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大決戦!……になるとでも思ったか!?

 サラス将軍の砦から北西に五㎞ほどの場所。何もない土の大地、そして離れた山から吹き下ろしてくる風は土に熱されて熱さを持つ。

 一昨日の挨拶の時に帝国の将の鎧に入れたメモはここで待っていることを書いておいた。疑っていようとも疑わずとも来てくれたことにはとても感謝だ。


 帝国軍5500ほど、対峙する俺一人。

 兵が減っているのは回復が間に合わなかったのだろう。そして兵からかなり前に出ているのは数十人ほど。

「やれやれ……連れてくるなと言ったのに……」

 俺は白の軍服に手甲と脚甲をつけただけ。


 遠目で人影だけが見える距離なので何を話しているのかわからない。だがおそらく作戦と強化魔法と言ったところだろう。

 俺も単純に魔力を練り上げていく。膨大な量、トライメタルプレートからでもダメージがほとんどない魔力量だ。そしてそれを使い全身を強化、障壁もいつでも張れる。首に下げる水晶、その先で見ている者たちが安心できる戦いをするために敵を見据える。


 突如、帝国兵の前に小型、といっても十数メートルほどの竜巻が現れてこちらに向かってくる。それに合わせてそれぞれ武器を構えた奴らが突っ込んでくる。俺は意識を切り替えた。


 戦闘、開始。


 まずは、鬱陶しそうな竜巻に向けて片手を振り上げて空を切る。速度で発生した衝撃波が竜巻を超える大きさで三日月状の風の刃となって一直線に向かっていく。

 地面を砕きながら進んでいき竜巻にぶつかる。風の刃は竜巻を二つに裂き吸収するとやや上向きに進行方向を変えて天まで届く。


 次に前進して槍を構えた全身鎧に対峙するが片手で槍ごと払い除ける。槍と鎧が砕けてアンダーウェアを見せながら飛んでいく。

 飛んでいった先には別の将がいてぶつかるとまとめて転がっていく。


 隙を突いたつもりか左右から片手剣の女と双剣を持つ男がかかってきた。まずは左の双剣の男に槍を払った手を戻すついでに裏拳でボディに当てる。

 右には指先を曲げただけの手を肩から回転させて突き出す。閃武流の旋掌という掌手の当て身技だが魔力強化された手からは空気が螺旋回転し女の胸当てに直撃する。少し妙な音が聞こえたところを鑑みると多少骨を折ってしまったかもしれない。


 そんな心配をする余裕を持ったまま、俺は次の獲物を探す。あつらえたように俺に向かってくる者がいるので間を詰めると脛を蹴り当てて体を浮かせると適当に鎧の上を選んで蹴り飛ばす。

 正直言って歯ごたえも何もない……。おそらくシルバーとゴールドなのだろう。


 そこに炎の塊が振り落ちてくる。単独でこの威力なら大したもの、ゴールドプレートだな。腰を落として構えを取ると炎塊に向かって、

「『制御・氷・風コントロール・アイス・ウインド』」

 正拳突きの衝撃波に魔法を乗せる。渦巻く旋風が氷を纏って炎に突っ込んでいく。風が炎を飲み込み、氷が熱を奪う。あっと言う間に消火されて残るものは蒸気だけ。

 これを放ったであろうものは集団の前に立っている誰かだろう。俺は足に力を込めて地面を蹴る。

 俺の接近に気づき炎弾を大量に放ってきた。走りながらそれを弾いて撃ってきたヤツを探す。

「このっ!」

 魔導師の格好をした女が俺目掛けて人ほどの炎を放つが俺はそれを躱して彼女の横に回る。そしてやり過ぎにならないように優しめに顎先を横から突く。ガンっと揺れて脳しんとうを起こして昏倒する。


 俺がその場を離れようとしたが別の魔導師、いや聖職者の法衣を着ているからヒーラーか?

 敵対者であるはずがまったく殺意どころか敵意すら感じない。

「命に別状ないとは思うけど一応看てあげてね」

 俺は地面を蹴って別の獲物を探す。

 無抵抗の者には興味はない。俺を楽しませてみろ、戦う気で、壊す気で、向かってこい。俺を、殺してみろ。


 目に入ったのは三人組、勇者と槍戦士、そして魔導師。さぁ、メインディッシュか

……。

 俺は敢えて近付いたところで止まってみせる。両手を開いて肩をすくめると、

「あれだけ大げさにやっておいてこの程度なのか?」

 嘲笑の笑みを浮かべてみてる。

「期待外れだなぁ。私を殺したいのだろう?勇者リュー」

「前はやられたが今回はそうはいかない。クリス、全力だぁ!」

 俺の言葉と態度に激高したよな表情になる。そして槍戦士に呼びかけて魔力を練るのがわかる。

 リューから目に見えるレベルで魔力が沸き立つ。隣のクリスと呼ばれた槍戦士もリューには及ばないがかなり高いレベルの魔力を見せる。

 そして同時に地面を蹴ると左右から俺にかかってくる。


 リューは剣で腕を、クリスは刃に返しの付いた槍で足を、狙ってくる。脚甲で受けた衝撃は大したことないが腕の方がかなり痛い。クリスはゴールド、リューはもしかしたらトライメタルほどの威力がある。

 そう判断してリューの剣を受け止める腕の魔力を増加させる。右と左、別々の武器で攻撃されるも防御に徹すれば驚異ではない。


「リック、やれぇ!!」

 リューの声に魔導師が大声で詠唱を唱え終わる。

「喰らえ『轟爆剛炎エクスプロードプロミネンス!』」

 俺の前に小さな赤い魔力弾が来て、それが爆発する。

 酸素を取り込み爆発しながら炎の渦を広げ空気と地面を焼き尽くしながら巨大な爆炎となっていく。周囲にいるものを飲み込み、地面を削り、土を巻き上げ、灰燼と化す。


 リューとクリスは体を丸めて魔道具らしきもので障壁を張り体を守っていた。俺はと言うと爆風よりも速く後ろに下がって攻撃範囲の外に逃げていた。

 爆発が収まるとできていたのは二十メートルほどのクレーター、そのの大きさに喰らっていれば危なかった、多少のダメージはあったかもと思っていた。

「どうだ、やったか?」

「あれは躱せないだろう。生きていれば俺がトドメを刺す」

「どーだろうね。僕の魔法で欠片も残ってないかもね」

 土煙の向こうから三人の足音と喜悦のこもった声がする。どうも俺をやったつもりらしい。


「やれやれ……どこまでめでたい奴らか……」

 つぶやきをこぼし俺は風を起こして土煙を払う。そして俺も爆心地に向かって歩き、無傷の俺の姿を三人に見せる。

「当たっていれば多少のダメージはあったかも、なぁ?」

 皆を守るためなら、俺は何にでもなろう。俺は失うものなんてない、俺が死んでも新たに別の者を召喚すればいい。俺が守りたい、守りたかった、家族はもうどこにもいないのだから。

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