旅立ち
今日中にできればもう一部投稿します。
酷いな。最初に見たときは、燃える火の光のみであまりはっきりとは見えにくかったが、今でははっきりと、この村の現状が分かる。
大半の家は倒壊、焼失していた。教会も含めてだ。だが、教会に避難していた人たちが半分ほどだったので、人的被害は異例の多さだ。
だが、それでも大勢のエルフ達、家事、家の倒壊によって、多くに死人、怪我人が発生している。人が焼ける匂い、死臭が漂ってくる。
もしかしら、一酸化炭素が普通よりも濃いので、服の布を一部千切り、口と鼻に当てていた。
そんなことを考えながらエレザの家に向かっていると、教会に避難をしていて助かった人たちがいた。シホル先生、シャル、ラーズさん、それにナルカの家族の、全員が無事だった。
「ルーズさん、敵は勇者である、俺の父さんが倒してくれました。もう安心です」
そう伝えると、ルーズさんはみんなに勝った事を伝えに行った。別に勝ったわけではない。むしろ負けだった。
とりあえず一通りの挨拶を済ませ、俺たちは急いでエレザの家へと向かう。心臓がいつも以上に鼓動する。ミドレファスの口だけでは、実物を見ないと信じられないのだろう。
そして、それを見た時の絶望はさらに深くなる。ストレスで胃がキリキリする。唾が酸っぱくなる。変な脂汗がダラダラと出てくる。
ミドレファスは全員を殺したはずと言っていた。つまり、家の周りと中では魔法が使用不可だったはずだから、細剣で刺し殺したのだろう。
まて、どうやって家に入るんだ?そして、どうやってミドレファスは家に入ったんだ?とりあえず、行ってみるまでは分からないか。そして、エレザの家に着いた。
エレザの家も半壊していた。どうやって入ったかは知らないが、魔法が使えないようになる魔道具などもすべて壊されていた。
家の中で、一番最初に見つけたのは、エブラハムさんの死体だった。死因は心臓を一突きだった。恐ろしく綺麗だった。そして、エブラハムさんが自分の血で書いたと思われる文字を発見した。よく書けたな。
『済まない……ココーー』
と。具体的な、誰に当てたかは分からない。エレザかもしれないし、俺たち家族を守れなかった方に対したかもしれない。
『ココ』で途切れていた。おそらくココナのことだろう。なんだ?ココナがどうしたんだろう?そして、家の中では3人の死体は発見できなかった。
家の外、森に入る。少しすると、森を抜けて、この村全体が見渡せる崖の近くに出た。血の跡があった。そして、心臓を一突きで殺されていたアリエスと、首を一突きで殺されていたリーシェの死体を発見した。
そして、アリエスに守られるように、何故か2人より少しだけ冷たくなったココナの、とても綺麗な死体を発見した。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
泣いた。3人の死体の前で泣いた。でも、涙はすぐに収まった。もはや、泣く時の涙を出す水分さえ残っていないのだろう。
「ウゥ……ひっ……えっぐ……ココナさん……」
ナルカも泣いた。初恋の人が、こんなにも綺麗に、まるで生きているレベルの美しさのまま、もう2度と動かないのだから。
とりあえず、4人の死体を土葬する。エブラハムさん、アリエス、リーシェ、ココナの順番だ。クラウスはその場で埋める場所が無かったので、ここに一緒に埋めようと思う。
家の前で埋めれないのが悲しい。エブラハムさんは『クロイツェフ家』と『エブラハム・フォン・クロイツェフ』石で書いた石版の下の地面に埋めた。
リーシェさんは名字を知らないので、『リーシェ』と石版に書いて埋めた。
アリエスは王族だが、どこに埋めるのかなどは全く知らない。死んだ人の追悼の仕方もしらない。なので、『グライガルス家』と『アリエス・グライガルス』と書いて埋めた。
最後にココナだ。本当に綺麗だ。眠っているみたいだった。『ココナ・グライガルス』と書いた石版の下の地面に埋めようとして、少し休憩をとった。
幾ら何でも、大人3人分の穴を掘るのは大変だったからだ。それにナルカが『もう少しだけ、ココナさんを見ていたい』と言っていたのも理由だ。
そして、無くなったココナを抱きかかえる。……あれ?少しだけ、暖かく、体温が、人の温もりが戻っている気がする。魔力が少しずつ、増えてきている。
急いで胸に耳を当てる。少しだけ膨らんだ胸が耳に当たるが、そんなことは今はどうでもいい。もしかしたらでも良い!聴こえてくれ!
……トクン…………トクン…………。
聴こえた。……普通の鼓動よりも遅いが、少し心臓の鼓動が聴こえた。
「ナルカ!ココナは生きている!」
「うぇ?……え?……ココナさんが?生きている?」
「そうだ!心臓の音が聞こえる!」
もう一度心臓の音を聴く。
トクン……トクン……トクン!……トクン!……。
心臓の鼓動が先ほどよりも速く、大きくなってきている!心臓マッサージなどではなく、普通にこの状態でも目を覚ますだろう。そう考えた直後に、ココナは目を覚ました。
「……あれぇ?……ルキぃ?」
そんな、寝ぼけたような表情と声を出して、ココナは生き返った。ゆっくりと地面におろして、俺はココナを涙を流しながら抱きしめた。
「え?え?る、ルキ!苦しいよ!えへへ、でも嬉しいよ。なんでなんでぇ?どうしたのぉ?」
ココナはそんな事を言っていた。どう言うことだ?俺は嬉しさのあまり抱きついた状態で考えていた。本来なら、すぐにでも離れるのだが、何故か今度はココナの方から両手を背中に回して抱きしめてきたのだ。
自分も同じことをしたので、強く言えない。後、ナルカの視線が痛い!やめてくれ!俺はそんな倫理に触れるようなことは絶対にしないって!だから、そんな疑いと嫉妬の目を向けるのはやめてくれぇ!
そして一分後、ココナはナルカに止められるまで、ずっと俺を抱きしめて喜んでいた。ココナはナルカに『あれ?居たんだ?気づかなかったぁ』と言って、ナルカに心の傷を負わせた。ナルカにとって、一番の強敵はココナ自身かもしれない。
「あれ?そう言えばここどこ?ママとリーシェさんは?エブラハムのおじさんは?ルキ、パパは?」
ココナの何気ない一言に、俺とナルカは黙ることしかできなかった。ココナはまだ13歳、あまり賢くない。何があったのかを、詳細には感じ取れない。そして、後ろを向いて初めて気がつく。
「あれ?……ママの名前?なんで?あれ⁉︎頭がっ!痛いっ!痛いっ!痛いよぉ〜!ルギぃぃ!」
「ココナお姉ちゃん!しっかり!」
突如、ココナの頭を謎の頭痛が襲う。膝から崩れ落ち、頭を抱える。俺とナルカは近くに寄り添い、名前を呼びかけるが、反応はなかった。そして一分後、ココナの頭痛は収まった。
「……そっか……」
そう呟いて、ココナは倒れた。一体なんだったんだ?一体何があったんだ?エブラハムさん、教えてくれ!俺は心の中で尋ねる。
だが、当然答えが返ってくるわけもなく、心の奥底に消えて言った。そして、ココナはある時まで、一度も目が覚めることはなかった。
***
翌日、村の男たち総出で、亡くなった者たちの遺体を捜索し、追悼の儀を行なった。『神勇教』の教えに従うそうだ。
俺は村の人たちに真実を話した。剣の勇者、クラウスの死。そして、神父たちの事を。それを聞き、中には泣き崩れる者もいた。
***
三日後、王都から国専属の物資などを運び込む商人が来た。その時に、現在何が起こっているのかの情報も手に入れた。
この国でエルフの襲来を受けたのは、王都とこの村だけらしい。何故、王都はともかくこの村が狙われたのかは不明らしい。
そして、それによる被害が甚大だった。主な死亡者の中には、アークボルト国の王である、ハバウルゴス・アークボルト。槍の勇者、アルバス・ハザミウム。国家騎士団副団長、ニョルギール・ヨルバスの名前も書いてあった。
そして、実は隣国にもエルフは進出していた。そして、そこに住む鎌の勇者も死亡したらしい。これにより、残りの勇者は8人と聞いた。
だが、真実は小手の勇者、棍棒(鎚)の勇者も死亡している。そして現在、剣の勇者と杖の勇者はほとんど使い物にならないと考えると……勇者は4人しかいないということになる。
そうそう、勇者の武器は、主人が死んだ時に、次の後継者がいなければ、世界のどこかへと飛び去り、再び引き抜かれるのを待ってるそうだ。どこかのエクスカ◯バーみたいだな。
それにしてもまずいな。おそらく、『計画が遅れる』とミドレファスは言っていたので、しばらくは安心できるが、戦力は多いほうがいいに決まっている。……強くならなきゃ。前よりももっと強く。俺はもう、誰にも負けないように。
そうだ!クラウスと女神様は『北へ迎え』みたいな事を言っていたような……。クラウスは俺が杖の勇者になるのを分かったような言い方だった。つまり、何が俺たちにとって良いことがあるのかもしれない。いや、そうに違いない。
……行くか、北に。……ナルカはどうするのだろう?ここには家族もいる。それに、俺たちは勇者になった。勇者は国に拘束されるのではないか?いや、クラウスを見る限り、ある程度の自由はありそうだ。
……いや、俺だけでも行く。ココナはどうする?普通に考えて、俺1人が連れて行くよりも、村のみんなで守ったほうが良い。
だが、もしエルフ達が攻めて来た場合、絶対に俺が守ったほうが良い。それに……この村にも男がいる。ナルカは大丈夫だろうが、安心は……言っちゃあ悪いがちょっと出来ない。この事は、ナルカにだけ伝えよう。
***
そしてさらにその翌日、俺は昨日のうちに身支度を済ませておいた。俺より体が大きいココナをどうやって守るのか、運ぶのかを考えた結果……。
「いや〜、すみませんね〜。おたくの馬車、無料で譲ってもらって」
「いえ〜、こちらこそ。まさか剣の勇者の息子さんだったなんで〜。それよりも、王族への仕事の斡旋、よろしくお願いしますね」
商人の1人に、馬車と馬と、馬車を扱う奴隷を1人もらった。クラウスが王族の第三王女を娶ったのは公然の事実。そして、この村の全員でその事を証言し、商人に王族自ら斡旋するという、口約束を取り付けた。
商人も本来なら、契約書などを使おうとするはずだが、勇者の名声ならあまり関係はなかったようだ。クラウス達も、ココナのためだ。許してくれるだろう。
もちろんナルカの家族に、王族に向けての手紙を渡すように頼んでおいた。最悪、口約束なので破ってしまっても、何も証拠はないが、それはダメだろうと思うしな。俺の言葉を聞いてくれるかは運次第だ。
馬車にココナを乗せる。揺れが少ないようにそこをクッションやバネを使って安定させる。だが、さすがは商人の馬車。商品価値を落とさないように、すでにしてあった。
そして、俺がこの村を立つ直前、ナルカが走って来てくれた。見送りだろうか?俺はそう考えていると、ナルカは馬車に飛び乗った。
「ルキウス!俺も連れて行ってくれ!家族に許可は取った。お願いだ!」
ナルカはそうお願いをしてきた。
「……マジか?……本当に良いのか?この旅についてくると言うことは、本当に普通の生活には戻れないのだぞ?……それでも、ついてくるというのか?」
「あぁ!もちろんだ!」
ナルカは即答した。そして、その目には固い誓った意志が見える。
「……分かった。じゃあ行くぞ。ちゃんと荷物は用意してあるんだろうな?」
「ごめん、してない」
「いや、そこはしとけよ」
「いまからしてくる」
そう言って、ナルカは急いで戻って行った。
「ははっ、ナルカらしいな。そう思うだろ?ナナ」
「……そうですね……」
俺は新しく手に入れた奴隷にそう言った。名前をナナ。元は番号で呼ばれていたので、ナナと俺が名付けた。猫耳族で、耳と尻尾が付いている。
ナナは名前から分かるように女性だ。そしてボン!キュッ!ボン!の14歳だ。アリエス、いや、それ以上でリーシェよりは少し小さいぐらいの大きさだ。
少し、いや、めちゃくちゃ無口でクール系だな。性格と雰囲気は少しエレザに似ている……いや、体つきは全然違うけど。見た目も子供と大人だし、比べるのはダメだな。確かエルフは基本的に貧乳だって話だったけど、それは置いておこう。
さて、ナルカも戻ってきた。行くか。
「目指すは北!行くぞ!」
こうして俺達は旅に出た。
2019年7月4日 ナナの説明文を少し増やしました。
面白かったら感想、誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜』
も、是非読んで見てください。




