魔力制御の修行
すみません! この作品描くの久々だったもので、ルキウスの姓を元からアークボルトにしてしまっていました。
正確にはグライガルスなので、どちらでも分かるような修正しておきました。
なろうで不人気な修行回! そして次回から鬱展開です!
もうアンチ作品と呼ばれてもおかしくはない。
俺たちが弟子入りしたことにより、早速ガセフトさん改め師匠による修行が始ま……らなかった。
「え? 師匠、剣の腕前はそれなりなんですか?」
魔法の修行は師匠が俺につきっきりで教えてくれるそうだが、ナルカの剣の師匠となる人がいなかったのだ。
「おそらく、実力は今のナルカと同じ程度じゃのう。ナルカ、お主はどうする? 一応、クラウスがしておった剣の修行もメニューも置いてあるが、それをするか?」
「はい!」
ナルカは自分だけ師匠がいないと分かりながら元気よく返事をした。
師匠の話によれば、父さんは師匠に魔法を教わっている間も腕が落ちないよう、剣の修行もやっていたそうだ。
それを師匠は独自に書き残していたらしい。
「……これは相当きついな」
「だな」
メニューを見てみるが、俺たちに教えられていた最新のメニューの5倍はきつそうだ。
「それはクラウスが16歳の時のメニューじゃな」
師匠がそう言って話しかけてきた。
「俺は師匠から魔法の修行は受けたいけど、剣の道を諦めるつもりはありません。とりあえずいつもやっていたメニューの2倍から始めようかなと思うんですけど」
「魔法の修行にいつもの2倍? ほんとうに大丈夫かの?」
俺は剣も魔法を極めるつもりだ。どちらも手を抜くつもりはない。
「夕方までは学校、夜は勉強でしたので。時間的には2倍程度なら……」
「なるほど。ただし、魔法の修行を終えたあと、という約束を付けるが文句はーー」
「ありません。お願いします」
とりあえず俺は、魔法の修行、いつもの剣の稽古2倍ということになった。
「じゃあ俺はいつもの稽古の4倍をしてみようかな? クラウスさんが16歳でいつもの5倍だし」
「いけるかナルカ?」
「いけるよ。てか、魔法の修行しながらいつもの2倍こなそうとするルキウスには言われたくねぇよ」
ナルカはいつもの剣の稽古4倍となった。
***
俺は師匠の案内で森の奥底まで連れてこられた。ナルカは別行動だ。ナナはあの家の構造を理解して、食事などの準備をしてもらっている。ココナはベッドで寝かせている。
「まず質問じゃ。魔力を感じることはできるか?」
「はい」
今いるこの森にもいっぱい魔力は満ち溢れている。て言うか今までで一番濃い密度だ。下手すると酔いそうだ。
「なら、魔法を扱うことはできるか?」
「はい。ですがすぐに疲れてしまうので、使えるのは五回程度が限界ですね」
2ヶ月前、父さんと共闘で戦ったエルフの御三家の一つ、クロイツェフ家の当主、ミドレファス・フォン・クロイツェフ。
奴との死闘の際、俺は『斬刀流奥義 絶空』、《霧》の魔法を使った。それだけで力尽きた。
「……それは魔力制御を上手くできていないからじゃな」
「魔力制御?」
……そう言えば、ジャイルがいっていたな。魔力制御を覚える事で、魔法が使えるようになる。
それが上手くできるようになれば、魔力の消費量を抑える事ができるって事か?
「魔力を自由に操れるようになれば、お主の魔力量ならば、ほぼ尽きることはないじゃろう。おそらく魔力を魔法に変化する効率が極端に悪いじゃろうな。一度使ってみると良い」
やはりそういう事か。
「はい。……《風》!」
《風》の魔法を使い、俺は辺りに漂う霧を一掃する。普通の人なら見えなかった足場に転がる岩の段差や、生えた苔などもはっきり見えるようになった。
……でも、やっぱり体がだるく感じるな。闘気を使った時と同じようなダルさが……。
あれ? もしかして闘気も魔法なのか? なら、魔力制御を覚えれば闘気も長時間使えるようになる……のか?
「……ふむ、やはり効率が悪すぎる。本来の100倍以上じゃ。無駄に魔力を垂れ流してある。例えるなら、カップ一杯に井戸の水を一気に全て入れているようなものじゃな」
え、そんなに……。
「まぁ、意識を集中させるんじゃ」
……あぁ、なるほど……!
「周りに魔力が存在さていることは認識してあるじゃろう?」
……集中集中……!
「それの体内に置き換え、魔力を意識すれば自ずとーー」
「《風》!」
先ほどと同じように《風》が発生する。しかし、今度は気怠さなどは一切感じなかった。ちょっとは出来たんじゃないか?
「………………はっ!」
師匠はポカーンとしていたようでぁ。もしかして俺の魔法を見ていなかったのかもしれない。
「ルキウス! 今のはなんじゃ! 一気に効率が2倍程度まで落ちたぞ!?」
え、そうなのか。もしかして驚きすぎてポカーンとしていたのか?
「え、いや……血の巡りを良くするように意識をして、体内に存在する魔力を掌へとかき集めるようにしました。今まではただ魔法を発動させていたので、全身から無駄な魔力が出ていたんですが、その発射場所を限定させて、一番操作しやすい手で制限させたらこうなりました」
俺は自分が実際にやったことを説明しながら《風》の魔法をもう一度実践する。
「…………ふふ、ふははははっ! まさかもう魔力制御を覚えるとは……! これはこれは鍛え甲斐がありそうじゃわい!」
おぉ! もう俺は魔力制御を覚えたのか!
「さて、それじゃあその魔力制御を完璧にマスターさせるぞ! まずは身体中のどこからでも魔法を発動させられるように。腕を斬られたら魔法が発動できない奴をワシは何人も見てきた。いつ何時、奇襲に対しても対応できるように。元々剣術のおかげで感覚は研ぎ澄まされてあるし、普通の魔法使いよりは覚えやすいじゃろう。魔力制御が完璧に出来たらあとは慣れじゃ。普段から魔力制御をしながら生活をさせる。その習性を体に覚えさせる」
お、おおう……? とりあえず修行をすれば良いだろう。俺はそんなことを考えていた。
***
「はっ、はっ、はっ……き、きっつ〜〜!」
俺は風呂に入って汗を流し、すぐにベッドへとダイブした。これが明日から毎日続くのか……。
魔法の修行でヘトヘトなのに、剣の稽古もしなければならない。しかし、そうしなければみんなを守るための力を得ることはできない……!
「やってやる……やってやるさ」
俺は天井を見上げながらそう呟いた。ちなみに今はナルカが風呂だ。一番最初はナナが入った。
ナナ自身は遠慮したが、俺たち3人は汗をかいているので、お湯が汚れる可能性があると言うと渋々納得してくれた。
ちなみにココナはナナが濡れタオルで体を毎日拭いてくれている。最初の頃は手間取っていたが、今では余裕だそうだ。
「そうだ、ココナに会いに行かないと」
俺は重たい体を起こしてココナの部屋へと歩いていく。ココナの部屋はナナも一緒に住んでいるので、ノックを忘れずに。
ノックをしてから5秒経っても返事がないので強制的に入る。
部屋ではナナが無防備な格好で寝ていた。よっぽど長旅で疲れていたんだろうな。俺は毛布をゆっくりとかぶせてココナの元へ向かう。
ココナはすやすやと幸せそうに眠っていた。まったく、こっちの気も知らないで……。
「早く起きてくれよ……ココナお姉ちゃん」
俺はそう言いながらココナの髪をさらさらと触るように、優しく頭を撫でた。
…………ん? …………んん? …………んんん?
俺は違和感に気づき、ココナの頭から手を離す。
今……ココナの頭あたりから魔力を感じたぞ。……魔力制御のおかげで分かるようになったのか?
いや、それなら師匠が先に気づくだろう。現に一度違和感を覚えた俺は頭に触らなくてもココナの頭あたりの不自然な魔力を感じる。師匠ならとっくの昔に気付いているはず……。
いやそれよりも、なぜココナの頭あたりから魔力を感じたんだ? そっちの方が重要じゃないか。
俺の心臓の鼓動が早くなる。ゆっくりと手を伸ばし、再びココナの頭を撫でるように触れた。
「づっ! ぐぁぁぁぁぁっ!」
刹那、頭の中を激痛が走り、ある光景が流れた。俺はその痛みに耐えきれずに呻き声を上げ、膝から崩れ落ちる。
「か、飼い主様!? ……あの、どうかしましたか? 何かあったんですか、飼い主様?」
ナナが俺の呻き声のせいで起こしてしまった。俺がこの部屋にいることに若干の驚きを感じつつも、ココナに会いにきたのだと即座に理解し、俺の心配をするようにそばへと寄ってきた。
「……ふぅ……。ちょっと、ね。起こしてごめんナナ。ちょっと師匠のところで行ってくる。多分戻ってくるから、ナナは俺の部屋ででも寝ていてくれ」
「はぁ……。お休みなさいませ、飼い主様」
俺は早々に会話を終えて、師匠の元へと向かおうとする。ナナも俺が急いでいるのが分かっているのだろう。
挨拶だけをして、俺の部屋へと向かう。その歩き方がいつもと違ったり、顔が少しだけ赤くなっていた理由は分からない。
そんなことよりも、と考えて、俺は師匠の部屋へと向かう。
さっき頭に流れた光景……。あれは、村での戦いで、俺が別れた後のココナの記憶だった。
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もう一つの長期連載作品である
『目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜』(全150部本編完結済み、番外編投稿予定)
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