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13.模擬戦後

「知らな……くはないな。これは知ってる天井だ」


 目が覚めてまず目に入った天井。そして思わず口をついて出かけた言葉は初めてこの天井を見たときに言った言葉だ。


(ここはあれか、エレナの部屋だな)


 最後の記憶はルルとの模擬戦。ルルの剣を弾き飛ばした後、ルルの空気が変わって、一瞬で背後に回り込まれて、あの蒼く輝く右手が迫ってきた所で終わっている。

 結果として俺は負けたのだろう。あの時俺はあれを避けられなかったし、そこで記憶が途切れているならそのダメージで意識を飛ばされたということだ。


(はぁ、良いとこまでは行ったと思うんだけどなぁ)


 実際ルルの実力が俺と打ち合っていた時のもので全力だったのならば、実力差は大きかったが初見の技を用いた攻撃で剣をルルの手から弾き飛ばすまではいったのだ。出来たのはその一回きりだったろうが勝ちと言って良いはずだ。


 しかし、ルルはそこでは終わらなかった。その先があったのだ。圧倒的なその先が。

 あれは無理。マジ無理。速過ぎて残像すら見えんかったわ。見えたのは青い残光のみ。


 とにかくルルの圧倒的力に敗れ、怪我を治すためにエレナの部屋に運んだのだろう。


「さてと。とりあえず誰かに目が覚めたことをーーー!」


 そこで初めて気がつく違和感。少し動き辛くて、右半身が妙に暖かい。嫌な予感がしてきた。あれ、なんか嫌な汗が。


 そして覚悟を決めた俺が油を差し忘れた機械のようなぎこちない動きで右を見るとーーー


 エレナがいた。無防備な寝顔を晒し、俺の右半身に引っ付いている。寝間着なのかいつもより生地が薄そうな服装でくっつかれているせいで、体温や感触が伝わってきてヤバい。


「お、おい。起きろ」


「んぅー」


 かわいい。じゃねぇ⁉︎早く起きてもらわないと色々と困る。主に俺の理性が!


「おい、起きろ。エレナ、起きてくれって」


「んみゃ?うーん、レン?」


 少し肩を揺すりながら声をかけると少し寝ぼけているようだが目を覚ましてくれたようだ。かわいい。


「そうだよ、蓮だ。エレナ、即刻状況説明を求む」


「え?状況?ボクがレンに添い寝してるだけだよ〜。おやすみ〜」


「いや、寝るな!てか、それは見りゃ分かるから!もうちょい詳しく説明してくれ!」


 覚ましてねぇ!超大雑把な説明をし、二度寝を決め込もうとするエレナさん。

 この後粘って声をかけ続けるとなんとかちゃんと起きてくれた。


「で?なんでこんなことになってるの?」


「模擬戦の時に姫がちょっと全力を出しちゃったせいでキミが瀕死の重傷を負ったんだ」


「え?瀕死?」


「うん。大体右腕の付け根辺りを中心に大穴が開いたよ。右腕は吹き飛んで、でかい傷口から大量出血。失血死しちゃうところだったんだよ」


「……え?マジ?」


 そこまで?瀕死って言われたから相当な大怪我だとは思ったけどそんなに?てか、今俺は違和感ないし、傷痕みたいなものも見当たらないんだけど。


「安心しなよ。そこはプロフェッショナルなボクが完璧に治しておいたからね。傷痕すら残さない完璧な仕上がりさ。ボクを褒め称えてくれてもいいんだぜ?」


「あ、ありがとう」


 正直実感が全く湧かないので戸惑った感じになったけど、とりあえずお礼。聞く限りじゃ完全に命の恩人だ。


「あれ?でも終わったなら俺の部屋に運べば良かったんじゃ……」


「それはボクの企業秘密な治療法を完璧に行うためにこの部屋が良かったのさ」


「でも添い寝する必要性は……」


「ボクにボクの部屋で床で寝ろと?それに一応キミに何か異常が出たらすぐ対応出来るようにしてたのさ。なんだい?他の何かを期待してたのかな?」


「そ、そんなんじゃないさ」


 妙に色気のある雰囲気で言われ、動揺してしまう俺。そりゃあ仕方ないさ。女子と同じベッドで寝るなんて初めてだ。しかもこんな美少女と。動揺するなと言う方が無理がある。


「ま、ボクみたいな美少女と一晩共に出来たんだ。これも役得だと思っておきなよ」


「意味深な言い方するなよ」


「じゃあ、これからボクは姫とかにレンが起きたことを伝えてくるからキミはここでゆっくりしてて」


 そう言って部屋を出て行こうとするエレナ。


「いや、待て。その格好は不味くないか?」


「え?」


 と、自分の格好を見て寝間着であったことに気付くエレナ。


「あ、本当だ。危ない危ない。それじゃあ着替えるから、部屋を少し出てもらってもいいかな?」


「ああ、分かったよ。というか、俺もそのまま部屋に戻るよ。いつまでもベッドを占領してちゃ悪いし」


 そして部屋を出て行こうと立ち上がった俺。そこで気付く。


「あれ?これ俺の寝間着……」


 俺の最後の記憶はルルとの模擬戦。そこで意識が飛び瀕死になっているのでもちろん自分で着替えた記憶は無い。


「な、なあ、俺の服って、どうしたんだ?」


 焦る俺。しかし聞いておかなければならない。誰が俺を着替えさせたのかを。下着もちゃんと替えられている。つまり、これが意味するところはーーー


「ボロボロになってしまったから替えの服を頼んでおいたよ。着替えさせたのは執事の人だから心配しなくても大丈夫だよ」


「そうか、なら良かった」


 ああ、良かった。同年代の女子に服着替えさせられるとか、想像しただけで恥ずかし過ぎる。


「それとも、ボクが着替えさせた方が良かった?」


「すぐにそうゆう話に持ってくなっての。俺にそんな趣味は無いわ」


 とりあえずひと安心した俺はエレナが着替えられるように部屋を出て行くのだった。

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