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6.勇者の宴

 今日は国王様に言われていた宴の日だ。宴は夜から始まるということで、それ以外はここ最近と変わらず午前中はルルの講義、午後はルークさんの訓練だ。ただ少し午後の訓練が早く終わったのは疲れすぎないようにというルークさんの気遣いだろう。


 ここ最近で慣れてきた俺はそれらをこなし、夜。慣れない礼服に身を包み、控え室にいる。


「いいですか。貴族の方々は今、勇者であるレン様と少しでも関係を持ちたいと思っております。ですから、宴の最中多くの方々が挨拶に参られることが予想されますが、基本的に私が隣で話が厄介な方に行かないようにフォローに回りますので、安心してください」


 隣ではパーティドレスを身に付けたルルが貴族への対応の注意事項を教えてくれている。


 ルルのドレスは装飾少なめで、アクセサリーも耳に付けた蒼い宝石がチェーンで繋がっているイヤリングだけという王族としては少し控え目な気がするが、それがかえってルルという美少女の素材を生かしている、気がする。つまり超似合ってるということだ。


「というわけなので、不用意な発言には注意してくださいね?」


「ああ、気をつけるよ」


 と、こんな感じで会話が終わる。


 今の俺はそれなりに緊張している。なぜならただの高校生の俺にこんなパーティは縁もゆかりもないもので当然経験もなく、今身に付けている礼服なんかも初めてだし、出席者なんかも異世界の貴族という普通ではあり得ないもので、そのうえ主役が俺というのだ。意味がわからん。いや、わかっても緊張するなというのは無理な話だ。


「勇者様、殿下、パーティの準備の方が完了なさいました」


「レン様、もうすぐです。大丈夫ですか?」


「あ、ああ、まあ、なんとか」


 もうすぐパーティが始まる。とりあえず深呼吸。


「よし、行くか」


「はい、ではエスコート、よろしくお願いします」


 俺はルルに軽く肘を出す。そこにルルが軽く腕を絡めた。それを確認した俺はルルに歩幅を合わせながらゆっくり会場に向けて歩き出した。





 ーーーーーーーーーーーーーーー





「それではこれより、今代の勇者様とルルーシャ第一王女殿下のご入場にございます」


 そんな声が聞こえたと思うと目の前の大きな扉が開かれる。すると広いホールにたくさんの人がいて、拍手が起こる。とにかく人が多い。これ全部貴族なのか?これ全員に挨拶って……


「この中にいる全ての方が貴族というわけではありません。貴族の方は騎士などの従者を連れています。ですから派手な格好をしている方が貴族でその周りにいる少し控え目な方達が従者です」


 ルルが俺の内心を感じ取ったのか小声で説明してくれる。なんでわかったんだろうか。俺って顔に出やすいのか?


「この場にいる全員と挨拶を交わすのかと思ったのか、お顔が少し引き攣っていたので、もしかしたらと」


「ああ、よくわかったな」


「これでもこの国でレン様と過ごした時間はトップクラスですから」


 そんな会話を周りに気づかれないように小声でしつつ、奥にいる国王様のところまで歩いて行く。

 そして国王様が挨拶をしてから宴会が始まった。


「やあ、私はレインハーツ王国第一王子、フレッド・レインハーツだ。歳は22だ。君はルルと同じく17だそうだね。ルークから君のことは聞いている。年長者からの敬語が苦手だそうだからこんな感じなんだが、どうだい?」


「あ、はい。そんな感じでお願いします。自分は藤崎 蓮です。よろしくお願いします」


 まさかのルルの兄から挨拶があった。


「今まで挨拶に行けなくてすまないね。ちょうどなかなか厄介な案件があって、手が離せなかったんだ。こちらの都合で呼び出しておいてあれなんだが、何か困ったことがあったら言ってくれ。出来るだけ君の希望は叶えよう」


「お気遣いありがとうございます。自分は大した人間ではないですがそれなりに期待に応えられるよう努力はしていきますのでよろしくお願いします」


「ああ、期待しているよ。ルルとも仲良くしてやってくれ」


「兄様!何を仰ってるんですか⁉︎」


「はい、ルルには迷惑ばかりかけてしまっているので、嫌われないように努力しますよ」


「別に、私は迷惑なんて……」


「そうか、なかなか仲良くやっているようでこれは何より……っと、後ろがつっかえているようだ。これで私は失礼するよ」


 そう言ってフレッドさんは離れていった。ルルがからかわれている様子は珍しいな。

 まあそうか。まずルルとそんな軽いやり取りができる人が限られているからな。でもさっきの言葉に慌てる要素あったか?


 それから次から次へと色んな貴族が挨拶に向かって来た。大体はルルが捌いてくれたが、俺だって俺に向かって声をかけてくる相手にぼーっとしているわけにはいかない。言葉遣いと内容にそれなりに気を付けながら俺も話さなければいけない。なかなかに精神に来る。


 そんなこんなで押し寄せる貴族たちを相手にしているうちに夜は更けていき宴は終わったのだった。超疲れた。

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