第03話 自動実行
『魔法 ”鑑定” に対して自動実施を設定しますか。<YES/NO>』
そう脳内で響いた問いかけに少し迷った後YESと脳内で答えた。
すると鑑定結果と同じく画面のようなものが目の前に現れる。
『設定:自動実行 ▼
対象:鑑定魔法 ▼
実施間隔:60sec ▼
停止条件:停止宣言▼
実行しますか。<YES/NO>』
”▼”印は選べるようだ。
とはいえ、上の二つは押しても他の選択肢は出てこなかった。今は表示されてる1つしかないということだろう。
色々試した結果、鑑定1回につき、MPを1消費は変わらない。そしてMPは1分間に1回復する。
この条件であればMPが枯渇することもなさそうだ。
僕は”YES”を選択し、駅に出入りする人たちに向けて鑑定魔法をかけ続けた。
◆◆◆◆◆
『”鑑定”の実行回数がレベルアップの規定回数を満たしました。』
と自動実行してから2度目のレベルアップ通知が脳内に届く。
読んでいたタブレットを一旦手元に置き、 僕のステータス画面を見ると・・・
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【恩田 拓斗】
種族:人間 性別:男 年齢:15歳 職業:高校生
所属1:恩田家
所属2:私立宇月高校1年A組
Lv:1/---
HP:10/---
MP:4/---
状態:リラックス 所持金:¥3,850
魔法:《鑑定》 Lv:6/--- (0/320)
罪歴:なし
備考:異世界転移経験あり
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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”状態”、”所持金”、”罪歴”のパラメータが増えている。
「犯罪歴なんて、そんなにないだろ。」そう思って駅の方を見ると交通違反が表示されている人が数名いた。
「速度超過は罪歴になるんだっけ。」と父親が”危うくなりかけた”と笑いながら話していたことを思い出す。
罪歴はなくとも罰金はあるので決して笑い話ではないはずだが、あまりこたえた様子ではなかった。
さすがに夕方になったので、今日はこれぐらいでやめておこう。
暗くなってきた。そう思いながら上空に見え始めた星を見上げる。
ちょうど鑑定のタイミングだったのか、星の名前が表示される。
距離関係ないんだ。であればまだ鑑定のレベル上げはできるかな。
そう思いながら、帰り道を周りの迷惑にならないように時々上を見上げながら帰宅することにした。
家に帰ると最初に家の物にかけた鑑定は消えてなかった。まあ持って行ったタブレットが表示され続けただけなのでそれはわかってたけど。バッテリの劣化状況まで表示されるようになったので、知りたくない情報を無理やり教えられたような気分である。
家に帰ると父母と姉が帰ってきていた。ほとんど同じタイミングで帰っていた姉と玄関で鉢合わせる。
ブーツを脱ぐのに時間がかかっているようだ。
「ただいま、姉さん。」そう声をかけた時に姉さんの頭上に
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【恩田 伊緒】
種族:人間 性別:女 年齢:17歳 職業:高校生
所属1:恩田家
所属2:私立宇月高校3年D組
Lv:1/---
HP:10/---
MP:0/---
状態:リラックス 所持金:¥15,850
魔法:なし
罪歴:なし
備考:誘拐経験あり
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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という鑑定結果が表示された。しまった鑑定魔法を切るのを忘れていたな。
家族の情報を勝手に見るのは違う気がする・・・ ”誘拐経験あり!?”と驚きつつ、慌てて鑑定魔法の発動を止める。
幸い、姉には怪しまれてないようだ。
姉が誘拐されたことがあると聞いたことはない。
姉はその美貌と性格の良さから男女問わず人気があり、常に周りに人がいるような人だ。
でもそのせいでトラブルに巻き込まれやすいらしい。
しかし姉本人は自分がモテる自覚はなく、いつも首を傾げている。
ちなみに僕の顔については平凡だと思う。クラスでは目立たない方だし、運動神経も良くも悪くもない。勉強だって中程度だ。
「おかえり、拓斗。お姉ちゃんもう少しブーツと格闘するから先にあがっていいわよ。」
どうもブーツのチャックがうまくはずれなく脱げないらしい。
手伝おうかと思ったがスカートだったのでやめた。姉さんも手伝ってほしいほど困ってはなさそうだ。
父母にも帰宅を告げ、部屋に戻る。しばらくすると姉さんの部屋のドアが開閉する音が聞こえたので無事脱げたようだ。
そのあと家族4人で晩御飯を食べる。姉が一人でぺちゃくちゃと今日のできごとを話していた。
夜カーテンを開け、窓から星空が見える状態で、鑑定魔法を再び自動実行し就寝する。
寝がえりは打って不発になることもあるだろうけどまたレベルがあがってるといいな。
そう思いながら眠りについた。
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”頭部用寝具 イマホロ社製 経過年数:3年”
目が覚めると目の前の枕にそんなステータスが表示される。
うつぶせのまま寝付いてしまったらしく、朝になってもレベルはあがっていなかった。
そううまくはいかないらしい。
引き続き鑑定は育てたいが、学校がある。
登下校の最中や、休み時間に会う人に全員に鑑定をかければまたレベルもあがるだろう。
そんなことを考えながら登校し、順調に鑑定の経験値をあげる。
あとは1時間目の授業中にクラスメイトに鑑定かければ次のレベルアップが着そうだな。
と思った時にそれは起こった。
僕の足元に光が浮かび上がり、僕はその見覚えのあるまばゆい光に再び包まれた。