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第三話「彼女は俺とベッドの上で」

   

 言われるがまま、スミレと並んで、俺もベッドに座る。

「それじゃ……。ゲームスタート!」

 新たな気持ちで対戦だ。

 なるほど、少しテレビから離れただけで、大きく違う。いや違うのは、今までよりも頭を使って、ユニットを動かし始めたせいだろうか。

「おっ、上手くなったじゃん」

 スミレの口から飛び出す、余裕の発言。

 確かに、俺のユニットの消耗は少なくなったし、上級兵ユニットや重騎士ユニットへのランクアップも早くなった。

「そんな態度も今だけだぞ、スミレ。今日こそ、俺が勝って……」

「……ああ、前々から言ってたわね。勝ったら頼みたいことがある、って」

「そう、それだ。約束だからな? よほど無茶な願いじゃない限り聞き入れる、って言ったよな?」

「うん。どんな頼み事をオサムちゃんが持ち出すのか、ちょっと私も楽しみ」

 スミレは、軽く笑っているが……。

 大丈夫だろうか?

 おそらく、俺に異性を感じていないスミレにしてみれば、想像もつかないはずだ。俺が交際を申し込むつもりだ、なんて。


――――――――――――


 こうして。

 序盤は俺の優勢で進んだのだが……。

 勝ったらスミレに告白する。

 そう意識すればするほど、操作ミスを繰り返すようになっていた。

 そもそも、俺自身のベッドで、好きな女の子と並んで座っているのだ。いつになく密着しているのだ。

 俺と同じようにスミレも汗ばんでいるのが、Tシャツ越しに伝わってくる。心地よい香りが鼻をくすぐるのも、気のせいではないのだろう。

 ちくしょう、汗の匂いなんて『汗臭い』が定番のはずなのに、どうしてスミレの場合だけ、こんなに素敵な芳香に感じるのだろうか。これが女子大生のフェロモンというやつなのだろうか。

「あれあれ? オサムちゃん、調子良かったのは、最初だけかな?」

 俺の気も知らずに、スミレは能天気な口ぶりだ。

 画面の中では、俺のユニットが、どんどん数を減らしていく。

「うーん。せっかくのアドバイスも効果なしか……。どうやってもオサムちゃんが勝てないなら、そろそろ私たち、このゲームも卒業かもね」

 ついにスミレは、画面から視線を外して、俺の顔を覗き込む。視界の隅で捉えた限りでは、彼女は少し悲しそうな表情に見えた。

「そんなこと言うなよ、スミレ……」

 悲しいのは俺の方だろう。

 幼馴染とはいえ、違う大学に通う俺たちだ。もう二人を結びつけるものは、このゲームしかないのに。

 それを取り上げられてしまったら……!

「ねえ、オサムちゃん。負けても次がある、と思うから勝てないんじゃない? これが最後、って気持ちでやらないと……」

 ここでスミレは、ゲーム画面に視線を戻し、決定的な言葉を口にした。

「もう大学生だからね。いつまでも『ボコボコ大戦略』って歳でもないし……。本当に、これを最後にしましょう?」

 始める前ならばまだしも、途中で言い出すなんて!

 しかも、こんな劣勢の俺に!

 最初から、負けたくない戦いではあったが……。

 むしろ、負けられない戦いになってしまった!

   

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