表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

【異世界恋愛】〜ごはんさん編〜

【短編】悪役令嬢に送りつけるヤンデレの取り扱いに対しての嘆願書〜マジで頼みますよルービンスタイン公爵令嬢〜





 

 ルービンスタイン公爵令嬢様 へ



  お願いです。以下の事をお守りください。



 ひとつ

  僕の名は呼ばないでください。


 ふたつ

  殿下の側近達に差し入れはご遠慮願います。


 みっつ

  不用意に他の人に近づかないでください。


 よっつ

  不用意に他の方を褒めないでください。


 いつつ

  必要以上に殿下を刺激しないでください。


 むっつ

  僕に贈り物を贈らないでください。


 ななつ

  悩み事は聞きますが「お前の側は居心地がいいわ」と言わないでください。殿下に殺されたくない!



            ジョン・ブラウン より





 私は震えた字で『嘆願書』と書かれたその可愛らしい手紙を読んでから、何度か読み直した後に手紙の内容を了承した事と「食事でもどうかしら?」と、返事をしたためて侍女に手渡した。



 答えは遠回しに「ゴ遠慮(エンリョ)(イタ)シマス」だったけれど、次の日王妃様の茶会で壁際に(たたず)んでいたジョンを見つけたので手を振って、たまにアイコンタクトを送りながら一緒に楽しいひと時を過ごした。

 張り付けた笑顔からは物凄く絶望的な様子が見え隠れしていたけれど、本人が滅多に食べられないと言っていた甘い餌付け用だった菓子は「普段から頑張っている方々にも」と、お声がけして王妃様が代わりに差し入れしてくださったので問題はないでしょう。



 嘆願書の内容に触れないように気をつけて過ごした数ヶ月後、更に追加の手紙がジョンから届いた。


 家名で呼ぶのをやめるようにこちらから言った覚えはないけれど、少し嬉しくなりながらも続きを読み進めて行く。





 

 ブリュンヒルデ へ



  以下の事を守ってね。



 ひとつ

  名前で呼べと何度言ったらわかるの。


 ふたつ

  茶会や夜会で他の男に愛想をふりまくのはやめてね。


 みっつ

  何かと理由をつけて王宮の執務室に来るのは今後禁止するから。


 よっつ

  他の奴を無言で見つめて微笑んだり、手を振るのもなし。


 いつつ

  何で月1回の2人の茶会に来なくなったの?


 むっつ

  自分じゃなくて、親経由で他の奴に贈り物を贈るのもやめて。


 ななつ

  今更逃げられると思わないでね。


              君のハロルド より

 





「ふふふっ。『今更にげられると思わないでね。』ですって? やっっっっっっと本性見せたわねこのエセ天使王子!?」



 最初は癒し系担当である攻略対象者だが、(だま)されてはいけない。

 計算高い裏の顔を持つ周りに愛想振りまくあざといキャラだが、ヒロインひと筋になったら溺愛通り越して最終的にトゥルーエンドでは闇堕ちしてヤンデレになる癖のある第二王子である。



 婚約者となった私にも最初は建前でしか接する事はなく、定期的な2人の交流を深める茶会に無難な贈り物。

 それで私に愛想を振りまいているおつもりかしら? 生温(なまぬる)いですわ。


 その後の私の態度に文句を言うのは普段だと周りに人が多くて自身の威厳(いげん)に関わるのか、プライドが許さなかったのかはわからないけれど、側近であるジョンに手紙を書かせたのはきっとハロルド殿下でしょう。『嘆願書』なんて回りくどい事して直接言わないところがホント頭に来たのよね。


 嫌われてはいないようだったけれど、中途半端に接するハロルド殿下に仕返しして差し上げたの。

 淡白な付き合いしか望まないならコチラにも考えがあると、貴方の日頃の行いをブーメランで対応。


 さて、次はどうして差し上げようかしら?



 私は嘆願書の内容の了承の返事の代わりに可愛い封筒に書類を入れて「ハロルド様へ♡」と宛名を書いてから王宮宛に送りつけた。勿論(もちろん)、焦らしに焦らして1ヶ月後に。


 今更逃げられるなんて、貴方も思わないことね。こちとら前世から貴方の(とりこ)なのよ。


 私が足を運ぶ事はないけれど、それならハロルド様が私に会いに来るように仕向ければいいのよ。ヤンデレの思考回路なんて手にとるように分かるわ。






 書類を送った数時間後、政務もお休みの日だったので案の定ハロルド様は私に会いに来た。私が送った『婚約解消』の書類を(たず)えていつもは見せない怒りをあらわにしながら。




 あぁ、私は天使じゃなくてその感情()き出しのお顔が見たかったの。私に執着するかは正直()けでしたが……やっと同じトコロまで()ちて来た。


 作り物の笑顔を私に向けられるたびに、作り物とは言え他者に笑顔を向けるたびにどれほど私のはらわたが煮え繰り返っていたか、理解出来たかしら?



 ハロルドとブリュンヒルデ。

 攻防と言う名のヤンデレVSヤンデレのガチな痴話喧嘩は、その後ニ人が結婚するまで続いた。




オマケ


ヤンデレA

「君がやっと名前呼びの、しかもハートマークがついた封筒を受け取って喜んだのも束の間。中身開けたら婚約を解消したい(むね)の書類だと? 冗談も大概(たいがい)にしろ」



ヤンデレB

「『君』なんて呼ぶならこちらもただの『殿下(キレ気味)』と呼ばせていただきますわね。折角名前で呼んでくださると思って楽しみにしておりましたのに、見損ないましたわ。元々言えば殿下が──」



ヤンデレA

「殿下じゃない『ハロルド』と呼べ。君のお気に入りのジョンを今すぐ殺したくなる」


ヤンデレB

「私だって四六時中職場で貴方と一緒にいるジョンを(ひね)(つぶ)して差し上げたいですわ」


ヤンデレA

「奴の名前を呼ぶな!」




 お読みいただき誠にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ジョン君「俺の名前を呼ぶな!そばに近寄るなァーッ!!」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ