シュウイチという男
『父より新たに召喚した異界の方、シュウイチ様へのお世話役を拝命しました。
見た目は黒髪に落ち着きのある雰囲気を持ち、私と同じほどの年頃。身の丈は私よりもやや高く、腕や足、身のこなしから武術の心得がありそうです。
異界に来られたのは初めてだそうで不安はあるのか、父と私に質問をずいぶんとされる方でした。
興奮することもなく、また困惑された様子は召喚された直後のみらしく、まず自分を召喚した理由や国内外の情勢を最初に気になさったところ聡明な方なのかもしれない。
そう、これが第一印象でした。
シュウイチ様は魔法や魔素については知らずご教示すると理解が早く、プレートは最上級のブラック、属性を示す枠は多様な色を持ち、並々ならぬ方と言うことがわかったのでした。
さらに九代前の王が使えた創造魔法と初代王がお持ちになられたという好魔素体質の2つを持っておられました。
数日の魔法座学の後に初めての魔法訓練では下級魔法であるフレイムボルトで通常の20倍ほどの火球を放たれたことには、手記を書く今も驚きを残しています。
少し話はずれますが、父に命ぜられ何人かと召喚陣を作った地下室の掃除の折に隅にいた可愛らしい生き物がいました。とても小さく丸まりカゴの影に隠れていました。
その生き物は可愛らしい子猫でした。しかし私たちの知る猫とはかなり違い、体も数分の一、牙も爪も鋭くない。しかも全身が白とは珍しい猫でした。
私たちが騒いでいるところをシュウイチ様に見つかり、お咎めを受けるかと思いました。
しかしシュウイチ様はネコを見るなり、やや呆れた顔を見てから抱いている私からネコを持ち上げると、「なんで、お前がいるんだ?怪我はいいのか?」とネコに話しかけられました。
どうもこの猫はシュウイチ様にくっついてこの世界に来てしまったようで、猫はシュウイチ様にずいぶんとなついたように、ナーナーと鳴きながら甘えていました。
そのときの優しそうな笑顔に私は少しばかり目を奪われた気もしました。
シュウイチ様は、私達に魔妖人に味方してあの笑顔を人民に向けて善政をしてくださるのか、あの男のように私たちを裏切るのか。
私は不安を感じながらとシュウイチ様を見ていました。』
私は手記を閉じてため息をつき、窓の外に見える町並みに目を向けていました。
召喚には大量の魔力と供物を媒介に異世界から望んだものを召喚できます。
前回も今回も供物は鉱山や湖底、モンスターから採れた魔石や魔力を持った素材を使っていました。
必要な魔力や供物は条件付けによって多く使われ、なおかつ条件に合う素材でなければなりません。
足りない場合や素材が合わない場合には召喚を行った者にリバウンドを起こすこともあります。その時は命すら吸い上げられることもあり、召喚とはかなり危険なことです。
しかし父は王の願いを叶えるために行いました。『王たる血か器を持ち』『我等を理解し』『慈悲の心を持つ』『優しき方』と前回の失敗を省みて、新たに召喚されました。
シュウイチ様は……我々の願いを叶えてくださるのでしょうか……
【プレートについて】
生まれ持っての魔力の才能を示す
名前と枠の色で魔力の高さと使える属性がわかる
名前の色が魔力の高さ、名前を囲む枠の色の数が使える属性の数になります。なお名前付けられていない者(スラムの孤児や名前を付けられる前に保護者がいなくなった特異ケース)は通称名が出ます
魔力の高さは上から
ブラック、トライメタル、ゴールド、シルバー、ブロンズ、アンバー、レッド、ブルー、イエロー、ブラウン、ホワイト
魔力を鍛え上げていくと極希に上のプレートにあがることがあります
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