プロローグ
あの日から2年が経った。
まだ返事は来ない。
ここは辺境の地、スンク。
大国イットドーマ王国に450年程前に統合されたと言われる、スンク国があった場所である。
王都から片道2ヶ月は掛かる場所にあり、隣の領地とも広い森を越えねば辿り着けない為、統合されるまで王国内の領地との交流はほとんど無かったという。
スンクに伝わる話によると、統合当時の将軍だった王弟自らがスンクを好み移住した事で、辺境の地とは思えない程に王都や国内の領地との交流があったという。
しかし王弟が亡くなると、派遣されていた役人が一斉に王都に戻ってしまい交流はピタリと止まってしまったそうだ。
派遣されていた役人がこぞって戻った直後から、王都では『王弟を失ったスンクの住民は悲しみ、王弟と共に逝った。故にスンクは消滅した』との噂が流れる始める。その噂は誰かに操られたかの様に広まり、吟遊詩人が語り部となり広場や酒場からいつしか『王弟と共に去りぬ』という名の劇になり上演されるまでとなった。
辺境の地であるが故に現地での裏付けもされないまま噂は真実とされ、王弟の死後三月と経たずスンクはイットドーマ王国の地図から消されていたという。
王都からの役人が派遣されない事で国関連の役所その他流通が全て滞ってしまい、困ったスンク側が新たな役人の派遣を依頼する為に王都を訪れた時には全てが遅かった。
門前払いされたスンクの代表団は、そこで初めて自分達が存在しない者になっている事を知った。
王弟の死後もスンクは存在していると訴えたが、『王弟と共に消えた地』を貶す発言とされ「真のスンクの住民なら王弟と共にあるはずだ」と言い返される始末。
そんな訳で、イットドーマ王国の一部でありながら消滅したとされるこの地域一帯は、生き残る為に元スンク国の王族であったジーラ家が管理を任される事となり、イットドーマ王国とは全く違う方向へ独自の発展を遂げる。
400年を経て、王都に一通の手紙が届く。
400年と2年後、返事はまだ来ない。
二通目の手紙が王都に届いた。
読んでいただき、ありがとうございました。