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調べ事

 ある日のこと、俺は義両親であるアドウェネドとフロミラの元を訪ねていた。

 二人は現在王都の貴族街に住んでおり、王城で各方面の相談員をしている。代々左右は引退するとここの相談員兼貴書奥院の管理人を任されるそうだ。

 そして前左右だけあって内務外務軍務に精通しており、的確であるが意見や答えを返してくれるわけではないそうだ。

 城内の貴書奥院と呼ばれる場所には建国以来の外交文書や機密文書などが保存されている。帝国との和平の時に使った文章もここで見つけた物だ。

 ここにある文書は左右か三大臣のうち一人と王の許可がない限り閲覧することが出来ない。さらに見るにはここにいる元左右である相談員監視の下になる。


 俺が貴書奥院に来ると二人は一礼して迎えてくれた。そして紅茶が出てから、

「陛下がお珍しいですね」

 義父アドウェネドは温厚な方で俺が見る限りいつも笑顔を見せている。俺自身が相談に来ることはないのだが会ったときには臣下からの聞くに頼りになる存在だそうだ。


 俺が椅子に座るとアドウェネドとフロミラに対面する位置となる。

 この部屋は人の二倍ほどもある本棚にぎっしりと本が詰まっている。それが部屋の奥に、壁が見えないほど奥まで続いている。まるで延々と続く図書館のようだ。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「ええ。今までは内事外事の事ばかり見てきましたが歴史が気になりまして。この国はどうして生まれたのか、先王より前の王はどのような方だったのか、どのような政策をして、成功し失敗したのか。それと……元の王族はどこに行ったのか」

 二人が俺の言葉の最後に小さく反応した。

「……陛下は……まさか御退位をお考えなのでしょうか?」

「フロミラ卿、私は和平をなしてこの国が進めるようになれば異世界の私が率いる必要はないと考えている。そもそも異世界から人を呼ぶ技術がどう考案されてのかも知りたい」

 俺はこの世界を、歴史を知らなさすぎる。知らなければいけない、次に引き継ぐまでに知るべきを知らなければならない。

「陛下はすでに陛下です。御退位はまだまだ必よぅ……」

 フロミラの言葉を遮るようにアドウェネドが椅子から立ち上がり、

「陛下の知りたいことが書かれたと思われる書を持って参ります」

 アドウェネドは何かしらの意味がある視線をフロミラに向けた。それでフロミラは黙り込み目線だけで何か交わす。少し小さく息をこぼしたフロミラはほんの少し肩を落とした。


 十数分後、アドウェネドが数冊の本を持ってきた。どれもやや分厚いが一番上の一冊だけがやや薄い。

「こちらは代々の陛下の個人データです。名前やプレートだけでなく出身やスキル、家族構成、遍歴なども記載されています。……いずれ陛下のものも作られますがそれはミック君やレイラの仕事になりますので、その際は王国の歴史のためにお願いいたします。そしてこちらは各王の代に起きたことが細かく書かれております」

 俺は小さく頷いて本を手に取って開き、この国の始まりを知り始める。


-----


 初代王は帝国出身の王族の玄孫。やはりそうだったかと続きを見ていくと初代王の祖は罪人として流されたとあるが伝わる話では冤罪らしい。

 王祖は皇子の中でも末弟でプレートもブロンズで王位継承権も低かったが父王に目をかけられていたせいで兄に排除されたらしい。

 

 初代王自身は好魔素体質を以て様々な魔法を駆使し、国に豊穣をもたらし、国土の安寧を図り、民を守った、とある。俺と同じスキルが見つかる。このスキル自体は特異発生のようで親子間に継承された記録は見当たらない。

 王国が建国された頃には王祖の名誉が回復されたようだが初代王の時代には帝国との国交はない。

 二代目、三代目と子孫が継いでいき五代目の時にはやっと帝国と国交が出来たらしい。

 平和が続いたのは七代目まで。八代目の頃に国交が閉ざされた。記録によると帝国が王位を巡って内紛状態になり王国側は難民の受け入れに留まっている。国境付近に帝国から分離して小国が出来たともある。

 その頃に初めて異世界からの召喚の記録がある。


『八代目王フィード・ミリシアン王、異世界より護国の士を呼ぶ。異世界ザフィロキアよりカタリナ・フェゼクトなる者が来る。流麗なる剣技、王国に手向かう者には苛烈なれど国民には慈愛を以て接する。後年に王妃として迎えられる』

 そして九代目の母となっている。

 その九代目のスキルには創造魔法……。ここにも俺と同じスキルがあった。

 俺には初代王と九代目王が持った稀少スキルがあるらしい。ということは通りでぶっ飛んだ能力になるわけだ。そこにアンリ先王からインフィニストまで受け取れば……あ、うん……無双モードなわけですね。

 そして九代目の代が終わりにさしかかる頃に帝国が落ち着いたのか国交が正常化する。


 そして十一代目、ここで帝国から宣戦布告が来た。記録でその前の前の年に帝国皇帝崩御の記録もあり、代替わりが国の方針を変えたのだろうと推測が書かれていた。ここは俺も同じ意見だ。

 十二代目、高齢で崩御した先代から継いで和平を視野に入れた帝国との折衝が書かれている。

 防衛に専念した戦いの記録の間に王弟や王子の戦死の記録がある。

 十五代目は若くして王位に就いている。いや若いではない、幼い。継承権を持つ兄や先王従兄弟たちが立て続けに突然死や病死をしている。まだ十歳で後見には左右が付いているが大臣達と左右の罷免が続く。重職が数年ごとに変わるのは何かが起きているからだ。

 戦線と内政の悪化の記録があり、おそらくだが政戦で左右と大臣達が対立しているのだろう。

 書には大臣らの汚職や裏工作などが書かれているがこれらは当時の左右が書いた物のため全てを信用は出来ないだろう。


 そして十五代目は王妃を迎えるが子をなさないまま不審な衰弱死をする。死の数ヶ月前に八代目を倣って救国の士を異世界から求める。

『十五代目王ゼラスト・ミリシアン王、異世界から救国の士を呼ぶ。異世界獄星ガレルドよりクレスパイズ・リュ・オンが現れる。ゼラスト王、死の間際に左右と大臣並びに軍臣の前にて王姉を王妃としたクレスパイズ・リュ・オンに王位を譲る』


 これより先はクレスパイズ王があらゆる戦に勝ち国土を守り抜く記録が続く。そしてクレスパイズ王の代が二十年ほど続いたときに、

『クレスパイズ王、戦闘にて負傷重体となる。一時危篤となるも懸命の処置により大事を越えるも左腕と腰より下半身を失う』

 この後はクレスパイズ王は戦線から下がり王都で通信用水晶を開発して戦場に師事と檄を飛ばす日々を過ごし始めた。


 この頃の帝国は奴隷兵に上位プレートの将帥を狙わせて上位プレートの魔導師が奴隷兵ごと王国将帥を爆発させる人道から外れた策を採っている。結果として王国の将帥の死亡者が一気に増えた。

 これに対して戦力強化を考えたクレスパイズ王は異世界から戦死を召喚する。

 その人こそ、シュルシュトフロストアンリ・ダレンノア・ギアス。アンリ先王、そしてその横にもう一人いた。

 ジョアゼリトス・ビアノリアス・ギアス……。一体どんな人物かとクレスパイズ王の代の書に目を通していく。


 二人はアンリ、ジョアと愛称され元からある軍才に加えて軍学校でこの世界の魔法を学び卒業する。

 卒業後に即最前線に出て並外れた結果を出しながら将兵を守り戦っていく。

 対する帝国にある戦力が現れた。異世界の者かはわからないがアンリ先王とジョアの二人を同時に相手取りながら互角に戦う化け物級。

 二人は数年にわたり、この化け物級と戦っている。そして…、


『ジョア、戦死。遺体の回収不可となる』


 アンリ先王と同じギアスの名を持つジョアの戦死報告、それと同時期に、


『サリュトナ・ミリシアン王妃、クレトア王子、暗殺される』


 王妃とクレスパイズ王の唯一の子が暗殺されている。これを機にクレスパイズ王は体調を大きく崩し、数年後に重臣となっていたアンリ先王に王位を譲っていた。

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