地球の神そして異世界転生
「痛っ!」
尻を打った。辺りは真っ白でシミひとつも無い。あるのは机と椅子ぐらいのものだ。
俺は光に当たって、この場所に転送でもされたのだろう。
さて、声の主は何処だ?辺りを見渡して見る。
だが、そこには誰もいない。
「どういう事だ?」
【後ろですよ】
そのつぶやきが聞こえるとともに、背後を振り返ると天使が現れた。
文字通りの天使だ。白い羽が生えていて、服も靴も白い。
ロングスカートを履いていて髪は薄い黄色だ。
色白でとても美しいとしか言い表せない。
「あなたが俺を呼んだのですか?」
俺が天使に質問をする。言葉が通じるかは心配していなかった。
さっきから散々聞かされたからな。
【そうです。ではいきなりですが質問です】
はい?何言ってんだこの人は。
【あなたの願いは?】
「俺の願い?……俺は普通に暮らしたいです。裕福じゃ無くてもいいし、家族と一緒に夕食を食べたり、休日は遊んだり、そういう普通の生活がしたいです」
【そうですか……合格です。あなたの願いを叶えに来ました。あと喋らなくても心で念じれば私に伝わりますよ】
それはすごいな。
……ん?願い?俺の願いって……『普通に暮らしたい』って言ってたやつ?
【そうです。私は地球の神です。あなたの願いを叶えに】「ちょっと待ってくれ。なんで俺なんだ?ていうか神ってどういう事なんだ?」
【文字通り正真正銘の神ですよ。理由はあなたがかわいそうだったからです】
「いやいやかわいそうだからって。そんな私利私欲のために、俺に対してこうしてくれたんですか?」
【そうです。他の人間は金のことや自分の性欲にしか興味が無く、死ぬ間際にもそんなことしか考えていません。と言うか子供達のためなどと叫んでいる大人も同じでした。ですが、あなたは違った。初めてです。普通の生活を望んでいました。私は感動したのです。ゆえに私はあなたを気に入りました。ですので私の権限で、2つの道があなたに与えられます。どうですか?聞きますか?】
いやそらそうだろ。聞くしか選択肢ないじゃん。
「聞きます」
【心の声は全て聞こえているのですが……まあいいでしょう。1つは私の下で働きなさい。2つ目は何処か知性のある私の知り合いの神の星に移住です。当然ですが、普通の生活を送れるように言っておきますのでご安心を」
「2つ目で」
即答だった。
1つ目は面倒臭そうだったし、2つ目は俺が望んだことじゃないか。
地球じゃないのが悔やまれるがそんなことは些細な問題に過ぎない。
異世界ならスローライフというものか。
【詳しい話は向こうで分かりますのでご安心を。それでは送りますね。3、2、】
「えっ!ちょっ!まだいろいろ聞きたいことが!」
【1。それでは来世を存分に楽しんでください。私もあなたの話を楽しみにしていますので時々聞きに来ます。それでは】
その言葉を最後に俺の意識は無くなった。