毒蛇の策略
十兵衛は朝になると庭先で素振りをするのが日課だった。
「朝から精がでてますね」
振り返るとリサとララァが立っていた。
「あっどーもおはようございます。一回生の寮に何か御用ですか?」
「貴方に用があるの。今日のご予定は?」
リサが微笑みながら答えた。
「今日はジェシカ嬢とDグループを観戦する予定です」
「そう…じゃあララァはジェシカさんとDグループの観戦をお願いするわね」
ララァはわかったっスと言いながらとぼとぼと歩いて行った。
「えっどうしたんですか?」
「今日は私に付き合って欲しいの。そう…デートね」
そう言いながら十兵衛の腕を組んで歩き出した。
十兵衛があたふたしていると目的の場所にたどり着いた。
三回生が普段使用している訓練場だ。
「えっ本当になんなんですか?」
「今回の寮長選抜戦には貴方に勝って欲しいの。お姉さんとの秘密の特訓ね」
そう言うとリサは訓練場に入って行った。
十兵衛が後を追いかけると訓練場の真ん中に短髪で黒髪、褐色肌の美女が立っていた。
「呼び出したくせに遅いぞ‼︎」
「ごめんなさい。少しだけじゃない。許してちょうだい」
「誰だそいつは?新しい男か?」
美女が不思議そうに十兵衛を見た。
「そんな男を取っ替え引っ換えしてるみたいな表現はよしてちょうだい。彼は一回生の十兵衛=凪君よ」
「どーも十兵衛です」
「はっ入学して早々にやるじゃないか」
何やら彼女は誤解してるみたいだ。
「十兵衛君。彼女はサーシャ=ハフマンさん。三回生で序列14位の実力者よ」
「何が実力者だ。リサの方が序列上だろ」
サーシャは不機嫌そうに言った。
「で?アタシの挑戦を受ける為の条件とやらはなんなんだい?」
リサは笑顔でサーシャに答えた。
「私と組んで十兵衛君と戦って欲しいの」
それを聞いた瞬間にサーシャは激怒した。
「断る‼︎アタシは新入生を虐める趣味はないよ‼︎アンタがそんな人間だって幻滅したよ‼︎」
「酷い誤解ね…貴方と私の2人じゃないと彼の相手にならないってことよ」
サーシャの眉がピクっと動いた。
「ふかすね。十兵衛君とか言ったか…レベルはいくつだ?」
「いや俺はやるとは言ってないですけど…」
「いいからいくつだ‼︎」
サーシャはかなり不機嫌そうに怒鳴った。
「レベル3です…」
それを聞いたサーシャはうっすら微笑んだ。
「試しに1回やってやるよ‼︎挑戦の件、忘れるなよ‼︎」
「さすがね。ノリが良くて助かるわ」
「いや俺はやるとは…」
「我、我、古代より大空を支配せし巨龍の骸也‼︎【髑髏腐龍】
サーシャは装魔を展開した。
サーシャの装魔は柄から峰にかけて骨で形成されていて刃は真っ黒なニ振りの剣だった。
峰の部分は骨が突起していて櫛状の峰ができていた。
「ほら、アンタも構えな‼︎」
完全にサーシャはやる気満々である。
「わかりましたよ… 我、神剣を授かりし鬼神也‼︎【大嶽丸】
「それじゃ始めましょうか」
すでに【蛇髪邪神】を展開していたリサが言い放つ。
それと同時にサーシャが前へ出る。
通常の装魔術士同士の戦いの場合は相手がどんなアビリティや魔術を使うかわからないので様子を見るのがセオリーだ。
しかし彼女は違う。
サーシャら獣の如くスピードで前へ詰めるがそれを上回るスピードで十兵衛が前に出た。
「なっ」
サーシャが面をくらったタイミングで居合い一閃。
完璧なタイミングだったがサーシャは峰で受け止めた。
何やら嫌な予感がする。
十兵衛は【大嶽丸】を振り切ってサーシャを吹っ飛ばした。
ドゴォォォン‼︎
サーシャが壁に激突した激音が鳴る。
「ちっ勘がいいじゃねーか…」
頭から血を流し彼女は薄ら笑っていた。
十兵衛は異変に気付いた。
装魔の一部分の刃が煙を上げている。
まるで何かに溶かされかけたようだ。
「これがアタシのアビリティ〈生者必衰〉。まあ簡単に言えば装魔破壊だよ」
ジパングではなかったが世界にはソードブレイカーなる種類の装魔がある事を十兵衛は思い出した。
「アタシが壊れるかアンタの装魔が壊れるか勝負だよ‼︎」
またサーシャは走り出した。
瞬時に刃と峰を反転する技術、すぐ前に詰める身体能力やダメージを感じさせないタフネス。
序列14位が十兵衛に襲いかかる。




