誕生
なんだ?体が温かいものに包まれていて誰かの話し声が聞こえてくる。
目が見える。手や足がある。
「生まれたーーーーーーー!!!!!」
うぉっ!いきなりなんだ?生まれた?誰がだ?
耳も聞こえる。
「良かったーーー!!!」
見ると二十代半ばの男性がなんというかすごい動きで『良かったー』と、叫んでいる。
そして俺は女の人に抱かれている。しばらく考えてこれが転生ということに気がついた。
言葉も理解できる。
異世界のことだから言葉を覚えなきゃと思っていたが、その必要は無さそうだ。
地球の神様にも感謝しないとな。
おそらく俺は生まれたばかりの赤ん坊として転生したのだ。
ということはあの男性が俺の新しい父親ということになる。
横を見ると息が上がり寝転んでいる女性がいる。あの人が俺の新しい母親ということになるのか。
それじゃあ今、俺を抱きかかえているこの女性は現代の助産師だっけ?みたいな人ということになる。
うおっ!いきなり両足を持たれて豚の丸焼きみたいに反対にさせられて背中などを叩かれる。
バシン!痛い痛い!何すんだよ?
「うぅ〜〜あぁ〜〜」
声が出た。だが喋れない。
生まれたばかりで舌が回らないのだろう。だが助産師さんは声を出した俺を見てホッと息をつき
「良かったです。羊水が肺に詰まっているのかと思いましたが」
そう言って俺はお湯で洗われて、毛布の入ったカゴに入れられた。
なるほどな。泣かなかったから泣かないと勘違いされたのか。
俺の父親らしい人も俺が生まれたことを喜んでいるし普通の家庭そうだな。
……俺の親も初めはそうだったかもしれないが。
「それでリーシェ。アリエスとルキウスは2人とも無事なのか?」
父親と思わしき人が俺を先ほどまで抱いていた助産師さん?に聞いていた。
助産師さん?の名前はリーシェと言うらしい。
「大丈夫ですわ。クラウス様こそお休みになってください。昨日からずっとアリエスお嬢様の事を心配なさって一睡もされてないじゃないですか」
父親の名前はクラウスというらしい。なら母親はアリエスと言うのか。
2人とも結構若いな。二十代前半ぐらいて所か?
それから天井だがうちにも付いてたシャンデリア?に似たようなものもある。
西洋風だな。
クラウスは言われた通りに寝室に帰って行く。だがその前に俺の方に来た。
「元気な男の子だ。大きくなったら俺みたいなイケメンになるぞこれは。剣も習わせよう」
そう言って頭を撫でた。顔とは生まれたばかりはほとんど変わらないだろうに。
そう言って今度こそ帰って行った。
「リーシェ。ルキウスの顔を見せてくれないかしら」
アリエスがそう言った。ルキウスは俺のことだろう。名前までは引き継がないか。
まあ、あんな親がつけた名前だ。こっちの方が正直良い。
他には……ちゃんと性別は男だった。
これで女の子でした、なんて展開はなかったので一安心だ。
そんな事を考えているうちにリーシェが俺を抱きかかえてアリエスのもとに俺を抱っこで運ぶ。
そして、丁寧な手つきでアリエスはリーシェから俺を受け取り
「ルキウス。元気に育ってね」
そう言ってアリエスは俺を抱いた。
それから三年が経った。