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朧月 カーテン片手に 悩みけり

 私が意識を取り戻した次の日に、夕実にも当然連絡を入れた。

 そして、十日経った今日も、夕方、時間を持てあましたので、夕実に電話を掛けた。

 私は、近況報告として、便利屋昴で働きだした事を伝えた。

「おめでとうございます」

 彼女はそう挨拶してくれたけど、どうも元気がなく、様子が変。

 私は、彼女から「実は……」と打ち明けやすいように、誘導することにした。

「社長といっても、私にできる仕事は、お茶汲みとお客様の話相手ぐらいしかないの。でもね、いろんな人と話してると、何と無く分るのよ。この人、相当に悩んでるなとか……」

「お義母さん」

 さぁ、早く白状しなさい。

「…………」

「でね、相談者の話を真剣に聞いてあげると、中にはそれだけで満足するお客様もいるの。心の中の悩みを全て吐き出す事で、すっきりして、笑顔が戻って、満足するみたい」

「…………」

 ダメか。神野の血筋は、みんな意外としぶとい。別の手で行こう。

「未季がね。妊娠したの。聞いた?」

「いえ、武生は何もいってなかったので……」

「もう直ぐ三ヶ月。でも仕事もつわりもきつくて可愛そうなのよ。夕実さんは、つわりはきつかった方?」

「軽くも、きつくもなく、普通でした」

「私は結構きつかった。でも、吐いちゃうと意外と楽になるの。我慢してるより、出しちゃった方が楽になれるよね。夕実さんもそうでしょう」

「はい」

 少し時間を待ってみたが、その回答で終わってしまった。奥の手を出そう。

「私、低酸素脳症の所為なのか、身体の感覚器官がおかしくなっちゃって、全身が凄く敏感になっちゃったのよ。あっ、磯川さんには、内緒よ。それでね、シャワー浴びると、恥ずかしい話だけど、気持ち良くなってくるの。最初は、無理に抑えよう抑えようと頑張ってみたけど、逆効果。変な感じがどんどん湧いて来るの。で、気持ち良いんだからと、声を出す様にしてみたの。主人は何事だとびっくりしてたけど、逆にすっきり。身体が改善するとかの効果は全く無いけど、本人の気持ちは楽になる。辛い時は、声に出した方がいいわ」

「お義母さん、ありがとうございます。主人から、絶対に言うなって口止めされてるんですが、昨日、二ヶ月間の懲戒停職になりました。主人を辞めさせたがっているお偉いさんがいて、横領なんてしていないのに、勝手に捏造されて……」

 私の恥を晒したのだから、打ち明けて貰えないと困るけど、想定外の告白。これは私だけで直ぐ対処できる問題ではない。

「夕実さん、心配いらない。今は凄く大変なのが良く分るけど。今日だけ我慢して。明日、そっちに伺うから。ご主人も、停職中なら、自宅にいるのかしら?」

 明日、早々に伺うと約束して、電話を切った。



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