番外編・ある視点からの陛下の一日
ノクターン掲載二ヶ月に書いた番外です
へーかの朝は早い。
日が昇ってすぐに起きる。そして私が寝ていると思って一番にお風呂に行ってしまう。へーかはお風呂が好きみたい。……私はもう少しへーかとお布団でゴロゴロしていたいのに……。
それから朝ご飯までにへーかは外に運動に行くのだけど私はそれについていく。走るへーかの近くで一緒に走り、お城の中にあるお庭で体を動かす。
それが終わるとへーかと一緒にお部屋に戻るの。
私の名前はろっか。
おかーさんの顔も匂いも覚えてる。お日様のように暖かくて、ふわふわのお布団よりも優しかった。
でもある日、ご飯を探しに行ってから帰ってこなくなった。それからしばらくしておにーちゃんやおねーちゃんは人間に捕まってどこかに連れていかれた。鳴かずに木の陰にいた私だけが残ったの。
その日から私は一匹になった。毎日おかーさんやおにーちゃんやおねーちゃんを探しながらご飯も探した。
でもしばらくして私は人間の乗った大きなものにぶつかって動けなくなった。体が痛くて、歩くどころか立てなくて、鳴く力もなくて……。
そんな時にへーかが私を助けてくれた。その後はちゃんと憶えてないけど暗いお部屋の中で人間に捕まった。そこにへーかが来て人間なのに私を助けてご飯もくれた。もしかしたらへーかは人間だけど私のおとーさんなのかもしれない。
へーかは私をろっかと呼んで毎日頭を撫でて、毛繕いをしてくれて、ご飯を持ってきてくれる。
私だっていつかへーかにご飯を持ってこられるようにしたい。でも私はまだちっさいから狩りが上手じゃない。もっと頑張らないと……。
へーかは私に丸くて白い板の上にご飯を乗せて出してくれる。鳥の味がする白いお肉。鳥は嫌いじゃない、だけどたまにはトカゲやバッタも食べたいと思うの。へーかはトカゲやバッタを捕れないのかな?
私が食べ終わってへーかの顔を見ているとへーかは必ず笑ってくれる。大きな温かい前足で私の頭や背中をさすり、
「ん、いい子。全部食べれたね」
食べ残すといつも心配するの。だからちゃんとお腹いっぱいになったよって返事もするの。
そのあとはへーかは別のお部屋に行っちゃうの。一匹ぼっちは寂しい、だからついていくの。
へーかはこのお部屋で座って何かしてるの、毎日毎日うーんうーんって鳴きながら。私もお手伝いできないのかな?
これのせいでへーかは狩りに行くこともできないの。一度、へーかのところに行って白いヒラヒラしたのを叩いたら、だめって言われたから行かないようにしてるの。
私が気になるのは他にもあるの。
このお部屋に来る、体にヒラヒラした白と黒の毛があって、背中だけピンク色の毛をした人間のメス。
ヒラヒラした毛も気になるし、背中でゆらゆらしてるピンクの毛が私のしゅりょーほんのーってのを呼び起こすの。
ヒラヒラの毛は飛びついても痛くないみたいで私が何度飛びついても前足で捕まってしまうの。でもこの人間の弱点は知ってるの。ピンクの毛を引っぱるとすごく逃げるの。
それにおかーさんが一度だけ捕まえてきた蛇っていうご飯と似てる匂いがして、とてもおいしそうなの。大きくなったら捕まえて食べてみたいの。
白と黒のヒラヒラはもう一人いるの。こっちはお花の匂いがしてペロペロしたくなるの。
ペロペロしても怒らないからへーかが私と遊んでくれないときにこれがくるとペロペロするの。食べられないけどペロペロできる甘くておいしいおやつなの。
へーかはたまに立ちあがって私のところまで来ると私をダッコしてくれたり、なで回してくるの。
おひさまのあたる窓のそばでお外を見ながらお話しするの。
へーかはいつも「つくえにいるのあきた、そとにでたい」って鳴くの。じゃぁ私が狩りに行こうって言うとへーかは私のお鼻を触って「でもまだしごとがあるんだよな……」って変なお顔して戻っちゃうの。
-----
私はお日様に当たると眠くなっちゃうので寝てしまう。起きればお日様は遠くに行っちゃっててもう少ししたら暗い夜が来るの。
でもへーかのいるところはいつも明るくてお日様の代わりがあるの。
へーかが寝床のお部屋に戻るときに私も一緒に帰るの。帰ればご飯があって狩りをしなくてもへーかはご飯があるの。きっとへーかは私が寝ている間に狩りに行ってるの。
いつか私も一緒に狩りに行きたいの。
私が眠たくなる頃にたまに白と黒のヒラヒラのどちらかがお部屋に来ることがあるの。あとすごく怖い人間が来ることもあるの。
それは前足やお顔が黒くて黄色の毛と毎日違う毛をしてるの。大きな犬より怖いの。へーかが私をダッコしたり膝に乗せているとすごく睨むの。私を触る手も冷たくてキライ。私は温かいへーかの膝がいいの。
この怖い人間はへーかと仲良しでお部屋で寝ることもあって、そういう夜は私はいつものへーかの顔のそばじゃなくてお部屋の隅っこで寝てるの。
あと最近になってたまにこのお部屋に来る人間の中に変なのがいるの。人間なのに、尻尾があって頭に大きな耳がついてるの。何より犬よりも怖い匂いがして、私はこの人間?がくると棚の上やお部屋の隅に隠れて帰るのを待つの。
せいぞんほんのーが叫んでるの、あれに近付くと食べられちゃうって……。だからあれには近付かないし、来たら逃げて隠れるの。
お部屋に誰も来ない日はへーかの顔のそばで寝てるの。いい匂いがして、おかーさんと寝ていた頃を思い出すの。
……おかーさんとおにーちゃんやおねーちゃんがいなくなってから私は一匹になっちゃったけど、私は今は一匹じゃない。へーかと一緒。
だから寂しくないの。お日様がなくても暖かいの。おかーさんとおにーちゃんやおねーちゃんもあったかいところにいればいいなって思いながら私は眠るの。
朝になればへーかがいて、私に優しく笑いかけてくれるの。
誤字脱字がありましたらご指摘の程お願いいたします
感想、評価、レビューお待ちしております
お気に入りいただけましたらブックマーク登録よろしくお願いいたします