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2.呼び出された理由と俺の素質

「おいおい、マジかよ……」


 俺は激しく動揺していた。目の前の少女や周りにいる騎士やローブを着た人物、今いる場所。俺の頭が正常でこれを現実というのならば、”異世界召喚”という非現実的な事でしか説明できない。


「勇者様、今とても混乱しているのは分かります。ですが私達の話を聞いていただけませんか?」


「……分かりました」


 とりあえず話を聞く事を承諾する。


「では、こちらへ」


  無言でお姫様について行く。ラノベやゲームに普段から慣れ親しんでいる俺はこれから待っているであろうお約束な展開に溜息を漏らさずにはいられなかった。きっとめっちゃ大変なんだろうな〜。





  ーーーーーーーーーーーーーーー





「ーーーと、いう事になります」


 あの後、小さな応接間に通された俺はお姫様とテーブルを挟んで向かい合い、軽く自己紹介をした後、時折紅茶を啜りながら話を聞いた。


 要約すると、俺は勇者として異世界のこの国【レインハーツ王国】に召喚された。お姫様はこの国の第一王女、”ルルーシャ・レインハーツ”というそうだ。


 昔から人族は魔族と争いをしていて、ここ数十年は大きな戦いに発展することもなく問題なかったのだが、どうやら魔族側が侵攻の準備を始めたらしい。故に強力な種族である魔族に対応すべく勇者を召喚したらしい。

 うん、やっぱ戦わなきゃあかんのね。


「どうか私達に力を貸して下さい、勇者様」


「いや、頭を上げてくださいルルーシャ様」


  急に頭を下げられ焦る。第一俺自身は戦う力があるとは全く思っていない。いくら勇者として召喚されても自分は一般人なのだから。


「だいたい俺が戦えるかどうか自分でも分かりません。ルルーシャ様たちのご期待に添えるかどうか」


「力に関しては大丈夫だと思います。古い伝承にも召喚された勇者様は全員強大な力を持っていたと記されていましたので。あと、私のことはルルと気軽にお呼びください。敬語も結構です。」


「そうか、じゃあ俺の事は勇者様じゃなくてレンって名前で呼んでくれ」


「そんな、勇者様にそのような無礼なことはーー」


「無礼なんかじゃないから、気にしないで呼んで欲しい。見た感じ歳は大して変わらなそうだし」


「で、では(わたくし)はレン様、とお呼びすることに致します」


 話がひと段落したところで派手な服を着た初老の男が部屋に入ってきた。


「話はある程度終わったらしいな。儂はこのレインハーツ王国を治めている”ガブレス・レインハーツ”じゃ。この度はこちらの都合で関係の無いそなたを呼び出したことを深く謝罪する」


「いえ、大丈夫ですから」


 さっきと同じように頭を急に下げられ焦る。だが、自分たちの都合で異世界の無関係の人間を巻き込んだことは悪いと思っているらしい。これはまだまともな方の召喚かもしれない。

 この後先程の話にいくつか補足が入り詳しく説明された。

 話がひと段落したので俺も質問をする。


「あの、今回呼ばれた勇者って俺だけ(・・・)ですか?」


 そう、召喚された時に俺の周囲にいたのはルルと騎士鎧を身につけた者とローブを身につけた者たちだけで俺のクラスメイトは一人もいなかった。

 しかし、俺は教室で見たのだ。俺と同じようにクラスメイトの足元に出現した魔法陣を。これはどういうことなのだろうか。


「?他にも勇者がいるのか?」


「え?いないんですか?」


「すまないがそのことに関しては分からない。勇者召喚は過去にも行われた記録が残っているが、勇者の人数はその度に違う。だから今回はそなただけだとおもっておったのだが……」


 まさかの知らないご様子。実は召喚されていないのか、違うところに召喚されてしまったのか。

 とりあえず俺は召喚前のことを話した。


「なるほど。ならば召喚されている可能性が高い。そのことについてはこちらで調査しておこう」


「お願いします」


 これでひとまずクラスメイトの件は終わりだ。


「俺は元の世界に帰れるんですか?」


 これは絶対に聞いておかなければならないことだ。

 するとルルと王様は暗い表情をした。


「無い、ってことですか」


「すまない、召喚はできても送還の方法は分からないんじゃ」


「そうですか。まあ呼ばれてしまったので今は仕方ないですね。そのうち自分で探してみます」


「ああ、その時は協力は惜しまない」


 この状況をうまく整理できていないのか、それとも半ば予想していたことだったからなのか思った以上に動揺は無かった。

 とにかく今はどうしようもない。

 とりあえず戦う力と知識を身に付けるのが重要だな。


「じゃあ最後に、俺の力はどうやって調べるんですか?」


「それはあとでルルに説明をしてもらうつもりじゃ。もし他に質問が無いのであれば今から行ってもらうが?」


「……分かりました。お願いします」


 そう言って俺はルルに水晶の置いてある部屋に連れて行かれた。


「この水晶は魔力の量を測ることができる魔道具です。今から私がやってみますので見ていてください」


 そう言ってルルは水晶に手をかざした。

 すると、水晶から眩い光が発せられた。


「この水晶は触れるものの魔力を光の強さで示すものです」


 魔力の量は個人差が激しく全くないものもいれば、凄まじい量を持つものもいる。

 ルルは保有魔力が高く、才能もあって魔術師の業界ではかなり注目されている実力らしい。俺を勇者として呼び出したのもルルと宮廷魔術師で協力してやったらしい。

 ついでにこういう魔術が施された道具を”魔道具”、これの武器版は"魔装具”というらしい。

 俺はルルに促されて水晶に触れる。水晶が発光するがその光はルルの時に比べると段違いの弱さだ。


「なあ、これってどうなんだ?」


「あ、いや、その、人族では少し少ないくらいかと……」


「それ、俺戦えなくない?」


「だ、大丈夫です!レン様は魔法に特化している可能性もあります」


「魔法?魔術とは違うのか?」


「はい。魔法は魔術とは違い特殊能力のようなものです。特定の種族限定の魔法もあったり、たくさんの種類があります」


 超能力的なものってことか。


「それはすごいな。それって全部能力が違うのか?」


「いえ、能力が被っていることもありますね。ですが使用者によって威力など細かい部分は変化します。同じようなものでも応用力で決着がつくこともあります」


 まあ、使い手によって差が出るのは当然か。


「しかし、魔法は誰もが使えるというわけではありません」


「それでその話を俺にしたのは使える可能性があると?」


「過去の勇者様にも魔法使いの方がいらしたと文献に記されていたのでもしかしたらと……」


 そういう事か……。まあ、そうだよな。しかしさっきの魔力の件で全然期待できない。自分にそんな力がある気がマジで全くしない。


「……ところで、魔法を使うにはどうしたらいいんだ?」


「魔法や魔術はイメージが大切です。自分の内側に意識を集中させる事でその魔法の種類や使い方がなんとなく浮かびます。ちなみに私は魔力を変換させ雷を操ることができます」


 そう言って指と指の間から青白い光を発生させるルル。


「おお!すごいなそれ!俺にも魔法があった場合そんな感じのことが出来るのか」


「はい、まあ魔法が同じ場合もありますがその確率は低いですし、とりあえずレン様も試してみてください」


「分かった。やってみる」


 そうして自分の内側に意識を向けてみる。

 集中、集中、集中、集中…………

 うん、ダメだこりゃ。


「ルル、すまない。ダメそうだ」


「そう…ですか……」


「悪かったな、色々と期待外れな勇者様で」


「いえ!大丈夫です!何か他の要因で突然使えるようになる人もいるのでまだまだ可能性はあります。基本後天的なもののはずですし……」


 ルルは励まそうとしてくれるが実際今の俺ではさっぱり戦えないということが分かる。この世界で生き残るにはなんとか努力して、まずは自力で戦う力をつけていくしか無いだろう。それに梨奈たちのこともある。いずれは自分でも色々と行動を起こすつもりでいた所にこの結果だ。

 先が思いやられ自然と溜息がでる俺だった。

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