第05話 意思疎通と格納空間
光が収まるとちょうど自分の下駄箱の前だった。
向こうに召喚される前と変わらない。
召喚される直前にも周囲に人はいたはずだが、突然消えてまた現れた僕に対して騒いでもいない。
どうやら僕が消えたのはほんの一瞬か、そこらのようだ。
向こうとは時間の進み方が違うのかもしれないがそこは要確認か。
それよりもっと、さっそく自分のステータスを見ようとするが待っても表示されない。
不思議に思っていると自動設定していた鑑定が発動し表示される。
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【恩田 拓斗】
種族:人間 性別:男 年齢:15歳 職業:高校生
所属1:恩田家
所属2:私立宇月高校1年A組
Lv:1/---
HP:10/---
MP:10/---
状態:リラックス 所持金:¥3,550
魔法:《鑑定》 Lv:6/--- (293/320) 《意思疎通》 Lv:1/--- (1/10) 《格納空間》 Lv:1/--- (0/10)
罪歴:なし
備考:異世界転移経験あり(2回)
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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うん、やはり意思疎通と格納空間が生えてる。
目にするか自分で受けるかすると身につくようだ。
どれも生活魔法だが、攻撃魔法とかは自分で受けるわけにもいかないからちょっと難しいかもな。
さっき<意思疎通>を一回使ってるからもう一度使ってみてMPの消費を確認しよう。
そう思って横にいた隣のクラスの女子に<意思疎通>を使ってみる。
『魔法 ”意思疎通” の発動に失敗しました。』
おう、なんてことだ・・・ 僕はこの子と意思疎通できないのか・・・
とがっかりしている僕をしり目にその子は僕の横を通り過ぎて行った。
発動条件があるみたいだな。ここは要検証っと。
じゃあ、<格納空間>使ってみるか。
『魔法 ”格納空間” を発動しました。何を格納しますか?』
と脳内アナウンスが告げる。
ちょうど下駄箱にしまおうと手にしていた靴を指定すると、下駄箱の中に入れていた靴が消える。
視界の片隅に1つ”□”が表示され、その中に今消えた靴が見える。
出したいときはどうするんだ? そう思ったらその”□”が点滅した。
その点滅を目にした瞬間、下駄箱に入れたままだった右手の先に靴が現れる。
パラメータを確認すると
MP 1↓
格納経験値 1↑
となっており、どうやら鑑定と同じ条件のようだ。
だが、毎回入れて出すのを指定するのは面倒だな・・・
そう思った時に
『魔法 ”格納空間” に対して自動実施を設定しますか。<YES/NO>』
そう脳内アナウンスが告げる。迷わずYESを選択すると
『設定:自動実行1 ▼
対象:鑑定魔法 ▼
実施間隔:60sec ▼
停止条件:停止宣言▼
設定:自動実行2 ▼
対象:格納空間魔法 ▼
格納対象:右手が触れているもの
搬出対象:格納時間が一番長いもの
実施間隔:60sec ▼
停止条件:停止宣言▼
実行しますか。<YES/NO>』
と出てくる。
教室に着くまで歩きながら少し考え、次のように変更した。
実施間隔:60sec → 120sec (2つとも)
右手に持つのは消しゴムとシャーペンの芯ケース。
これなら交互に右手の中で入れ替えるだけなので問題ないだろう。
そう設定して、授業を待つ。
仲の良いクラスメートに話しかけられGW中のできごとを聞かれたが、
僕はずっと家でラノベを読んでいたという面白くないエピソードを語るのみで、
心ここにあらずの状態で、充実していたと語る友達の話を聞き流すだけだった。
異世界転移とか話そうとすれば話せるけどさすがにこんなこと簡単にはしゃべれない。
話して何かのフラグを立てたいわけではないのだ。
友人やクラスメートの鑑定もごくごく普通で、宇宙人とか殺人鬼とかそんな肩書のやつはいなかった。
すぐに授業が始まり、1時間目の授業の真ん中で脳内アナウンスが告げる。
『”格納空間”の実行回数がレベルアップの規定回数を満たしました。』
と同時にその時右手にあった消しゴムが消え、手が空になる。
あれ?芯ケースは?そう思うと視界の右隅にあった”□”が1つから4つに増えていた。
上段に消しゴムと芯ケースが収まっている。
『”格納空間”の実行に失敗しました。』
と告げられる。そりゃ右手が空ならね。そう思いペンケースからシャーペンを数本出す。
自動実行の設定も変えよう。
搬出対象:格納時間が一番長いもの → 格納時間が一番短いもの
これでシャーペンを入れ替える格好で済むはずだ。
そして午前中はその設定のまま鑑定と格納を繰り返した。
2時間目に鑑定と格納が、4時間目に格納がレベルアップを告げる。
検証はお昼休みにしよう。
あ、意思疎通は3限英語のミーシャ先生に使ってみたら。使えた。
対象の母国語が何かに寄るのかも。
これは引き続き検証だな。