朝食での団欒
「やぁぁぁーーー!!!」
「はっ!」
カッ!カッ!カッ!
木刀同士のぶつかり合う音と、俺とクラウスの声が庭に響く。
俺は片手(左手)で、クラウスは両手で木刀を持っている。先ほどの攻防で互いに距離が空く。
「とぁぁーっ!」
俺はダッシュで距離を詰めて近づきジャンプして、上段から木刀を振りかぶり、そのまま振り下ろす。
「甘いっ!」
そう言うと、クラウスは俺の振り下ろす途中の木刀に、自分の木刀を横から軽く当てて、そのまま木刀の矛先をずらした。
その事で俺はバランスを崩す。
そして、自分の木刀を突っ込んでくる俺に刺さらないように両手、両足を引き下がりつつも、バランスを崩した俺の喉元に、5㎝も無いほどの距離まで詰めて木刀を、腕を前に突き出せばいつでも殺せる範囲で構える。
「……今日も勝てませんでしたよ、父さん」
その言葉で2人は立ち上がり、木刀を納める。
「はっはっはー、剣の勇者である俺に勝てるやつなんて、ほとんど居ないんだからそうがっかりするな。お前も同世代なら敵なしだぞ」
クラウスはそう笑いながら俺の頭を強引に撫でる。
「僕は将来、いや、今すぐにでも父さんを超えたいんですけどね」
「そいつは一生無理な話だな」
「いいえ、あと少なくとも5年後には勝って見せますよ」
「言ったな〜〜、こいつ」
頭を撫でるのが余計に雑になる。そのせいで髪の毛がボサボサだ。ったくもう!
「こら!2人ともご飯だから、早くシャワー浴びて来てなさい」
ココナがこちらに向かって叫んでくる。
「分かったすぐ行く」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「コ・コ・ナ・お姉ちゃんでしょ」
「……分かったよ、ココナお姉ちゃん」
どうしてそこまで拘るんだ?
「それじゃあ木刀を戻すか。ルキウスはどうする?次は昼過ぎだが?」
「いえ、僕は今日もすることがありますので」
俺の今の練習メニューは朝起きて、ランニングがだいたい1キロぐらい、その後に素振りを200本、休憩5分の後、最後にさっきやっていた5分間の実践稽古だ。
本当、現代日本じゃ5歳児にやらせる内容じゃ無いだろう。
「そうか。俺が戻して置いてやるよ」そう言ってクラウスは、手をこちらに伸ばす。
「ありがとうございます、父さん」
そう言って俺は木刀を手渡す。そして、家へと走って行く。
「ほら行くわよ、ルキ」
「はーい」
なんか最近、俺が本当に子供みたいになってきてるような気がする。
ココナをお姉ちゃんと思う事に違和感が無くなってきているのだ。
年は元の俺の半分ぐらいなのにだ。現在の俺は、ただ知識を人より多く持つだけの本来の子供みたいに感じている。
なんと言うか……上手く言い表せないな。
考えられることはちょっと怖いが俺の精神と、ルキウスの体が融合?みたいな事か起きている……なんて無いよな?
俺はこの世界じゃ異分子だからな。地球神の力とはいえ、無理やり別の世界に入れるなんて普通は出来ないだろう。
それか、単に時間が経過したことで慣れたのどちらかかな?前者は辞めて欲しいところだ。
そんな可能性の話に怯えるよりも、まずはご飯だ。
「ーー、神に感謝を、頂きます」
「「「頂きます」」」
アリエスが言った後に俺と、ココナ、クラウス、そしてリーシェが復唱する。
意味は獲物の命を頂くとか、そんなんだったと思う。
「ところでルキウスは昼からの練習は外に出て、近くの森でやるんだ。お前に魔物や凶暴な動物相手に対する技も見せるからな」
クラウスが俺にそう言ってくる。
「はい、父さん」
俺が返事をする。そこにアリエスが
「あんまり危険な事をしないでね」
と、注意してくる。
「大丈夫ですよ、母さん。父さんもそれぐらい考えてますよね?」
「アホ、アリエスはお前に言ってんだよ」
「そうですよ、ルキウス様」
「そうよ!ルキはいつもいつも!」
「……え……?」
「『え?』じゃ無いでしょルキウス!この前だって
『ちょっと気になって』とか言って、魔道具に取り込まれて、命を落とすところじゃったじゃ無い!」
そうだった。俺はつい気になって、現代で言うところの洗濯機みたいなものに、どうやって動いているのかを調べていたら、自分も一緒に吸い込まれてしまうと言うことになったのだ。
それの見た目が透明な物と、その時は衣服が入っていないことが幸いして、リーシェに助けてもらった。
赤ん坊の時は、いつも目が付いていたのと、この体が小さいため危険だったからだが、この間は好奇心に負けて、つい……な。
初めて見た魔法で動く物だったし。原理は魔石を埋め込んでいたと言うことだったが。
これはキッチンやお風呂にも使われている。洗濯機は地面に埋め込まれていて、気づかなかったのだ。
だから、他の可能性を1人で探していたわけだが。
「ちょっとルキウス!聞いてるの⁉︎」
「はい!ちゃんと聞いてます!」
本当は聞いてなかったけどな。
「じゃあ今の案に納得したのね?」
「今の案って何ですか?」
「やっぱり聞いてないじゃ無いの!そんな事一言も言ってないわよ!」
鎌かけられた!
「……ごめんなさい」
「ママ、ルキも反省してるし許してあげようよ」
ココナが助け舟を出してくれた。ありがたいな。
「……そうね。いい、ルキウス。絶対にクラウスから
離れちゃダメよ。森には魔物も居るんだから」
「魔物⁉︎見たい見たい!」
「そうなるからダメなんでしょ!良い、絶対よ。これは母さんとの約束、良いわね」
「はい、母さん」
「宜しい」
そう言って、指切りをする。……この世界にもあるんだ。つい、向こうの感覚でやってしまった。
「ところでココナ、あなた学校は間に合うの?」
アリエスが唐突にココナに問う。それを聞いたココナの顔が見る見るうちに青くなっていく。
「忘れてたーー!」
「お姉ちゃん、行ってらっしゃい」
「ココナお姉ちゃんでしょ!」
「は〜い、ココナお姉ちゃん」
そう言って飛び出して行った。そして、ご飯を食べ終わり、台所に出して、部屋に戻る。
「さて、今日は何をするかな?」
面白かったら、誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜』
も、是非読んで見てください。