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第11話 除霊

 先輩のパラメータを見て固まっていると、自動設定していた鑑定が働き、先輩の頭上の何もないところに別のステータスが見えた。


 ---------

【怨霊1(名無し)】

 種族:怨霊 性別:女(元) 経過年数:18年

 状態:憑依

 備考:粟崎 忍に憑依中

 ***他の情報はレベル不足のため表示されません。***

 ---------


 何もないところにステータスだけ表示されている。

 何もないというより()()()()()()()()()()()ということかな。

 僕に霊感的なものはないってことなんだろうな。


 「どうしたの?何かあるの?」

 視線に気づいたらしい粟崎(あわさき)先輩が僕の視線をたどって、自身の真後の屋根あたりを見る。

 「何もないじゃない。」

 僕を振り返って笑いながら、宿題に戻る。だが、すぐにはっとなって自身の頭に手をやりながら、

 「ひょっとして私の髪の毛はねてる?!」

 と慌てて鏡を取り出して確認し始めるので、

 「ごめんなさい。何もないです。」

 と慌てて否定した。鏡で自分の髪の毛をいじっているがちょうどステータスが映っているあたりを見ても何も言わずに髪を確認しているので先輩も何も見えてないんだろう。

 存在を証明できないのに口にして怖がらせてもしょうがない。


 「それよりも先輩疲れてません?」

 「急に話を変えるのね。・・・別に疲れてないわよ。」


 間はあったものの、先輩は否定する。

 とはいえ、ステータスに疲労と表示されてるし、憑りつかれてるのも間違いない。

 いまさら鑑定結果を疑う要素もない。


 疲労であることを僕に伝えない理由として考えられるのは以下の2つ

 1.本人に疲れているという自覚がない。

 2.言ったところで僕にどうしようもないと思ってる。


 まあ、どっちだったところでこないだまでの僕だったら何もしてあげられないのだけど。

 だが、今の僕にはこれがある。

 そう思いながら格納空間の中の一つに着目する。


 ”ショートソード(聖) 刀匠エカテリーナ作 経過年数:15年”


 そう、ネフィスさんが僕のベッドに食い込ませた奴だ。

 (聖)とついてるぐらいだから、何かしら権能があるのだろう。

 とはいえ、名前だけで判断するのは危険だし、ここでいきなり短剣を取り出すわけにもいくまい。

 先輩の様子を見るに一分一秒を争う状況でもなさそうなので、まずはこの剣のステータスを確認することにする。


 「先輩、僕ちょっとトイレ行ってきます。」

 「何よもう、せわしないわね。」


 先輩は文句は言う物の、僕を止めたりはしないようだ。

 あきれたように僕を見送ると、机に向きなおすのが扉を閉めるときに見えた。


 トイレにこもり、さっそく格納空間から短剣を取り出す。


 ”ショートソード(聖) 刀匠エカテリーナ作 経過年数:15年”


 鑑定をかけてもこれ以上の情報は出てこない。

 しょうがないな。ダメもとでやってみるか。


 図書室に戻ると先輩は僕を一瞥し、「おかえりなさい。」とだけ声をかけると再び机を向く。

 好都合とばかりに先輩の後ろを通り抜ける際に格納空間から取り出した短剣で、先輩の頭上、というかパラメータ表示画面の下のあたりを一閃する。


 何か短剣を通して感触があったわけでもない。

 何か音がしたわけでもない。


 でも目の前にあるパラメータ表示画面が歪にゆがんだかと思ったらすっと消えていったので、うまくいったのだろう。

 そう思った僕の脳内にアナウンスが響く。


『怨霊1(名無し)を除霊しました。』

(カルマ)が+1されました。』

『除霊経験を積んだことにより、霊能のカテゴリーが解放されました。』

『除霊経験を積んだことにより、《霊視》のスキルが解放されました。』


 あらぁ?

 このアナウンスはちょっと想定外なんですけど・・・ 

 霊視のスキルはいらんのよ。見たいわけじゃないんよ。

 ホラー映画好きじゃないし。ハッピーエンド派だし。


 この後の展開に鬱になっていると、ジト目で僕を振り返っている粟崎(あわさき)先輩がいた。

 「先輩、どうしたんですか。」

 「どうしたもこうしたも私の後ろにたちはだかって何するつもり?」


 ああ、言われてみれば座っている粟崎(あわさき)先輩の後ろに黙って立っている格好だ。

 不審がられてもしょうがない。


 お疲れのようなので肩でもお揉みしようかと・・・これはアウトだ。言ってはいけない。

 「いや、やっぱり髪にほこりみたいなのがが付いてたので。」

 「え?そうなの?」

 とあわてて髪に手をやる。

 「もう取りましたよ。」

 「ああ、そう。ありがとう。」


 釈然としない顔をしながら礼を言ってもらう。

 嘘はついたが、霊をはらったのだから、礼を言われても罰はあたるまい。


 ごまかせたのかどうかはわからないが、先輩はそれ以上追及しなかったので、素知らぬ顔で席に着く。

 自分のパラメータを改めて見直すと・・・


 ------


【恩田 拓斗】

 種族:人間 性別:男 年齢:15歳 職業:高校生

 状態1:平常 状態2:守備力向上効果 1%UP(残り時間53sec)

 所持金:¥8,100

 所属1:恩田家

 所属2:私立宇月高校1年A組

 Lv:7/---

 HP:640/---

 MP:472/---

 魔法:

 《鑑定》 Lv:7/--- (327/640) STAY

 《意思疎通》 Lv:3/--- (22/40) STAY

 《格納空間》 Lv:7/--- (102/640) 2UP

 《治癒》 Lv:1/--- (3/10) STAY

 《召喚》 Lv:1/--- (0/10)

 《守備力向上》 Lv:7/--- (312/640) 1UP 

 《速度向上》 Lv:7/--- (310/640) 1UP

 《筋力低下》 Lv:7/--- (310/640) STAY

 《攻撃力低下》 Lv:6/--- (170/320) 1UP

 《速度低下》 Lv:7/--- (310/640) 1UP

 霊能:

 《霊視》 Lv:1/--- (0/10)


 罪歴:なし (カルマ):0

 備考:異世界転移経験あり(3回)/ 除霊経験あり(1回)

 ***他の情報はレベル不足のため表示されません。***


 --------- 

 (カルマ)が戻ったのは良いとして、なんか変なスキル生えてしまった。

 これもどうしたらいいのかわからんな。


 いや、それよりもだ・・・

 

 ”ショートソード 刀匠エカテリーナ作 経過年数:15年”


 ”(聖)”が消えてしまってただの短剣になってるじゃない・・・

 借りてるものを勝手に使って格落ちさせたとかシャレにならん。


 と僕の命を狙った女性(ネフィスさん)にどう謝るかという謎の悩み事を考えながら残りの時間をつぶすのだった。


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