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11.模擬戦 〜極限的集中状態〜

「エレナよ」


「なんだい?陛下」


 ルルと蓮の模擬戦を、自分の隣で同じように眺めているエレナにガブレスは声をかける。


「レン殿はそなたやルークと訓練をしている時もあのような動きをしていたのか?」


 蓮の動きはガブレスにとって予想を遥かに上回るものだった。ルークの報告で、レンはとても飲み込みが早いとは聞いていた。それなりの素質もあり、とても努力家だと。

 しかし、ルークやエレナの話を聞く限り言い伝えられている勇者たちのような凄まじさは感じなかった。


 だが、いくらルルが全力を出していないとはいえ、それなりに本気でやっている様子であるというのに、剣を持ってひと月も経っていない彼がここまで娘と渡り合うとは。


「いや、正直ボクも今すごくビックリしてるんだ。多分ルークも同じだと思う」


 エレナも心底驚いた様子で続ける。


「今のレンの動きはボクが今まで見てきたものとは全然違う。最初の自分から切り掛かった時の動きは普段通りだった。そのあと姫の攻撃を躱したのはすごい動きだったけど、まだ<身体強化(ブースト)>を使っていなかったし、もともと勘は結構鋭いところがあったから、普段の動きでも不可能だったわけじゃない。でも、ルルが<身体強化>を使うって言ってからレンの纏う空気が明らかに変わったんだ」


 そう言って今まさに戦いを繰り広げている彼らに視線を戻す。

 軽く身体強化>を使っているルルの攻撃をレンは剣を当て逸らし、流し、躱していく。受け止めれば力負けするのを分かっているような見事な捌き方だ。そして驚くべきところはその対応力だ。初めはルルの速さにギリギリの回避などで刃が何度も身を掠めていた。


 現にレンの体のあちこちには薄い切り傷が出来ている。

 しかし、確実に減っているのだ。掠める刃の数が。一度、ルルの<身体強化>によって多少上がったスピードにより危ない場面があったがそれも徐々にしっかりとした対応で攻撃を捌いていく。


「この勝負、どうなると思う?」


「分からない。でもルルがこれ以上力を出さないなら、焦った方が負けると思う」





 ーーーーーーーーーーーーーーー





 俺は未だ嘗てないレベルで集中していた。

 ルルの剣が、動きが見える。というより視える(・・・)という感覚。動きを視て、体勢を崩さないように最小限の動きでそれを捌く。徐々に動きがはっきりと視えるようになり少しずつ完璧に躱せるようになってきた。


 それまでに体に付いた傷は多い。しかし、痛みは感じない。いや、感じられない(・・・・・・)。おそらく、今痛覚に使っていられるほど俺の脳の容量に余裕はない。俺の全てを使って今この時間を作っている。そんな気がする。


 脳に余裕はない。だが、徐々にルルの動きを視て動くことに慣れてきた。故に攻撃を捌く動きにはほんの少し、余裕が生まれる。

 ルルの攻めは苛烈だ。しかし隙は見せない。だからまだ捌くことに徹底する。

 焦るな。焦った動きをすれば、生まれた余裕なんて最初からなかったように潰され、保っているこの均衡も一瞬で突破される。

 それでも、このまま生まれた余裕を、少しずつでも大きくできれば。

 その時こそ反撃開始だ。

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