第02話 鑑定を育ててみる
癪には触るが・・・ と宙に浮かんだ僕のパラメータらしきものをもう一度見てみる。
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【恩田 拓斗】
Lv:1/---
HP:10/---
MP:9/---
魔法:鑑定 Lv:1/--- (2/10)
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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さっき見たベアトリクスさんのパラメータと比較すると、現在値と思われている右側、最大値と思われている数値が"---"となっている。
これが限界がないってことなら喜ばしい。とはいえ、HP、MPは先ほどのベアトリクスさんの数値とは雲泥の差だ。
さらにはレベルがあがる条件がさっぱりわからない。
日常生活送っていただけというのものあるだろうが、レベル上げに必要なイベントをこなしていないからレベル1なのだ。
だが・・・僕は一番最後の鑑定に希望を見出していた。特に最後の"2/10"の表現に。
僕はベアトリクスさんと自分自身に2回鑑定を行っている。
その結果がこの表現だ。
ということは、鑑定を行えば行うだけこの数字が増えていき、右の10の数字を超えた時に何か起こるのではないか。
僕はそう推測し、手元のタブレットやコップ、お菓子など片っ端から鑑定を行い、規定回数をこなしてみた。
”情報端末”、”食器”、”食料品”などと見ればわかる情報が表示されるが、気にせず次々と鑑定する。
『”鑑定”の実行回数がレベルアップの規定回数を満たしました。』
よしっ!
僕は再度自分自身に鑑定をかけてみる。
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【恩田 拓斗】
種族:人間 性別:男
Lv:1/---
HP:10/---
MP:6/---
魔法:鑑定 Lv:2/--- (0/20)
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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「種族と性別かい!」
思わず落胆の声をあげてしまうが、まだ鑑定レベルの限界には達していないようだ。
それに次のレベルまで20回鑑定をすればよいようだ。
あと回数からすると僕のMPはちょうど0になるはずだが、6になっている。
なぜか不思議に思っているとMPの数字が滲み6から7に変化した。
どうやら自動回復しているようだ。
MPが具体的にどんなものかはわからないが、回復までのスパンが短いのはありがたい。
早速僕は鑑定のレベルを上げるため色々なものに鑑定をかけようかと思ったのだが・・・
すでに一度鑑定をかけたものには再び鑑定をかけることができないようなのだ。
MPが消費されずにパラメータがポップアップされるだけ。
時間がたつと消えるのかもしれないが、それを待ってはいられない。
僕は家の外に出て、鑑定対象を探すことにした。
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「ここで良いかな。」
最寄り駅前の喫茶店の外のテラスに来た。
ここなら駅を利用する人たちが行き来するので、鑑定表示が消えるのを待つこともない。
(消えるかどうかもわからないけど。)
さっそく近くを横切った若い男性に鑑定をかけてみる。
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【佐村 猛】
種族:人間 性別:男 年齢:21歳 職業:大学生
Lv:1/---
HP:10/---
MP:0/---
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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移動中もいろいろ鑑定してレベルは3になっていてまた情報が増えている。
現世で自分以外の人にしてみたのは初めてだ。
人とすれ違わなかったわけではないが、ちょうどMPが0の時だったり鑑定しようとした時に目があってしまったりとタイミングがなかなかつかなかったのだ。
MPが0だが、もともと0なのか、それとも使い切っているのか不明。
僕と違って使用できる魔法が表示されなかったので最初から0なのだろう。
まあ、そこの検証は数をこなせばわかるはず。とMPが復活するたびに通り過ぎる人に鑑定をかけていくと・・・
『”鑑定”の実行回数がレベルアップの規定回数を満たしました。』
と何度目かの脳内アナウンスがレベルアップを告げた。
僕のステータス画面を見ると・・・
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【恩田 拓斗】
種族:人間 性別:男 年齢:15歳 職業:高校生
所属1:恩田家
所属2:私立宇月高校1年A組
Lv:1/---
HP:10/---
MP:2/---
魔法:《鑑定》 Lv:4/--- (0/80)
備考:異世界転移経験あり
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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少しほっとした。
このまま履歴書の内容が表示され続けてカンストしてしまったらどうしようかと思ったけど・・・
備考欄を見る限り、それ以外の情報も表示されていくみたいだ。
とはいえ、逆に問題も出てきた。
レベルアップの規定回数とやらが前回、前々回の倍なのだ。次のレベルまでには80回必要だ。
鑑定を1回使うたびにMPは1消費される。これは鑑定レベルが上がっても変わらない。
そしてMPは1分間に1回復する。単純計算で1時間20分。
さすがに飽きてきたな。自動で鑑定してくれないものか。そう思った時だ。
『魔法 ”鑑定” に対して自動実施を設定しますか。<YES/NO>』
そんなメッセージが現れた。