ひよこにと はこべ集めた 日を思う
今日も一日中、銀行の融資相談に回ったが、何処もお金を貸して貰えなかった。最初はニコニコと、融資する様に言ってくれるが、県警に問い合わせて、懲戒と知ると、態度を一転して、追い返す。高利のサラ金くらいしか、お金を貸してくれる所はない。
家族寮なので、家賃は、かなり安いが、管理費や光熱費、食費、育児費、もろもろ、考えると、全く足りない。祐輔の出産で、貯金も底を突き、そのご貯金できるだけの給料をかせげなかったので、近い内に、一文無しだ。
国家に関わる巨悪が会ったとしても、なんでこんな目にあわされなければならない。本当に許せない。
帰宅すると、大輔が「パパ」と甘えて来た。毎日が日曜日なので、息子たちと遊べるようになったのだけが、唯一の利点だ。
「ついさっき、裕子お義母さんから、電話があったの。明日の午前中に、孫の顔を見たいからって、ここに来ると言ってるんだけど、良いわよね」
妻の夕実が、夕食の準備をしながら、そんな事を言って来た。
「まさか、懲戒になったと言ったのか?」
「御免なさい。だって、お義母さんが、私に言わそうと、必死になってたから、可愛そうで……」
「心配を掛けさせるなと言ったろう。あんな身体なんだぞ」
「それは、もうとっくに治ってると、言ったでしょう。先週から、お父さんと一緒に働いてると言ってたし……」
そう言えば、先週、すっかり元に戻って、夕実の事を心配してたと話していたのを、思い出した。一月前は、あんなだったのに、もう働いているとは驚きだ。
「それで、父の所で、アルバイトとして、一時的に働かせて貰うって、どうかしら。お店がまた忙しくなってきて、お義母さんも、働いてくれると嬉しいと言ってたから……」
「そんなみっともない事が、できるわけないだろう」
つい大声を上げてしまい。大輔が驚いて、泣き出してしまった。
俺は、一体何をしてるんだ。大事な家族に、イライラをぶつけてしまった。
「それは、後ではなそう。 大ちゃん、御免。お父さんは怒ってはいまちぇんよ」
私は、息子の機嫌を取るのに、必死になっていた。
でも、親父の頼みを途中で放り出し、正義よりも、家族を優先してしまった俺が、今更、どんな顔で、親父の世話になれるという。
中途半端しているのは、俺自身じゃないか。
自分が情けなくて、ならなかった。