第01話 召喚されたけど、現世に返されました。
召喚したのに召喚者のMP減ってないのはおかしいので修正しました。
それは僕が高校生になってひと月ほどの5月の連休最終日のことだった。
学校の宿題も終え、自分の部屋のベッドの上でタブレットを起動する。
近くのテーブルにはナッツやチョコなどの軽いお菓子とアイスコーヒーも準備済みだ。
気になっていたラノベをダウンロードして、さあ読もうかと思った次の瞬間、僕の周辺からまばゆい光があふれだしてきた。
「えっ、えっ!」
何が起こっているのかわからず、戸惑いの声が出るばかりだった僕をあざ笑うかのように周辺の風景が切り替わった。
そこはどこか大きな建物の中だった。
一面が床張りになっており、僕がいるのはそこのほぼ真ん中のようだ。
建物の壁の近くには数十人の人間が立っている。年齢は僕と同じくらいだろうか。
とはいえ、地球上のどこかというわけではないらしい。
なぜそれがわかるかというと、顔立ちは僕と同じくらいだが、みな髪がカラフルだからだ。
赤、緑、紫、青などの染めない限りあまり見られないような色の人間がほぼ同数ぐらいいる。
男女比は半分くらい。あ、あの女の子、耳としっぽが生えてるじゃないか。
ゆっくりと立ち上がり、周りを確認する。
すると、周辺の人間より少しだけ僕よりのところに一人の女性が立っていた。
壁の近くにいる女性達に比べると背が高く、すらりとした体形だが胸部装甲はかなり厚そうだ。
腰のあたりまで伸びている金色の髪、蒼い瞳、透き通るような白い肌。
モデルと言っても通用しそうなかなりの美人だが、僕を見るその顔に表情はない。
女性は静かに口を開いた。
「#&\;,,[[],#^&[!|?}=?」
……はい?
まさかの異世界召喚にも関わらず初期セット”言語理解”がないってパターンか?
と一瞬うろたえた僕に
『あなたに対して”鑑定”が使用されました。許可しますか?』
と脳内に何かが語り掛けてきた。
なんだよそれ、と思いながらとりあえず『はい』と脳内で答えてみる。
『”鑑定”を取得しました。使用しますか?』
スキル獲得イベントにしてはあっさりすぎん? と思いながらも『はい』と答える。
人に鑑定しておいて、自分がされるのはダメということもないだろう。
すると、目の前の女性の頭の上に名前とパラメータのようなものが表示された。
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【ベアトリクス・サレス】
Lv:23/100
HP:270/270
MP:355/455
***他の情報はレジストされました。***
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ベアトリクスって言うんだ。でもレベル23って表示されてもすごいのかどうかわからん。右の100は限界値ってことだろうな。
「$%&'()=&」
「はい?」
ベアトリクスさんが再び何事かをつぶやく。
さっきは無表情だったが、今は少し落胆したような表情だった。
なんかがっかりしているようだ。僕のパラメータ見てそうなったってことだろうな。
どう見えたのかわからないが、勝手に召喚しておいてその態度はない。
「\']$).={^-}>[#'&\^[!」
壁際にいた1人の男性が、ベアトリクスさんに笑いながら声をかける。
青髪で他の男子よりも体格が一回り大きい。
インドア派の僕からしたら絶対に近距離戦闘は避ける相手だ。
でも召喚されたとしたら、特訓とかしないといけないのだろうか。
ベアトリクスさんはその男をキッと睨むと、
「*))<)&\'%#^{-;|!#,)]」
と言い返し、すぐに僕の方に向き直った。
「$"$($)=>⼎&_>#"$%'()=>+!@!<>!」
また何を言っているかさっぱりわかんないんだけど……。
すると
『召喚が解除されました。』
と再び脳内にアナウンスが届き、僕の周りに呼ばれた時と同じような光が発生する。
「帰れちゃうパターンってあるのね・・・」
部屋のベッドの上で立ったままの自分を自覚し、思わず声が出る。
まわりには誰もいない。
テーブルの上のアイスコーヒーの氷も呼ばれる前と大きさは変わっていない。
夢かとも思ったが、すぐにそれは否定された。
試しに自分の手に向けて『鑑定』と言ってみると、
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【恩田 拓斗】
Lv:1/---
HP:10/---
MP:9/---
魔法:鑑定 Lv:1/--- (2/10)
***他の情報はレベル不足のため表示されません。***
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と表示されたからだ。
「せっかく呼んだのにレベル1だとお帰りください。といわれてもしょうがないか。」
わからなくもない。わからなくもないが・・・
知らない物差しで勝手に測られて勝手に落胆されるのはなんか癪にさわるね。