クラウスの英才教育
「ルキウス様起きてください。剣の稽古ですよ」
「……あと10分、いや5分」
「ダメですよ。クラウス様がお待ちになっていますので、急いで着替えて庭に行ってください」
「はぁ〜い」
そう言って俺はベッドから出て、体操服みたいな役割の服に着替える。
「うっし、頑張るぞ!」
「はい、その意気で頑張ってくださいルキウス様。怪我をなさっても必ず私の治癒魔法で直しますのでご安心ください」
そう、今リーシェが言ったようにこの世界には魔法が存在する。
だが、魔法の技術は、魔法が見つかって以来ほとんど進歩していない。
何故なら、この世界には勇者が存在するからだ。
勇者の武器は聖武器と呼ばれ、10個ある聖武器のうち7個が近接武器だ(槍も含んで)。
そして、二個が弓と投擲具の遠距離武器だ。魔法に関する聖武器は杖のみだ。
この事から分かるように勇者に対する信仰の数や、認識力も、魔法と魔法以外の武器の割合は大体一対九だ。
だからこの世界において、主な戦いの武器に魔法は使われない。
要するに人気が無いのだ。
それに魔法を使える人材が物凄く少ないのも原因だ。なら『逆に優遇されるのでは?』と言う疑問を俺も思い浮かべたが、さっきも言ったが少なすぎて魔法の進歩はほとんど無い。
故に魔法が1人を殺すのには時間が掛かる。攻撃魔法が弱すぎるからだ。
魔法は戦いにおいて主に回復や補助に使われるのみで主力には成り得ないのも理由になるだろう。
他には主に生活に使われる。
だがそれにも例外が存在する。聖武器の杖だ。杖は主に魔法で攻撃をし、回復や補助など何でも出来る。
聖武器の中でもおそらくトップクラスで有能だと思う。
だが例外は杖のみだ。
魔法で他の近接武器などと、互角以上に戦えるのは杖のみなのだ。
だから、魔法なんて杖の聖武器に選ばれないと戦いにおいて使えないと言われている。
だが、聖武器に選ばれる可能性なんかを希望するくらいなら、普通は体を鍛えるだろう。
そして逆にこの世界の近接武器などの使い手は以上に身体能力などが高い。
本で読んだり、クラウスの動きを見ているが同じ人間とは思えないほどだ。
だが、そのクラウスでも剣士としての腕前としては上級剣士だ。
下には初級剣士、中級剣士の位があり、上には超級剣士、剣王、そして剣帝の位がある。
だがクラウスは剣の聖武器に選ばれた。位では決められないものもあるのだろう。
じゃなきゃ剣の聖武器には、剣帝が選ばれるはずだ。
つまり聖武器に選ばれるには実力以外の何かがある事になる。
「ウス様……ルキウス様!」
「えっ!あっ!はい!なんですかリーシェさん?」
「まだ眠たいのも分かりますがクラウス様がお待ちです。この日を楽しみにしていたのですから早く行ってあげてください」
「はーい」
「父さんごめんなさい。遅くなりました」
クラウスは俺を待っている間とその前の時間で走り込みを終えていた。
「いや、こんなに早く起きるの初めてだからな。むしろいつもより早く来ただけでも褒める事なんだが……俺は、何故かお前はそれじゃあダメな気がする。だから今回だけだぞ。次から遅れたら練習に素振り200本を追加するからな」
3歳児に200本⁉︎それ大人でも辛いと思うんだが……。
「父さん、ありがとうございます。次から気をつけますね」
「ああ、あそこにお前用の木刀が置いてあるから取ってこい。次からは言われなくても持っているように」
クラウスはそう言って、でかい倉庫を指差す。
「はーい」
そう言って倉庫に走る。そして扉を開けようとするが
ガチャガチャ!
「父さん!鍵かかってるじゃ無いですか!」
「はっはっはー、悪い悪い。緊張してるかと思ってたから、ほぐしてやろうとついな」
そう言って俺に鍵を渡してきた。ったくもう!
***
「それじゃあ始めるぞ。まず、剣の持ち方はこう………。そして足はこう立つ」
こうして俺は、3歳児から始める勇者の英才教育が始まったのだ。
そして更にそれから2年が経った。
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