別れ、そして新たなる勇者の誕生
今日は三回更新します。朝の7、8時にもう一回、あとは暇な時に一回します。
タイトル変更しました。
旧『普通を求めて転生したら剣の勇者の息子だった件』
新『普通を求めて転生したら、剣の勇者の息子で杖の勇者になっちゃいました〜剣技と魔法で最強〜』
です。
活動報告更新します。
……逃げられた。……結局逃げられたんだ。……クラウスが、ナルカが、神父さん達が、みんなが繋いでくれたのを、俺が断ち切ってしまった。だが、そんな後悔を考える暇など無い。
「父さん!」
俺は倒れたクラウスを揺らして起こす。やはり、ミファネリアを倒した時点で、限界を超えていたのだろう。
「ルキウス……済ま、ない。……父親がこんなのじゃ……ダメ、だよな?」
「そんな事ない!父さんは本当によくやったよ。だから……絶対に死なないでよ。俺を1人にしないでくれ!」
俺は泣きながらそう言う。
「ハハッ……聖剣の力を、無理やり使ったんだ。もう、俺の生命力もほとんど無い。そして、寿命もな。それだけのことをしたんだ。……それに、ミファネリアを倒れたんだ。後悔はないさ……いや、2つあるな……家族の仇……取れなかった。……ルキウス、お前のこれからの成長も、見れそうにないよ」
クラウスも目尻に涙をうっすらと浮かべる。
「バカなこと言わないでよ!父さんが見なかったら、誰が見るんだよ?仇は俺が代わりに取るからさ。父さんは生きて、俺を見ているだけでいいからさ。……お願いだかさ……生きてでぐれよ!」
俺は涙声になりながらも、クラウスの手を握りそう言う。クラウスの手は、先ほどまで体を動かしていたとは思えないほど冷たかった。そして、僅かに震え……痙攣も発生している。
「ルキウス……お前に……受け取って欲しいんだ」
クラウスはそう言って、俺に向けて聖剣を差し出す。
「なっ!」
つまりクラウスは、俺に剣の勇者を継げと言っているのだ。
「……うん。……分かった」
俺はそう言い、ゆっくりと手を伸ばす。そして、聖剣の柄部分を握ろうとする。すると……。
バチッ!
「うわっ!」
聖剣から、突然の強い静電気みたいなのが発生した。俺は慌てて手を引く。なんだったんだ?そう思っていると、クラウスは驚き、そしてなんだか寂しそうな、嬉しそうな顔を浮かべて喋り出した。
「へぇ……そう、なんだ。……以外、だな。でも、もう決めてるのか……なるほど……それなら良いや。……はぁ……まさか……な」
と。一体なんの話をしているんだ?そして、誰と喋っているんだ?
「ルキウス……悪いけど、聖剣は渡せなさそうだ。……でも、お前には別のものがある。……ちょっと……複雑な、気分だが……まぁ……さっきのお前を見たら……それも納得だ。……がはっ!」
クラウスがそんなことを言っていると、途中で血を吐いた。俺にも少し飛び散った血が服に付く。
「父さん!……もう喋らないで……」
どうする?俺の力はもう残っていない。きちんと扱えていたら、今頃は《回復》でクラウスの傷を治せたかもしれないに……!それにナルカも……あれ?ナルカの力を感じない……。
……そんな、バカな……。俺の目から、いくつもの涙が頬を伝って、クラウスと地面に落ちる。
「泣くな、ルキウス。……お前にはナルカがいる。エルフ達に、無理に仇を取ろうとはするな。……中には良いエルフ、エレザみたいなエルフもいるしな。……そうだ、最後にーーの方を目指せ。……そこには、お前にとって大事なーー」
クラウスが喋っている途中で、俺の手から離れて落ちた。クラウスの力も、ナルカ同様に消滅したのを、俺は自分の目で確かめた。
クラウスが何を言おうとしたかも分からない。俺の目から、溢れんばかりの涙がこぼれ出てくる。だが、そんな俺を慰めるクラウスはもう、この世にいなかった。
周りが鮮明に見え出した。そして、いつの間にか夜が明け、朝日が昇ってきていることに、今更気づいた。
ピカッ!
「っ⁉︎」
クラウスの聖剣が突如光りだす。そして宙に浮かぶ。ゆっくり、ゆっくりと聖剣は動き出す。まるで、死んだクラウスから離れ、次の主人に向かうように。
カッ!
そして、辺りを包み込むような、目を潰すレベルの激しい光が発生した。俺は目を瞑り、両手を顔の前にする。そして、俺の手に、何か硬い棒状のものが掴まれた。
そして、謎の光が収まった。目の前に、先ほどまであった聖剣の姿はなく、俺の手には……聖杖が握られていた。
俺が……杖の勇者になった瞬間だった。
「……は?」
状況が理解できなかった。この杖はミファネリアが持っていたはずだ。だが、ミファネリアは死んだ。つまり、新しい主人を求めるだろう。聖剣も同じだった。
……つまり、俺が杖の勇者になったってことか?……俺が、クラウスを間接的にも殺した武器を手に入れたということか……?
その瞬間、クラウスの言葉に合点がいった。『お前には別のものがある』、『複雑な気分』そして、『さっきのお前を見たら、それも納得』。
つまり、俺には魔法の才能があった。それが、何かしらの力で引き出された?そう考えていると、聖杖に埋め込まれた宝石が光り、俺の全身を包み込む。
そして……自分の力が戻っていく感覚を覚えた。それと同時に、今までの謎に説明がついた。
普通の人が、いくら剣術を極めたところで、普通の剣で岩を斬れる訳がない。つまり、魔力を自身の体と刀身に、無意識のうちに纏わせていたのだ。
魔力適正の水晶……あれは、自身の魔力をうまく制御して、体外に自身の望む魔法に変換する能力があるのかを確かめる水晶で、本来はどんな人にでも、魔力はあったのだ。
そして、もちろん俺にも。それが、杖の勇者の持っていた、この聖杖のお陰で引き出された。『絶空』を放てたのはそのお陰だ。
だから奥義なのだ。魔法を使え、剣を極めたものだけが使える技。『絶空』は2つの矛盾を抱えた奥義だったのだ。
そう言う事だったのか。俺の感じていた力は魔力で、魔力が減ると、生命力が減る。だが、それでは魔法を使うと命を削るようなものだ。
それを補うために、魔力は2つあった。前の俺では分からなかったが、今は分かる。人体で言う、心臓の部分の魔力を使うと生命力が減り、人体で言う、肝臓の部分で魔力を貯めて、その魔力を放出していたのだ。
クラウスは、その肝臓部分の魔力を全て使い果たしても足りない量の魔力を使う技を発動するために、心臓部分の魔力を使った。その結果が、使いすぎたことによる、魔力欠乏症の発症での死だったのだ。
その事実を俺は知った。そして、その次の瞬間に、信じられないことが起きた。ナルカの力、魔力が復活していたのだ。
俺は一体何故?と思いながらも立ち上がり、そして一度膝をついて、亡くなったクラウスの両目を優しく閉じた。その顔は、とても安心したような、優しい笑顔だった。
そして、俺はナルカの元へと向かった。すごく全速力で走った。聖杖を手にした瞬間に、魔力を全回復してくれる特典?付きだったみたいだ。
だが、ナルカの魔力は完全に消えていたはずだ。つまり、聖武器に認められた人間が死んだり、瀕死状態になった時、そして、もしそのタイミングで前の主人が死んだ場合、生き返って聖武器の所持者である、『勇者』となれる可能性があるのでは?俺はそう推測した。そして、その推測は当たっていた。
「……ナルカか?」
そこには全くの無傷のナルカが、上半身だけを起こして座っていた。ナルカ自身も、一度は死んだはずなのに、無傷で生きていることに違和感を覚えているのだろう。両手を何度も握ったり、開いたりを繰り返し、心臓の部分に手を当てている。
「……ルキウス?なんだよな?……どう言うことなんだ?俺は確かに……死んだはずじゃ。いや、確実に死んだ。何も見えなくなって、何も聞こえなくなって、そして、ココナさんの声が最後に聞こえて……死んだ……あれ?ルキウス、なんで俺の手の近くに、聖剣があるんだ?」
ナルカは俺にそう聞いてきた。生き返った驚きと喜びで、あまり周りが見えていなかったのだろう。俺はナルカがエルフの1人にやられたから起きたことをすべて話した。
***
「つまり……ルキウスの家族、クラウスさんも、ココナさんも死んで、エレザは連れ去られた、のか?」
「そうだ……そして、俺が杖の勇者に、ナルカは剣の勇者になった」
俺は事実をすべて伝える。ナルカの精神では、ここまでのストレスに耐えきれないかもしれない。だが、それても話さなければいけない内容だった。そして、悠長に先延ばしにする、そんな時間は今必要はない。
「じゃあ……あの約束も……うぅ……」
ナルカの目から涙が出てくる。だが、ナルカはハッとした顔をして、慌てて涙を拭う。
「悪い、一番辛いのはルキウスだもんな」
ナルカはそう言う。
「とりあえず、戻ろう」
俺とナルカはそう言って戻って行った。
面白かったら感想、誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜』
も、是非読んで見てください。




