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0.プロローグ

 とあるどこかの白い世界で、夥しい量の血を流し倒れている青年と、青年の傷口に両手を当て、治癒魔術を施す少し幼さの残る少年がいた。


「ごめん!俺が余計な事をしたせいで、こんな事に……。本当にごめん!」


 止めどなく涙を流し少年が青年に声をかける。


 ここに来るまでにたくさんの経験をしてきた。何度も死にかけながら戦いに慣れていき、強くなってきた。だから分かる。分かってしまう。もはや青年は助からないことが。自分の未熟な治癒魔術では傷を塞ぎ切れないことが。


「もう、いい。謝るな。お前は何も、悪くない」


 青年は苦しみながらも言葉を紡ぐ。


「いいんだ、もう、助からない」


「喋らないで!絶対、何とかしてみせるから!」


 それでも少年は魔術を止めようとはしない。自分の軽率な行動のせいでこんな事態を招いてしまった。師匠であり、仲間であり、そして親友の彼の命を諦めることなど到底認められることではなかった。


「だから、最後に聞いてくれ……」


「最後なんて言うな!俺が何とかーー」


「いいから、聞け」


「!」


 少年はとうとう魔術の使用をやめた。彼の目が、もう時間が無い事を、最後の力で自分に何かを託そうとする意志を物語っていた。


「奴は、しぶとい。今回は、何とか倒したが、この先必ず、何らかの方法で戻って来るだろう。そしたらまた、この世界は危機に陥る。だから、無理はしなくていい。お前に出来るやり方でいい。この世界を、未来(さき)へと、繋いでくれ」


「……分かった。親友の最後の頼みだ。絶対、この世界を守るよ」


「ふっ、いい顔してるじゃねぇか。これなら、大丈夫そうだな。俺の全てを、お前に託す。上手く、使えよ」


 青年は、少年に自分の相棒である刃を託した。


「ああ、すげー疲れたぜ。やっとこれで、ゆっくり…眠……れ……」


 青年は永い眠りについた。その顔はとても穏やかな微笑を浮かべていた。まるで、これから先のことには何の心配もないかのように。


 青年の最後を見届けた少年は、涙を拭うと、もう反応を示さない青年の体を背負い歩き出した。その顔は既に、幼さを感じさせない強い覚悟を持った”男”の顔だった。


 ここから少年の長い長い戦いが始まった。

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