくちゃんと投票でなくてはいけませんからね。



筆者:

 そうなんですよ。ちゃんと生活をして法令遵守をしている人がようやく国に対して主張をする権利が得られるのです。


 僕も本当は払いたくないのは山々ですし、インボイスも相変わらず即時廃止派ではありますが、“違法状態”というのは避ける必要があると思っています。



質問者:

 合法かどうかが大事になるということはインボイス制度はいつの請求書から適用になるのでしょうか?


 また、会計処理側として対免税業者に対してはどうすればいいのでしょうか?



筆者:

 ここからは現実を直視して、インボイスの具体的な会計処理についてみていきます。


 具体的にはいつ仕事をしたか? が重要になります。

 例えば9月30日に仕事が完了すれば請求日や入金日が来年以降になっても適用されます。

 逆に10月1日に仕事が終わったのであればその日のうちに入金があってもインボイス適用となるのです。


 10月1日以降はこれまでは10か8%かの区分記載請求のみだったものが(これからは免税業者のみが使える)、

 今日からは消費税額、税率、登録番号の3つが記載されているものも出回ります(適格請求書登録者はこちらを使う)。


 会計処理する側の対応としては対インボイス登録業者は変わりありません。

変わるのは、消費税課税業者と免税業者の取引です。

具体的に仕訳で見てみましょう。


 例えば対免税業者で1100円のランチを食べた場合についてここから示していこうと思います。

 これまでは


会議費    1000円 / 現金1100円

仮払消費税等  100円


 こんな仕訳でした。(会計ソフトの表示上、会議費1100円の場合もありますが、消費税の計算上はこうなります)しかし本日からの取引ですと、


会議費    1020円 / 現金1100円

仮払消費税等   80円


となります。


 ※免税業者同士ですと消費税をそもそも支払う必要が無いのでこれまで通り額面価格同士になります。



質問者:

 あのぅ……どうして仮払消費税は中途半端な金額なんですか?


 というか、そもそも仮払消費税って何ですか?



筆者:

 仮払消費税とは、消費税申告の際に税務署から戻ってくる金額のことを示します。

 もっとも今回は分かりやすく1仕訳しかしていませんが、実際は仮払消費税の合計と売上げの際に発生する仮受消費税の合計と相殺して申告することになります。


 金額が中途半端なのは、経過措置が80%控除が令和8年9月まであり税務署への納税は20円で済むからですね。

 令和8年9月から令和11年9月までは50%になり、戻ってくるお金が50円になるというわけです。


 取引相手との関係上、経過措置があるにもかかわらず消費税分の100円下げるのは独占禁止法の優越的地位に該当し、違反するかもしれないと公正取引委員会から通達があります。しかし、2%分の20円下げることについては合法の範囲内とされています。


 こういったことも非常に厄介と言えます。

 経過措置の分は値段を徐々に下げても良いということが認められているということになりますからね。



質問者:

 なるほど、徐々に“実質増税”なら問題ないだろうというわけですか……。



筆者:

 まぁ、実態としては今日から直ちに10%分免税業者が苦しめられるわけではなく、真綿で首を締めるような感じですね。


 ですが、1円でも多く払いたくないのが人情というもので課税業者が非課税業者に対して「課税業者になって下さい」と言ったり「2%下げさせてもらうね」というのはそこまで不自然なことではありません。

 取引会社が悪いのではなく、どう見ても制度そのものが狂っていると言えます。


 ただ、会計事務は「インボイス登録業者かどうか?」「本当に登録しているかどうか番号を確かめる」「非課税業者はこれまでとは仕訳が違う」などと手間や負担が増え、その上で所得が低い方たちの徐々に負担が増えていき、国民が苦しんでいくきっかけになるのは間違いないです。


 このように合法な会計処理や納税をしつつも、

消費税やガソリン税を廃止し国民の生活を守っていくように主張していく必要があると思います。


 ということで今回はご覧いただきありがとうございました。今後も日本や世界の問題点について独自の視点で解説していこうと思います。

 どうぞよろしくお願いします。

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