第04話 召喚(2回目)
周辺の光が消えると、そこは見覚えのある大きな部屋だった。
回りを見ると前回同様、僕に比較的近いところに、胸部装甲の分厚い金髪碧眼美少女が立っていた。
僕の姿を見て、少し怒っているようだ。
こめかみがピクピクして、口の端がワナワナしている。
何故だろうと思っていると、自動設定していた鑑定が実行され、目の前の女性のステータスが現れた。
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【ベアトリクス・サレス】
種族:人間 性別:女 年齢:16歳 職業:学生
所属1:サーバレスト王国サレス侯爵家
所属2:サーバレスト王国立学校Sクラス
Lv:24/100
HP:280/280
MP:70/470
状態:緊張 所持金:800、000,000ゼル
魔法:《召喚》Lv:2/10 (0/200)、《鑑定》Lv:3/10 (20/300)
罪歴:なし
備考:王国第一王子正妃候補
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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情報量が増えたせいか、突っ込みどころが多い。
侯爵家ご令嬢とか、所持金とか、備考欄の正妃候補とか・・・
突っ込んだところで、会話が通じないしな・・・
そういえば再実行するまでベアトリクスさんの鑑定が消えてた。半日ぐらい立つと解除されるのか?
そう思っていると、
「_Q1B!4\A;noD)2o」
『あなたに対して”意思疎通”が使用されました。許可しますか?<YES/NO>』
おお、渡りに船とはこういうことだな。YESっと。
『”意思疎通”を習得しました。』
というメッセージが表示される。またなんか増えたな。
こちらが了解したことがわかったのか、ベアトリクスさんがこちらに数歩近づいてくる。
「召喚ニ応ジテ下サッテアリガトウゴザイマス。」
片言の日本語が聞こえてくる。
違和感があるのは聞こえてくる声と彼女の口の動きが全くあってないことだろうか。
映画の日本語吹き替え版を見ている感じだ。
そんなことを考えていたら、目の前の女性が話しかけてきた。
「ワタシハ"ベアトリクス・サリス"ト申シマス。アナタノオ名前ヲ教エテイタダケマスカ?」
「これは失礼しました。私、恩田拓斗と言います。恩田がファミリーネームです。」
お互い鑑定で知っているはずだが、それは言わぬが華なのだろう。
「今回ノ私ノ召喚ニ正装デ答エテクダサッタコト、ウレシク思イマス。」
正装? あー昨日はベッドの上だったからラフな格好だったけど、今日は学生服だからな。
ちゃんと仕立てられたものを着ているように見えたのだろう。
「デスガ、私ハ戦闘ニ適シタ神獣ヲ呼ビ出シタク思ッテオリマシテ。デキレバ次回ノ召喚ニハ応ジナイデイタダケマスカ。」
ふむふむ、強いやつを呼んでるんだから、お前は出てくるなと・・・。でもね。
「申し訳ないが、私は呼びかけに応えて現れたわけではありません。気が付いたらここにいたのです。」
と正直に答えるとベアトリクスさんはがっかりとした表情をして言葉を失っていた。
そこへ、
「:<KUWxUuuv(wdy=?}xWvj"N=4{5p(|?IjsL=5yE%]RAc^BF2Oi(r#(%O>V7y^Ca]UJ1ot?&CBMdf-Rd)」
とベアトリクスさんの後ろの集団から1人の女性が大声をあげながら近づいてくる。
肩のところできれいに切りそろえられた銀髪のこちらも美人さんだ。
制服から出た手足に筋肉が程よくつき、猫を思わせるベアトリクスさんとは違うタイプだ。
何を言っているかわからん。”言語理解”はベアトリクスさんとしか通じてないのか?
『人型生物Aに対して”言語理解”を使用しますか?<YES/NO>』
と都合よく脳内に声がひびく。人型生物って・・・っと突っ込みを入れたくなるが、まずはYESっと。
「呼ンデモ勝手二来テシマウノデアレバ、来レナクスレバヨイノデス。」
「ダカラト言ッテ殺スノハヤリスギデス!」
「トハイエ、レベル1デハ使イ物ニナリマセン。対抗戦デ不利ニナルノハオ嬢様デスヨ!」
とこちらに近寄ってきた女性とベアトリクスさんが言い争いをしている。
美人2人が向き合っての会話は絵になるが、そんなのんきなことを言ってられないような物騒な話の内容だ。
殺されたくはないので、”他にも方法はあるはずですよ。”と言おうとした時に自動鑑定が発動し、後から現れた女性のステータスが表示される。
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【ネフィス・ラーン】
種族:人間 性別:女 年齢:16歳 職業:学生
所属1:サーバレスト王国ラーン子爵家
所属2:サーバレスト王国立学校Sクラス
Lv:20/90
HP:361/361
MP:100/100
状態:緊張 所持金:15,000ゼル
魔法:---
罪歴:なし
備考:友人 兼 護衛
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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同級生という面も持ちつつ、上位貴族の露払いも兼ねてるってことかな・・・
2人の言ってる”対抗戦”とやらも気になるが、まずは自身の安全の確保だ。だが、
「申シ訳アリマセン。オ嬢様。オ叱リハ後デ。」
とベアトリクスさんの横をすりぬけたネフィスさんが何事か小さくつぶやくと手元に刀が出てきた。
長さ1メートルほどの直刀だ。重さはありそうだが、それを苦にした様子もなく近づいてくる。
ベアトリクスさんよりHP高め、MP低めで備考に”護衛”と表示されてたとおりネフィスさんは前衛っぽい役割のようだ。
とはいえ分析ばかりしている場合ではない。
『”空間格納”を習得しました。』
という雑音も聞こえた気もするが危険回避のために動かねば。
まずは距離を取るところからかな。と考えた時に足元が光り始めた。
「オ詫ビハマタ今度。」
と先ほどネフィスさんに抜かれたところから動くこともなく、こちらを見ながらベアトリクスさんが言っているのを耳にしつつ、僕は光に包まれた。