SS〜エレザのその後、ナナの生い立ち〜
久しぶりの更新です。今回はヒロインの1人であるエレザと、新ヒロイン?のナナの話を書きました。
ココナ?…………ささぁ、本編をどうぞ。
「う……ん……」
エレザがそんな声を漏らす。そしてゆっくり瞼が開かれる。少し眩しい光が差し込んで、目を開けるのを躊躇させるが、エレザは目を開いた。
「……どこ、ここ」
エレザはそう呟いた。エレザの記憶は、父親であるエブラハムによって、急に魔法を使われ眠らされたところで終わっている。
こんなところにいると言うことは、エブラハムがここに移動させたのだと、エレザは推測した。
エレザの着ていた服が変わっている。少し薄く、ヒラヒラしている。多分パジャマなのだと思うが、こんなものは始めて着たので、少し落ち着かない。
次に周りを見渡した。今乗っているエレザの体には不釣り合いの大きなベッドに、周りを白いカーテンが覆っている。
エレザはカーテンをめくり、部屋を見渡す。ほとんど何もない。机と椅子が1セット、扉が2つある。部屋への入り口と、もう1つはトイレだろう。見れば見るほど、自分の記憶にはない場所である可能性が増えていく。
一体私はどこにいるんだろう?お父さんはどこにいるのだろう?一体どれほどの時間、ここに居たのだろう。ルキやナルは心配しているのだろうか?などの疑問が次々と浮かび上がっていくる。
ガチャ!
ビクッ!
突然扉が開いた。その音にエレザはまるで隠し事が見つかったような驚きをしてしまった。
入ってきたのはエルフだった。だが、肌の色が黒い。エレザはダークエルフを見たことがなかった。故に、自分たちとは違う種族なのだと勘違いをする。
「目覚めたか。ずいぶん遅かったな。いや、それほど奴の力も強くなっていたのだろう。……何故あんな簡単に殺れたんだ?」
エレザにとっては意味のわからない言葉を繰り返すダークエルフ。エレザは本能的に恐怖が体を支配しかけるが、意を決して声を出した。
「お父さんは……どこなの?ここは……どこ?……あなたはだぁれ?」
一番知りたい情報を尋ねる。
「まず、私の名前はミドレファス・フォン・クロイツェフ。お前の父親、エブラハム・フォン・クロイツェフの父親だ」
エレザに向かってミドレファスはそう名乗った。
「え?……お父さんの……お父さん?……つまり、おじいちゃんって事?」
「……そうなるな。そして、お前にとっては非常に残念だが、アブラハムは私が殺した」
「…………え?」
理解できなかった。いや、理解したくなかったのかもしれない。エレザの頭の中で、ミドレファスの言葉が何回も何回も繰り返される。
自分が理解できる以外の意味かもしれない。その希望に下がりながら、何回も何回も……。だが、いくら頭を使っても、幼い自分では理解できない意味なのだと決めつける。
いや、決めつけなければ自分がどうにかなってしまう。本能的にそう感じた。
「えっと……ど、どう言う意味……ですか?お父さんを……おじいちゃんが……こ、殺したって……どう言う意味、ですか?」
「言葉の通りだ。私がエブラハムを殺した」
頭が真っ白になった。…………そして、エレザはエブラハムとの思い出を思い出す。私はお母さんがいなかった。
だからその分、私にはお父さんがいた。でも、そんなお父さんも、もう居ない。私はもう、一人ぼっちなんだ。
「なんで、ですか?……なんで、お父さんを……殺したんですか?……また、私から大切な人を奪うんですか?……おじいちゃん、あなたは何故自分の子供殺したんですか!」
エレザが声を少し大きくして言う。だが、おそらくこの声は、今まで出した声の中で一番大きかっただろう。
「エルフにはエルフの事情がある。また、大人にしかわからない事情がな。今の君では言っても理解できないだろう。遺体は回収していない」
「……そんな!……」
エレザは自分の父親の死を知らされた。だが、その遺体すら見せてもらえないのだ。9歳の女の子にとっては残酷すぎる仕打ちだろう。
ミドレファスはそんなエレザを見つめる。だがそれも長くは続かず、部屋を立ち去ろうとして立ち止まり、エレザの方を振り向く。
「聞きたい方がある。茶髪のガキだ。剣を巧みに使う。魔法適性異様にあった。知らないか?」
ミドレファスはエレザに尋ねる。エレザはそれを聞きばっと顔を上げる。目から涙がポロポロ溢れている。そしてその涙をゴシゴシと拭く。
「……ルキ、生きてるの?ナルは?」
「ルキ……そうか、ルキウスと呼ばれていたな。そうだ、そのガキだ。知っていることがあったらすべて話せ」
「答えてよ!ルキは生きてるの⁉︎ナルは生きてるの⁉︎ねぇ、どっちよ!……お願いだから、お願いだから答えてよ……お願いします……話すから……なんでも話すから……」
再びエレザの目から涙が溢れでる。ミドレファスの服に2粒程度落ちたが、ミドレファスはそれを気にすることなく話し始めた。
「ルキアス……ルキの方は生きている。ナル?……は知らないが、近くに生命反応があったのは知っている。多分それがそうだろう。今も生きているかは知らないがな」
ルキは、ナルは生きている……まだ、私は1人じゃない。独りぼっちじゃない。私にはルキがいる。その事実がエレザの心を落ち着かせた。
「さぁ、話せ。あいつには借りがある」
ミドレファスはエレザに詰め寄る。子供から撤退するなど、見逃してもらったようなものだ、とミドレファスは考えている。
「……ルキと……出会ったのは……6歳の時でーー」
エレザは自分の経験を話し始める。だが、ミドレファスの表情は悪くなるばかりだ。近状報告から、少しでも弱点を探すつもりだったが、出てくるのは小さい子供のノロケ話のみ。
無駄足だったか。ミドレファスはそう考えるが、その時に良い案を思いつく。これは使える、そう認識を改めた。
「分かった、もう良い。食事はまた持ってくる」
ミドレファスはそう言って、今度こそ立ち去ろうとするが、それをエレザが止める。
「まだ……ここの場所……教えてもらって、ないそれに、おじいちゃん……なんで、肌黒いの?」
「……はぁ、ここはエルフの国、フォレスタリア精国だ。とりあえず今は俺の屋敷の一部屋を使っている。肌が黒いのは……まぁ、そのうち教える。ただ、普通のエルフよりは強いぞ」
そう言って、ミドレファスは今度こそ本当に去っていく。エレザは再度ベッドに横たわる。
とりあえず、私は今アークボルト王国から遠いところにいる。アークボルト王国に戻るためには、今はおじいちゃんの力が必要。なら、今はおとなしくしておく。
でも、いつか必ず逃げて、ルキ達に会いに戻る。その為に、私はあの人の言う通りにする。
エレザはそう心に決めて……何もすることがなかったので、とりあえずベッドから降りた。
***
あたしは猫耳族だ。15年前の戦争のどさくさに紛れて、両親が奴隷としてアークボルト王国に連れてこられた。
そして、その場であたしを産んだ。でも、あたしは本来処分される予定だったらしい。当然だ。あたしはまだ赤ん坊。育てるのにもお金が掛かる。奴隷の子供を育てるほど、奴隷商人は優しくない。
でも、偶然どこかの物好きが、妻子セットで買ってくれたそうだ。その時に、父親とは離れ離れになった。
そして5年後、母親は流行病で無くなった。そして、あたしの飼い主も死んだ。でも、あたしは自由の身にはなれなかった。
今度の飼い主はだいたい中堅クラスの商人だった。雑用として色々なところに連れていかれた。見た目が珍しいので、人目を惹き目立ちやすい目的もあったのだろう。
そして、それから9年が過ぎた。とある辺境の村が、エルフ達に襲われたらしい。これは復興を支援すると言う建前の元、少しばかり高めの値段設定で必需品を売りつけるらしい。
さらに言えば、復興を手伝うと言う周りからの目もある。そんな商会の商品は大抵売上が上がるらしい。人の噂はすごいと言っていた。
さて、今日もいっぱい働いた。やはり、あたしの見た目は人を惹きつけるらしい。こんな辺境の地なのだから、大人の人でも初めて見たレベルで珍しいのだろう。
そしてその夜、あたしは急に売りに出されてしまった。なんでも、あたしの馬車を操縦する技術が必要らしい。
飼い主の商人が喜んであたしを送り出したぐらいだ。よほどお金か権力かその両方を持っているのだろう。そう考えた。だが、あたしは次の日に新たな飼い主を見て驚いた。
茶髪で10歳ぐらいの少年が1人だったのだ。……少し驚いたが、多分、貴族の息子なのだろう。いや、それにしては護衛が一人もいない。
今回の戦争でこの子以外は亡くなってしまったのだろうか?あたしは少しこの子に同情をした。あたしも両親がいないからだ。
「飼い主様、あたしは7番です。……これから宜しくお願いします」
この小さな子供に頭を下げる。生まれた時から奴隷なのだ。とうに猫耳族としてのプライドなど、別に微塵もない。
「そうか、じゃあ……今日からお前の名前はナナだ。それで良いか?」
「……は、はい。……了解しました飼い主様」
小さな飼い主にそんなことを言われた。別に構わない。7番から、ナナという呼び方に変わるだけだ。
そう、あたしは奴隷。今日から飼い主が変わるだけ……そう、変わるだけだ。
そして、もう一人の少年も増えた。灰色の髪色をしている。こちらの少年も何者だろう?そう考えるが、別に支障はないので、頭からその考えを消す。
「目指すは北、行くぞ!」
茶髪の少年飼い主がそう叫んだ。あたしはそれと同時に馬に指示を出し、馬車を発車させたのだった。
この今までもあった些細な変化が、あたしにとって様々な変化を与えることを、この時のあたしは知る由もない。
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あと、私のもう1つの連載作品の
『目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜』
も、是非読んで見てください。




